
読書感想21「水沢文具店 あなただけの物語つづります」安澄加奈
こんにちは、せ→る→です。
本日は、安澄加奈さんの
「水沢文具店
あなただけの物語つづります」
の感想を書こうと思います。
最近は、日常系やほっこりする系の小説を
読むことが多いです。ホラーやサスペンスは
苦手なのですが、色々なジャンルの作品に
触れていきたいなと思う今日この頃です💦
※ネタバレあり
著者:安澄加奈
イラスト:pon-marsh
デザイン:bookwall
出版社:ポプラ社
ポプラ文庫ピュアフル
(敬称略)
<あらすじ>
明日町こんぺいとう商店街にある
文房具店「水沢文具店」の入り口には、
「ペンとノートをお買い上げの方、
ご要望があれば話を書きます。
オーダーメイドストーリー」
という張り紙がはってある。
店主が自分のためだけに書いてくれる物語
読むと悩みが解決するという噂があって―。
店を訪れると、
無愛想でどこか謎めいた店主が迎えた。
ポプラ社HP
主人公・藤原栞は、
教員採用試験に受かってはいないものの、
人材不足の小学校で契約社員のような形で
担任をすることになります。
1年生のころは素直に言うことを
聞いていた子供たちが、2年生に上がると
生活に慣れて騒ぎ出したり口答えしたりし
栞はクラスを上手くまとめられず、
授業もなかなか進みません。
保護者からも
「若すぎる」「頼りない」などと陰で言われ
栞は自信をなくしていました。
そんなとき、
水沢文具店の変わった貼り紙を見て
オーダーメイドストーリーを
依頼することになります。
水沢文具店の店主・龍臣に栞は
不安な気持ちを打ち明け、
物語を書いてもらいました。
書いてもらったその物語の主人公は
栞自身であり、物語終盤には、
忙しい仕事の合間に必死に勉強し
教員採用試験に合格。
不安や迷いを抱えながらも、主人公は
今の道を歩き続けることを選んでいました。
「ほしかったのは、
自分を肯定してくれる言葉だった。
周囲に認められないことに、
それでもみっともなくしがみついている
ことに対する、許しだった。
栞はすでに、自分でも気づかないところで
答えを出していた。けれど、
苦しくて折れそうになった今、
どうしても、”それでいい”と
誰かに言ってほしかったのだ。」
(P39)
不安や迷いがあるとき、誰かに相談したり
SNSに呟いたりすることがあると思いますが
自分の中で答えは決まっている
ことってよくありますよね。
だけど、
その決断が本当に良いのか自信がないから
誰かに”それでいい”と言ってもらいたい。
すっごく共感する部分でした。
正直栞は、教員を辞めるのではないか
と予想していたのですが、
教員を続けることを決意。
その後の学校生活では
授業で様々な工夫をし
なんとかクラスをまとめていきます。
栞が、子どもの喜ぶ顔を想像しながら
可愛い付箋やスタンプを買う姿は微笑ましく
子どもが大好きなのが伝わってきます。
そんな栞の姿を思い浮かべながら、
お店に仕入れる商品を選んでいる
龍臣の姿もなんだか和みました。
2章では、
中学校でいじめを受けている女の子・優希が
オーダーメイドストーリーを依頼します。
そんな優希のために龍臣は、
国を追放された主人公が一人で旅をして
沢山の人と出会う物語を書き上げました。
優希は、今までいじめに耐えてきましたが
書いてもらった物語を読み、
引っ越すことを決意します。
以前投稿した読書感想でも
"逃げ道を作ること"について
言及したのですが、この作品でも
逃げることは悪いことではない
と書かれていました。
"逃げることは旅立つことと同義にできる"
“同じ道を進むことを決めた栞”と
”違う道を進むことを決めた優希”が
対比的に描かれていたのが印象的でした。
龍臣は大衆向けの物語を書く小説家と違い
個人に向けた物語を書きます。
無愛想で、何を考えているか
いまいち掴めない人ですが、
依頼者一人ひとりにしっかり向き合い
寄り添う姿勢がとても素敵だと思いました。
物語には現実を変える力はない。
けれど、
“一歩前に進む勇気をくれる”
そんなストーリーでした。
面白かったです!
2巻も出ているみたいなので
読むのが楽しみです。
ここまでお読みいただき
ありがとうございました。
その他の読書感想文も
お時間あったらぜひ!