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窮状の中でもしおれず立ち上がる女性たちのしなやかさが香りたち、気品のある力強さにあふれた作品に結実…★劇評★【舞台=貧乏物語(2022)】

 貧富の差が広がり続けているというのに、その解決への機運が一向に盛り上がらない、不思議の国にっぽん。政治的なエネルギーにならないばかりか、「貧困を解決してこそ本当の経済的な豊かさは得られる」という欧米や世界の経済学では常識の考え方でさえ、日本では政治家や国民の間で共有されていない。そしてその貧困問題というものは、近代社会が始まって以降、高度成長やバブリーな時代も含めて今に至るまで変わっていないのだ。世の中が多少浮かれていた大正という時代に庶民の側から貧困問題の研究と解決に立ち向かった経済学者、河上肇の周りにいた妻や娘をはじめとする女性たちの姿を描くことで、知識人の男性に対する思想弾圧ばかりか、女性たちの生活そのものをも蹂躙していた国家のありようを描いた井上ひさしの舞台「貧乏物語」が、こまつ座では実に24年ぶりに上演された。獄中にあった河上の留守宅での女性たちの会話がその物語のほとんどすべてだが、栗山民也の繊細な演出によって、窮状の中でもしおれず立ち上がる女性たちのしなやかさが香りたち、気品のある力強さにあふれた作品に結実していた。(画像は舞台「貧乏物語」とは関係ありません。単なるイメージです)
 舞台「貧乏物語」は2022年4月5~24日に東京・新宿の紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演された。公演はすべて終了しています。

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★舞台「貧乏物語」公演情報=公演はすべて終了しています

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