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はじめての投票

 二十四歳の秋、はじめて衆議院議員選挙の投票に行ってきた。


Before

 十八歳で選挙権を得てから今まで、他に選挙がなかったわけではない。正直に言うと、大学生のときは下宿で地元から離れていたとか、ちょうど予定が被ったとかで、私は投票をしたことがなかった。いわゆる「政治離れ」する若者と言われても否定はできない。

 政治(選挙)に関心がない理由もいくつかある。そして、私の理由の一部は、同世代の理由でもあると思う。少しだけその話をさせてほしい。

「テレビを見ない」から、そもそもいつ選挙をしているのかがわからない。周りに聞いてもテレビは見ていないし、郵便受けも見ていない人が多い。そのため投票日直前の盛り上がってきたタイミングで知ることになり、その頃にはもう予定が入っていたりする。かつてはテレビ番組で今回の選挙の争点や各政党の考えを横並びで比較されていたのでわかりやすかったが、テレビを見なくなってからはその機会がなくなった。もちろんWeb上で比較的るサイトは存在するが、それは投票しに行こうと思ってから見るサイトなので、その前段階には効果がない。

「SNSは見る」けれど、SNS上で流れてくる政治への意見はかなり偏ったもののになっていて、政治に強い関心がある人≒他人に攻撃的な危ない人という印象を抱いてしまう。そもそも各政党・各候補者にはそれぞれに良いところと良くないところがあって、それが個人に合う合わないということなのだろうけど、SNS上で「丸〇〇党は中国と繋がっている!外国は追い出せ!」とか「○○に投票するやつはバカ!」みたいな、極端に保守思想だったり知らない他人を馬鹿にするポストを見ていると、政治に参加する気も失せていく。

「見てきた政治」に汚職や利己的なイメージがあり、誰を選んでも同じな気がしてしまう。それは主に与党に対してだけれど、野党への期待値も低い。物心ついたころに一度政権交代があったが、それも失敗だったという印象。与党はあんまりなのに、野党は危なっかしいとなると、どこに投票すればいいのかわからない。また、世代に人数も少なく、そこからくる無力感もある。「自分が投票しても変わらないし」に対しては「投票率を上げるのが大事」とか「選挙権がない人に失礼」という返ししかなく、的確なアンサーはまだ見たことがない。

「受けてきた教育」の影響も大きい。小さいころから不安定な世の中だなんだと言われて育ち、学生時代にもVUCAがどうだとかで「社会がどうなるか予測困難なので己を鍛えて対応せよ」と教えられてきた。もちろんそれは選挙に行くなという教えではないのだけれど、自己責任的な考え方にはなりがちで、政治や社会の方に変わってもらうという発想が薄いかもしれない。

 私が並べたこれらの理由に対して、「その考えは間違っている!」とか、「政治を知らないバカだ!」思う方もいるかもしれない。私だってそう思う。政治に関しては完全に無知だ。ただ実態として、政治離れする若者はこんな感じだということをお伝えしておきたい。別に私が非難される分にはいいが、そんな風潮が続く限りは若者の投票率が上がることはないと思う。


After

 と、今まで投票に行っていなかったことの告白と、言い訳がましいその理由を書き連ねた上で、このnoteでやりたかったのは「第50回衆議院議員総選挙」に行ってきたことの報告の方。

 もちろん選挙に行くのはあたりまえで褒められることではないのだけれど、かまいたちの「タイムマシン」の漫才のように、一度行かなかったからずるずると行かなくなってしまうような状態を脱することができたのは大きい。そこで、はじめて投票をしてみた若者として、同世代に「こんないいことがあるよ!」という呼びかけをしてみたい。いくつか挙げてみる。

「すぐ終わる」からそんなに負担にならない。家に届いた紙を持って行って、もらった紙に名前を書くだけ。私の場合、投票所に着いてからものの5分ほどで投票が完了し、投票済証を受け取った。待ち時間くらいあるかと思っていたけれど、「え、これで終わり?」と拍子抜けするくらいあっという間に終わる。正直負担はゼロ。投票所は朝の7時から開いていたので、その後友人と遊ぶ用事もあったけれど、一切影響はなかった。

「普段行けないところ」に行けて楽しい。私は生まれ育った地元での投票だったのだけれど、投票所が通っていた小学校の体育館だった。今のご時世、善良な卒業生であっても母校を訪問するのは気が引けるので、堂々と母校に入れる機会はかなり貴重。あそこのタイル絵変わってないなーとか、トイレのドア綺麗になってる!とか思いながら投票するのはけっこう楽しい。もちろん母校で投票の人ばかりではないけれど、普段は入らないところに入る小冒険もいいかもしれない。

「開票がおもしろい」からちょっとしたお祭りのような感じになる。今までにも開票のニュースを見たことはあったけど、自分が投票した後の開票はおもしろさが倍増する。まるでM-1グランプリの決勝を見ているような感覚で、仮に消去法で選んだ候補者だったとしても、せっかく投票したのだから当選してほしいという親心が芽生えてきて、結果を見るのにドキドキする。当確者の紹介コメント大喜利も、やはり自分が投票したときの方がおもしろい。

「晴れやかな気分」で一日を終えることができる。今まで理由をつけて投票したこなかった時は、なんだかんだで罪悪感があった。開票のニュースを見ているときも、「まぁこんなもんだろうな」とか「興味もないし、忙しかったししょうがない」とか思いながら、どこかモヤモヤした気持ちにはなってしまう。選挙に行くだけでちょっといいことした気になるし、誰かに自慢するわけでなく勝手にいい気分になるのは、咎められるようなことではない。


 といった具合で、結論、選挙には行っておいた方がいいと思った。時間も労力もそんなにかからない。「この一票で社会が変わるのか!?」という強い気持ちがなくてもイベントとして参加したらいいし、それくらいに思っておいたら無力感もない。あとはその日の夜に、ポテチでも食べながら家族や友人と開票のニュースを見て、当確者の紹介コメントで笑えばいい。わりかし楽しい週末だと思う。


 一点だけ注意した方がいいと思うのは、SNSでの選挙情報の収集。先に書いたように、SNS(特にX)上での意見はなんであれ極端なので、見ていると全ての政党への印象が地に堕ちる。結局は小選挙区はその地区の候補者次第な気がするし、比例の方は各政党の方針を争点ごとに比較しているサイトで確認できる。どの政党が信用できるかどうかは判断しづらいし、特に思い入れのある政党や、逆に嫌悪感のある政党がなければ、政策の方針で決めていいと思う。あくまでも、私個人の考えとして。



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