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SF好きとして、さなコン2024の最終選考作品を読んで思ったこと

 今回から大きく変わった「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024」通称「さなコン」。(2023年までの選考通過者への選考委員のコメントシート、一次通過者の評価もなく、最終選考者の発表となった点など)
 そのためのなのか、昨年と比較して応募数とXでの盛り上がりが欠いた気がしたのは気のせいでしょうか……。

 という前振りはさておき、案の定最終選考には残らなかった身として、最終選考作を全て読み、今後に繋げようという前向きなエッセイです。(最終候補作品それぞれへの言及ではなく、総括的な内容です。悪しからず)


さなコンと私、新たな傾向?

 さなコン2021年の初回から参加。(22年はお休み)23、24年と作品を掲載し、参加者の方の作品も読んできました。SF好きになった理由、それがさなコンでした。そうした私が今回特に感じたこと。

 「さなコンはこれからどこへ行くんだろう……」

 です。今回は特にサイエンス・フィクションだけでなく、ファンタジー、幻想、少し不思議なお話……と23年までと比較してSFの幅がかなり広く取られていると感じます。私が21年に比べSF小説を多く読み、SFに対する思入れが強くなったためなのか、小説として読みやすく展開も良いのに、SFマインドがふんわりしている……と思う作品も半分近くありました。

 もちろん読者としては幻想やファンタジー、すこしフシギ系も好きなSF自由派です。ただ「物語のテーマに対してはSF要素を活かしきった作品を推したい!」という想いは、さなコンに初回から(2回目は読者として)参加してきた身として譲れないです。

最終候補作品について

 最初思ったのは、書き出し文からのダイナミックな飛躍は少数だったこと。遺品としての日記を主人公が読むパターンの多さにより、今回の書き出し文の特性による限界を感じました。

 日記という概念から飛躍したアイディアで勝負するよりも、日記のある日常、特殊な日記を描く作品が多かった、という印象です。

 この辺りは書き出し文に制約されるところですが、個人的には日記のことなんて忘れ去るような話をもっと読みたかったんだよ……と思ったりしました。

 二つめはSFジャンルである必要性って何なんだろう、です。
 SF要素が無しに十分成立しそうな作品がありました。(どんなタグ付けかは置いておいて)「コンテストだからSF要素入るに決まってるでしょ?」と言えば身も蓋もないですが、SF要素のアイディアが面白いと思ったのに、具体的にどういうものかはっきりとしないまま話が進む作品、思考実験より文学的側面が強く出た作品などが多かったです。
 ある意味ではSFの裾の尾を広げる、という期待で選ばれたのかな……と思います。この点についてはSFマガジンで賛否両論があった間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』以降のSF、と言えるのかもしれません。作品の影響を少なからず感じられることもありました。

 三つめは、説明の過不足の加減が難しい。
 読みやすさと分かりやすさと面白さを全て満たす作品を書けたら、もうそりゃプロの領域です。ただ今回の最終候補作では「あれ? どういうことだろう?」と想像力を働かせて補うことが何度かありました。わからないことが悪いとは言いませんが、他の部分でフォローできるか紹介するかどうか、面白いと思えるかの分かれ目です。
 ただ今回は文学的な要素が強い作品だったからなのかもしれません。
 文学的な作品には特有のわかりにくさを私は感じます。ぼんやりと言いたいことがわかっても、「で、何?」と文豪と呼ばれる作家の作品にも思う人間なので、素晴らしさが感じるほど、読めなかった私が、悪いです。

 意外にも、もう少し読みやすさへの配慮が欲しい作品もぽちぽちあったことです。一次の評価点をクリアしているので、単に自分の読解力不足かとも思いましたが、その表現に拘った明確な理由がわからず……。選考された理由がどこにあったのかよ知りたいと感じました。
 
 全体的に、最終候補作品だから大絶賛! という作品は少なかったです。(最終候補作品を選ばれた方と読書の好みが合わないわけではないと思います。面白いと思った作品を書いている選考委員の方もいるので)
 そう言う意味で何が最終選考に残った理由か、講評の公開を望みますが、賞品化してしまう(?)らしく企画を読む限り選考に通過した人しか読めない仕様になったのが残念です。プロの読み方って、読みたいですし、勉強になりますもんね。(この辺り2023の影響を感じますね……)

 総括はやはり、「さなコン、これからどこに行くのだろう」。文学的傾向は初回の優秀作から感じてはいましたが『ここはすべての夜明けまえ』以降その傾向がコンテストで強くなるなら、SF自由派を標榜する身としてもったいない気もします。(例えば、お馬鹿で痛快な作品も読みたい、とかね)

自分に足りなかったこと


 最後に自戒を込めて自作品の反省をまとめて締めにしたいと思います。
 過去作は1次通過してきたのに、今回はおそらく1次通過もなかった? 血を吐くほど(比喩)推敲した、渾身のボーイミーツガール、サイバーパンクSF、AIも出ます。

 さて反省会を。まずはさなコンは、文学SFを描け(個人的見解です)
 「文学SFって何よ?」と自分でツッコミますが、最終候補作品はどの作品も文学性が高かったです。文学性って難しいですよね。文学性って何んなん!(これは勉強して、後日自分なりの考えをnoteで報告します)。
 それなのに、「SFが中高生に読まれていない」(?)と聞くや中高生を意識した物語を作り始めたんですよね……夏だし。pixivユーザーには学生さんも多いはずだしSF好きを広げたい……大きな過ちでした。それに別件で今の中高生はラノベは読まない。小説を読むという統計資料を読んで愕然としました……。

 次に、事象を書くのではなく、登場人物の心情を描け
 短編の中で起伏をつけすぎたなぁ。今思うと10万字の梗概を書いているとも思います。登場人物たちの感情、心の動きが深掘りが未熟です。
 そもそも心情を描くのが苦手ですね。
 この点は文学作品「も」読んで読んで、勉強します。(とはいえ、やはりSF好きなので一番SFを読むと思いますが)

 最後に、自分にしか描けないものを書け
 最終選考作品の独特な世界観に触れるたびに、自分の描きかたの平凡さに打ちひしがれました。アイディアをどう読者に魅せるか。情景が細かければ良いと言うものではなく、読みやすさ、スピードではない。オリジナリティとも違う。画面の切り取り方と合わせかた。語彙の多様性や知識より、どんな心情を切り取るか。俯瞰的視点の不足を痛感。この点は日常の中でアンテナを伸ばし、他の人の本と作品をその視点で読むしかないですね……。

 まだ反省点はありますが、ひとまずここで筆を置きます。最終候補作品の中でも特に面白かった作品は、Xでポストしたいと思います。

 最後になりましたが、選ばれた皆さま、おめでとうございます。そして、お読みいただきありがとうございました。

 

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