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なんでここにいる 0003
_Rainy 豆腐
「庭の雑草は雨上がりに抜きやすい。」
雨をふんだんに吸収した土壌はしっとりとした表情だ。
さわると爪のなかに土がこびりつきそうで、想像してみるだけで手を洗いたくなる。
微生物のにおいを含んだ目に見えない空気を、適当だけど、蒸気と呼ぶことに。ぼかし菌のことなど考えながら。
列車が、水しぶきみたいな音をたてて近くを走っている。
白い椅子に腰かける。かたちはなめらか。
こどもと夢中で遊ぶ外国人のおかあさんが私のひざにぶつかる。
「あ、すみません!」日本語だった。
すこし離れた噴水の水しぶきの音が私の意識の薄紙をふるわせる。
柱の影に男のこが隠れた。こちらからは丸見え。
Where are you? って、母は笑いながらだ。
升目の境界。足元には幾何学模様のタイル。立ち上がり、花に近づく。
めずらしい花。しかし、ほんとうはそんなことはなくて、私が花に詳しくないだけなんだきっと。
自動扉がひらく先、自転車のヘッドライトが点滅してゆれている。そこはアートギャラリーの、外側だった。
昼下がりの言葉にまだ返事していないことを思い出す。
「帽子持ってない? 日に焼けそう。」
2017年5月 セサミスペース M (Twitter)