見出し画像

[日常] 私のNZの暮らし方 vol.22 - 本当は実在しない街、ペーパータウン -

今日は本を読んでて、そこから面白い記事に辿り着いたので、一つの知識、雑学としてなんとなく書き残しておきたいと思い書いております。

みなさんペーパータウンってご存知ですか?

その昔、地図を作成する際には非常に多くの手間とコストがかかり、他社がすでに作成した地図を違法に流用して自社製品として販売する業者が続出。そのため、違法コピーが行われてもすぐに判別ができるようにあらかじめ架空の地名を書き込んでおくという手法がよく使われていました。
そう、ペーパータウンとは、本当は実在していない町や通りの名前を地図に記載して、違法流用を防ぐためにあたかも実在している架空の町のことを指しています。

1930年代に作られた地図の中に「Agloe(アグロー)」という地名が書き込まれていました。

これはその地図の出版社である「General Drafting(GD社)」の地図にのみ記載されていた、いわゆるペーパータウンでした。ちなみにAgloeという地名の由来は、当時の役員であったあるOtto G. Lindberg氏とその秘書のErnest Alpers氏のイニシャルからとったものだそう。

その数年後、大手地図出版社のランドマクナリー社から出版された地図には、なんとあるはずもない町「Agloe」が記載されていることが発覚。これを知ったGD社のLindberg氏は、ここぞとばかりにランドマクナリー社の不正を裁判で訴えました。


GD社のワナにまんまと引っかかり、ランドマクナリー社には弁解の余地ゼロと思われた事件ですが、しかしランドマクナリー社はこれを全面的に否定。
弁護士は「この地図は同社のスタッフが実際に現地を訪れて調査を行ったものである」として真っ向から対立する姿勢を見せました。
その反論の中でランドマクナリー社は、Agloeと呼ばれている場所にはある建物が建っており、しかもその建物に入っている店の名称が「Agloe General Store(アグロー雑貨店)」であったと証言して正当性を主張。そこで実際に調査を行ったところ、なんと本当にその名前が書かれた建物が存在していることがわかったのです。

架空に作り上げられたはずの地名「Agloe」が、どういうわけか実際に存在する店舗の名称になっているという謎めいた話には、別の理由が存在していたことがわかっています。

その雑貨店の店主が店の営業を開始することになったとき、店につける名前を考える必要がありました。
そこで単純に「この土地の名前をつければいいのではないか」と考えた店主はガソリンスタンドのEssoでもらった地図を広げよく調べたところ、その場所には「Agloe」と書かれていたため、店主はそのまま自分の店に「Agloe General Store」と名付けたそうです。

Essoに置かれた地図は、何を隠そうGD社から買ったもの。そう、つまり人から人へと渡っていく間に実在しない地名が本当に存在する地名として姿を変え、あろうことか店舗の名前に使われるまで至ったという。

ランドマクナリー社の疑いは晴れましたが、その後アグロー雑貨店は店をたたみ、建物も取り壊されました。実際には存在しない地名がいつの間にか実在のものとなり、空想が現実になったと思われていたエピソードでしたが、時が過ぎついにそのストーリーも終わりを迎えました。Agloe誕生から約80年、2014年3月ついにAgloeの名前が地図に表示されなくなっていることが発覚しました。

地図の上だけでは生き残っていたAgloeもGoogleマップ上からついにその最後の姿を消してしまうことになったという、なぜか寂しく感じるエピソードでした。

いいなと思ったら応援しよう!

シャカ@NZからの記録
これからもたくさんの人に読んでもらえるよう、頭も心も豊かに成長したいです!サポートよろしくお願いいたします!!