禁断の想い人「不滅の恋人」とのもどかしい関係性を中心に、世間の無理解や難聴などとの闘いも散りばめてドラマティックに織り上げた作品に…★劇評★【ミュージカル=ベートーヴェン(海宝直人・佐藤隆紀出演回)―(2023)】
ポップスの世界では「ジュークボックスミュージカル」というジャンルがあって、ひとりの音楽家の音楽をふんだんに使って、あるいは効果的につなぎ合わせて、ミュージカルを創り上げてしまうケースがあり、その成功例もまた多い。ミュージカルの内容も、その音楽家や歌手の伝記のようなものから、音楽の世界観を借りて新しい物語の中に定着させるタイプのものまで多彩な作品が世に送り出されている。しかしクラシックの場合、楽曲のふり幅が広く、そもそも現代のミュージカルの音楽とは演奏されるときのシチュエーションが違うために、すべてをひとりの音楽家の音楽でという作品はなかなか生れなかった。「エリザベート」などで知られるミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイのウィーンミュージカルのヒット連発コンビが、ベート―ヴェンの楽曲でこれに挑んだのがミュージカル「ベートーヴェン」だ。オリジナル楽曲もわずかに含まれてはいるもののほぼ全曲がベートーヴェンナンバー。作曲の苦悩などに偏りがちな従来の音楽家人生ミュージカルの常識を打ち破って、禁断の想い人「不滅の恋人」との説が有力なアントニー(トニ)とのもどかしい関係性を中心に、世間の無理解や難聴などとの闘いも散りばめてドラマティックに織り上げた作品に仕上がった。世界初演だった韓国公演に次ぐ2023年12月の日本初演は、クンツェ&リーヴァイの創り出す世界と日本の相性の良さをあらためて感じさせるものとなった。(写真はミュージカル「ベートーヴェン(2023)」とは関係ありません。単なるイメージです)
ミュージカル「ベートーヴェン(2023)」は、2023年12月9~29日に東京・日比谷の日生劇場で、2024年1月4~7日に福岡市の福岡サンパレス ホテル&ホールで、1月12~14日に名古屋市の御園座で、1月19~21日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術KOBERCO 大ホールで上演される。
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なお今回のミュージカル「ベートーヴェン(2023)」は、ベートーヴェンの弟カスパール役とヒロイン、アントニーの夫、フランツ・ブレンターノ役がWキャストであるため、4種類の組み合わせが組まれていますが、劇評を掲載するのはミュージカル「ベートーヴェン(海宝直人・佐藤隆紀出演回)(2023)」だけに限らせていただきます。超人気公演ゆえ、取材機会に限りがございます。ご容赦ください。このため劇評が掲載できない小野田龍之介さんと坂元健児さんのファンや関係者の方には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。また別の機会に採り上げさせていただければ幸いです。ご了承ください。
★ミュージカル「ベートーヴェン(2023)」公演情報
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