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ライターとしての適性に気づかせてくれた1通のメール
心をつなぐ取材ライターを名乗っている私ですが、取材ライターが天職だと思うようになったのは、6年半前に今の会社に入ってからです。理由は、前の会社では店舗取材が多く店や商品について短時間で聞くことがほとんどだったのに対し、今は個人の生き方や考え方について時間をかけて伺うことが多いからだと思います。
もっとも、転職してすぐそのことに気づいたわけではありません。きっかけとなったのは、あるクライアントの担当者Tさんからいただいた1通のメールでした。
そのように思っていただけてこちらも嬉しいです。せたさんの話術によって先生方も気持ちよさそうにお話してくださるので(中略)ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
私が取材・執筆を担当していたのは、40歳前後の若手研究者を紹介する連載記事でした。お話を伺う先生方とは同年代で、たまたま関西出身の方が多く、取材はいつも盛り上がっていました。その場に毎回立ち会っているTさんから感謝されたことで、自分の取材力に自信をもつことができたのです。
もっとも、冒頭に「そのように思っていただけて」とありますから、ありがたいコメントを誘発したのは、直前の私のメールだったことになります。
昨日はありがとうございました。いつも個性的な先生と興味深いお話ができ、こうした機会をいただけることに感謝しております。
このメールを送っていなかったら、私が自分の適性に気づくのは、もっと遅かったかもしれません。自分の思いをしっかりと伝えることの大切さを、いま改めて実感しています。
そして、Tさんに実力を認めていただけたことによって、他のクライアントの取材も自信を持って臨めるようになりました。それが、今の自分につながっているのは間違いありません。
その後、コロナ禍で会えない間にTさんは退職され、この案件も競合他社に奪われました。しかし、私にとっては生涯忘れられない仕事であり、Tさんは人生における恩人のひとりだと思っています。