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なぜ働かなくてはいけないのかを哲学する。『14歳からのアンチワーク哲学』レビュー
本好きライター瀬田かおるが、あなたにオススメしたい本をご紹介します!
人はなぜ働かなくてはいけないのか?
✅日曜の夕方。明日からの仕事を思い気が滅入る
✅宝くじ1等当たったら仕事なんてやめるのに
こんなこと一度は思ったこと、ありませんか?
そこで質問です。
「そんな思いまでして人はなぜ働かなければならないんでしょうか?」
改めて聞かれると答えに詰まってしまいます。だって、大人になったら社会に出て働き、お金を稼ぐというのが当たり前だと思って生きてきたから。
ところが今回ご紹介する『14歳からのアンチワーク哲学ーなぜ僕らは働きたくないのか?』ホモ・ネーモ(まとも書房)では、そもそも労働を「悪」と明言しているのです。労働は世の中から撲滅された方がいいと。一体どういうことでしょうか。
本書では、学校へ行くのが嫌な14歳の少年と、ニケと呼ばれる50歳のニートおじさん(自称哲学者)が登場します。
その二人が、「労働とは何か」「人間とは?」など、対話形式でそれらの問いについて問答が繰り広げられています。小説仕立てになっているので非常に読みやすいのです!
そこで、このレビューでは書籍の概要と読了した感想や気づきをお伝えします。ぜひ最後までお読みくださいませ。
⬛この本をひとことで言うと
「働かない」という選択肢を肯定的に捉え直し、仕事やお金、そして人生そのものについて考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
⬛本の概要
本書は、10代の若者に向けて書かれた「アンチワーク」の入門書です。「アンチワーク哲学」とは、労働が悪であることを論理的に証明する哲学のこと。
とはいえ、単に働くことを拒否しているのではありません。
「生きていくためには嫌なことも我慢して働かなくてはいけない」という、働くことについての思い込みをいったん取り払い、人生を自由に生きる道を探る。それがアンチワーク哲学です。
二人の問答はやがて、労働のことからお金の話にうつります。
お金のために働かなければいけないというのなら、全国民にお金を配れば(ベーシックインカムという)人は働かなくていいのでは?という問答がはじまります。
ベーシックインカムとは、国民全員に毎月一定額のお金を配る仕組みのことです。
そうして働くことについて丁寧に紐解きながら、働くことが必ずしも幸福につながるわけではないことを説いています。
⬛学びのポイント
1. 「働くこと」の意味を改めて考えてみる
本書の大きなテーマは、「働くとはどういうことか」を見直すことです。
この社会は、仕事や所属する企業のネームバリューが高いほど、価値ある人間とみなす傾向があります。
そういった思い込みを疑う視点を本書は提供してくれます。
2.「良い会社に勤めることが=幸せ」なのか疑ってみる
人生の大半の時間を占める「労働」。そして良い会社に入るために良い学校に入り、良い成績をおさめる。けれど、良い会社に勤めることが本当に幸せに繋がるのか。
それについて自称哲学者のニケは、「働くことが必ずしも幸せをもたらすわけではない」と主人公の少年に主張しています。
■ まとめ
働かなくては生きていけないし、働かないという選択肢はそもそも無かったという人が大半ではないでしょうか。もちろん私もそうです。
それが、本書の冒頭に「労働は悪」と書かれていてビックリしましたが、単純に働かなくてもいいと言っているのではないことが読み進めるうちに分かってきました。
ベーシックインカムを配ったら、人は皆、無気力になってしまうのではと思いましたが、人には成長欲があるので放っておいても何かしたくなる生き物だから問題ないというニケの話には新しい視点を与えてもらえました。
本書を読み進めるうち、気づくと自称哲学者ニケの質問に対して、14歳の少年と一緒になって考えている私がいました。二人の問答からその課題を私も考えてみると、徐々に「考えるってなんか楽しいかも!」なんて気分になってきたのです。
本書は働くことについてだけでなく、世の中にある「当たり前」が本当に当たり前なのか、考えたくなる1冊でした。
また、こちらの書籍を副読本として読めば、さらに考えを深めることにつながるでしょう。
『14歳からのアンチワーク哲学ーなぜ僕らは働きたくないのか?』『労働廃絶論』は、まとも書房様よりご恵贈いただきました。
改めまして、ありがとうございました。