【読生感想文】 旅猫リポート 【有川 浩】
猫は好きです。
でも動物にスポットを当てすぎと感じる作品は元来苦手でして。
単純に笑えて現実にはありえないようなデフォルメとか、
ファンタジー的な楽しみ方ならええんやけど、、、
真面目にリアルな作風の作品で動物にスポット当てちゃうと、
単純にあざと過ぎたり、
美化し過ぎだと感じてしまったり、
人間側の都合の良い解釈を押し付けられてるような気がして、
どうしても手放しで好きになれなかったんすよね。
有川さんの作品は大好きで、
ざっくり半分くらいは読んできたかなというところ、
この作品はちょいと敬遠してしまってました。
でも他作品やエッセイ2冊を読み終えたところで、
「きっと有川さんなら大丈夫だ」
という信頼を得ました。
結論としては、素晴らしかった。
なにか有川さんの集大成のような印象を受けました。
友情を描き、
恋愛を描き、
家族を描き、
人間関係の雪解けを描く。
そこにメタ的な視点も持つ聡い猫ときた笑
いやーね、読み始める前にこんな映画広告見せられちゃったらさ。
「あーなるほどね、きっとそういう話やんね」って思うやん?笑
大丈夫、ちゃんと裏切りはある笑
映像化についてはやはり他作品と同様に、
原作ファンの酷評がチラホラあるようですが、
有川さんが仰っている通り、
観る自由と観ない自由ってことで。
エッセイにも有川さんはご自分で、
世の中にはその手の話をテーマに扱う作品が多すぎるかもと仰ってたけど、
そんな有川さんが描くのだから、
妙な誇張も美化も神格化も無いだろうと。
誤解を恐れずに少し尖った表現をしてしまうが、
勝手ながら個人的な意見としては、
動物好きな人を見ていると、
ペットを家族と呼ぶくらい大事にしていると自負している人ほど、
動物側の立場で考えたり、
対等な関係を築こうとは思っていないように感じられる。
そのような傾向が強いのではないかと思ってしまう。
溺愛や過保護という言葉の枠を超えてしまっているような。
言葉で反駁しない相手を選んで、
自分の都合で自己満足に付き合わせているような。
対等が正しいのかという話もあるとは思うけど、
なぜ対等ではいけないのかという疑問もある。
どうしても知能が高くて面倒を見ている人間が上、
知能が低く言葉も話せない動物が下、
そんな考えが透けて見えてしまう「家族」が、
一定数が居るように感じる。
むしろ、動物の方がそんな勘違いをしている人間を許容してくれている。
そのくらいに思っていた方がきっと良い関係を築ける。
本気でそう思ってしまう。
この作品は人間と動物が家族で居られるための、
すごく大事になことをやんわり優しく教えてくれているように感じる。
目を凝らし耳を傾ければ、
言葉にならないことでも、
相手が人間でもそうじゃなくても、
伝わるものは伝わるし、
秘めた思いも透ける。
人間と動物の、
「こうあって欲しい」という関係性が描かれた、
非常に良い作品であったと素直に思えた。