見出し画像

詩 『車窓の陽』

車窓を突き抜ける夕刻の陽が
時折、開いたドアから吹き込む
ホームのざわめきと
かわいた風に揺れていた
向かいに座る人々は
時間が止まっているかのように静止し
電車の弾みの共鳴だけが車内を満たす
淡い青の高く広大な背景に
オレンジがかった陽が伝える
無機質な清澄の季節
つかのま通過する大きな川から
反射する光の輪郭は
窓ガラスの曇りに
眠るからだは柔らかな椅子のゆれに
溶けていった
鼠色の雲のささやきに
憧憬がうもれ
信号の赤に
欲望が剥がれ落ちた
前方に聳える山々
稜線を描く陽光の儚さへ
電車はただ
私たちを運んでいった

いいなと思ったら応援しよう!

かえで
よろしければサポートお願いします!

この記事が参加している募集