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ひとつひとつのせりふが醸し出す有機的な意味合いがよりふくらみを増して…★劇評★【舞台=イーハトーボの劇列車(2019)】

 夜汽車というのはどうにも心がガタゴト揺り動かされて、切なくてしかたがない。何か蒸気や電気以外のものが動かしているんじゃないかと思えてくるからだ。それは汽車に乗っている人全員分の旅先に向けた思いだけでなく、この世に何か処理できないままのことを遺して旅立たざるを得なくなった人たちの想いさえも動力になっているんじゃないか。そんな気がするのだ。井上ひさしが、宮沢賢治の9回の東京行きのうち、4回の旅に着目して、賢治の人生における社会や家族や言葉に対する切なる思いを描き出した舞台「イーハトーボの劇列車」の再演公演(こまつ座第126回公演・紀伊國屋書店提携)を観ていると、そんな夜汽車での自らの感情がよみがえって来た。今回再演とは言え、永らく小劇場界の旗手として注目され、いまやその透徹した目線で日本を代表する演出家の一人として活躍の場を広げている長塚圭史が新たに取り組んだことによって、ひとつひとつのせりふが醸し出す有機的な意味合いはよりふくらみを増し、人間的な体温のぬくもりがそれぞれのシーンを包むような得がたい余韻を残す作品に仕上がっている。(写真は舞台「イーハトーボの劇列車」とは関係ありません)
 舞台「イーハトーボの劇列車」は2月5~24日に東京・新宿の紀伊國屋ホールで、3月2日に山形県・川西町の川西町フレンドリープラザで、3月6日に岐阜県大垣市の大垣市民会館大ホールで、3月8~10日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで、3月12~13日に富山市の富山県民会館ホールで、3月16日に仙台市の日立システムズホール仙台シアターホールで、3月20~21日に熊本市の熊本県立劇場演劇ホールで、3月24日に大分市のJ-COMホルトホール大分大ホールで、3月26日に広島市の上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)で、3月30~31日に大阪市の新歌舞伎座で上演される。

★舞台「イーハトーボの劇列車」公演情報

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