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現代演劇のオリジンとしてのウィリアムズ戯曲の古典的な構成美と、21世紀にもつながる濃密な人間関係の全く新しい見せ方を両立させている…★劇評★【舞台=地獄のオルフェウス(2015)】

 現代人はがんじがらめだ。はてしない欲望と現実との摩擦。ちょっとも前に進まないじりじりと身を焦がす焦燥感。ずっと心を支配してきたコンプレックスと逃げ場のない空間。すべての抑圧が自分の身の内側にベクトルを向けているような気さえする。そんな現代人の様相が劇作家テネシー・ウィリアムズの戯曲のあちこちに散りばめられている。ウィリアムズが「現代演劇の象徴」と言われるゆえんだろう。そのウィリアムズが絶頂期に発表した舞台「地獄のオルフェウス」が、彼の代表作「欲望という名の電車」の主人公ブランチを2002年に演じきった大竹しのぶと、テレビや映画でナイーブさの中に鮮烈な存在感を見せつけてきた若き俊英、三浦春馬によって、東京・渋谷のシアターコクーンで上演されている。しかも、演出にはロンドンの演劇界で今最も注目される若手演出家フィリップ・ブリーンをあて、現代演劇のオリジンとしてのウィリアムズ戯曲の古典的な構成美と、21世紀の今にもつながる濃密な人間関係の全く新しい見せ方を両立させている。(画像は舞台「地獄のオルフェウス」とは関係ありません。単なるイメージです)
 舞台「地獄のオルフェウス」は、5月31日まで東京・渋谷のシアターコクーンで、6月6日から14日まで大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演された。

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