子ども食堂だいちのめぐみ #6
第六話:特製肉味噌まぜそばと学生たち
春の終わりが近づき、気温も上がり始めたある日、「だいちのめぐみ」では新しいメニューである特製肉味噌まぜそばが大人気となっていた。特に学生たちからの評判がよく、放課後や部活帰りの学生たちが、学校帰りに店を訪れる光景が増えていた。
この特製肉味噌まぜそばは、豚汁と同じオリジナルの味噌を使っており、杉田味噌醸造場と町田醤油味噌醸造場の味噌を、めぐみが絶妙な配合でブレンド。さらに、挽肉と混ぜ合わせて、上越特産の卵を贅沢にかけている。風味を変えたいときには、妙高市から取り寄せた「生かんずり」を添え、特別な一品に仕上げている。ごま油の香り、刻みネギ、ニラ、玉ねぎが絶妙なハーモニーを奏で、ボリューム感もたっぷりだ。
第一部
放課後の時間になると、店は学生たちで賑わうようになった。この日も、地元の高校サッカー部の生徒たちが、練習帰りに店に立ち寄った。中でも晃四郎の兄である颯二郎が、友達と一緒に来店した。
「おばちゃん!肉味噌まぜそば、やっぱりうまいな!」と颯二郎の友達のダイゴが笑いながら言った。
めぐみは、彼に優しく微笑みかけ、「いつも食べてくれてありがとう。君たちが元気いっぱい食べてくれるのが、私の喜びだわ。」と答えた。
ダイゴはまぜそばをかき混ぜながら、「この生かんずり、ピリッと辛くてうまいんだよな。練習の後に食べると、元気が湧いてくる感じがするよ。」と話した。
その様子を見ていた晃四郎も興味津々で、「ダイゴー、ぼくも今度まぜそば食べてみたいな!」と言うと、ダイゴは笑って、「お前にはまだ早いかもな。でも、お兄ちゃんたちが残したらあげるよ。まず残さないけどな。」と茶化した。
第二部
この日は、他にも多くの学生たちが訪れ、まぜそばを楽しんでいた。そんな中、少し疲れた表情の女子生徒が一人で店に入ってきた。彼女の名前はミカ。勉強と部活の両立で、最近特に忙しくしていたという。
めぐみは彼女に声をかけ、「こんにちは、今日は疲れた顔してるわね。まぜそば、食べてみる?」と勧めた。
ミカは少し戸惑いながらも、「はい、お願いします。実は少し元気が欲しくて…」と答えた。めぐみは、彼女が元気を取り戻せるよう、特製肉味噌まぜそばを心を込めて準備した。
香ばしいごま油の香りが広がり、出来立てのまぜそばが目の前に運ばれてくると、ミカの顔に少し笑顔が戻った。「いただきます!」と一口食べると、肉味噌と卵、野菜が絶妙に混ざり合い、その旨みが口いっぱいに広がる。彼女は思わず「美味しい…」とつぶやいた。
「うちの肉味噌まぜそばは、力が出る一品だから、疲れたときにはぴったりよ。」とめぐみが笑顔で言うと、ミカは大きく頷いた。
第三部
その後も、「だいちのめぐみ」には、学校帰りの学生たちが立ち寄り、賑わいが続いた。めぐみは、このまぜそばがただの料理ではなく、学生たちにとってエネルギーを補給する大切な時間であることを感じていた。
ある日、部活帰りの学生たちがまた来店し、まぜそばを楽しんでいると、話題は自然と学校のことや将来のことへと移っていった。学生たちが思い思いに夢を語る姿を見ながら、めぐみは彼らの成長を見守る喜びを感じた。
「めぐみさん、いつも学生割引してくれてありがとう。おかげで、こうして友達と楽しい時間を過ごせてます。」と、一人の学生が感謝の言葉を伝えた。
めぐみは優しく微笑んで、「こちらこそ、君たちが元気に食べてくれて本当に嬉しいわ。頑張る君たちを応援するのが私の役目だからね。」と返した。
第四部
この日、「だいちのめぐみ」は学生たちだけでなく、町の人々も集まり、特製肉味噌まぜそばやおにぎり、豚汁を楽しむ場となっていた。めぐみは、一人ひとりの笑顔を見ながら、この店が地域の人々にとっての拠り所になっていることを改めて感じた。
晃四郎も学生たちと一緒に店内で楽しそうに過ごし、「いつかぼくも、この店でおにぎりやまぜそばを作るお手伝いしたいな!」と元気よく宣言した。町の人々もその様子を温かく見守り、「頼もしいね。晃四郎くんがいる限り、この店は安心だね。」と笑顔で応じた。
「だいちのめぐみ」は、こうして地域の学生や住民の心をつなぐ場所として、その役割を果たし続けていた。そして、今日もまた新しい顔が訪れ、めぐみと晃四郎が迎えることで、温かな時間が生まれていくのだった。