運動方程式に科学の精神を見る
「運動方程式」とはものの運動を説明する式で、高校物理で習います。ボールや人工衛星、ひいては太陽の周りを回る惑星の軌道まで知ることができるすごい式です。今回はこの運動方程式のお話です。
ただしここでは計算はしません。代わりにその背景にあるココロ、運動方程式の裏にある「物事の見方」にスポットを当ててみたいと思います。
とはいえ、まずは紹介から
運動方程式は以下のように書かれます。
$$
\LARGE
{ma=F}
$$
これ以降、この式以外は出しません。m は物体の質量、a は加速度、F は力です。
この式は誰しもが理解している
式で見せられるとなんだか難しそうですが、おそらくこれを読んでいる人のほとんどが感覚的にはこの式を理解しています。
たとえばみなさんが、机の上に置いてあるおもちゃの車を押すとします。すると止まっていた車は加速して動きます。
このときの加速度 a は、式の通り押す力 F に比例します。強く押すほど一気に速くなるし、そっと押せば少しずつ速くなります。感覚的に当たり前ですね。
$$
\LARGE
{ma=F}
$$
それでは次にニュートラルにした普通車を押す場合はどうでしょうか。実際の車は重いので、人間の力で押しても、ほとんど加速しないことがわかります。1トンもある車を人の力で押しても、ゆっくりとしか動かないのは容易に想像できます。
今度は運動方程式を少し変形して両辺を質量 m で割った式を見てみます(式の中身は全く同じです)。
$$
\LARGE
{a=\frac F m}
$$
車の加速度 a は、車の質量 m に反比例することがわかります。押す車が重くなるほど車はゆっくりとしか速くなりません。
当たり前のようだがすごい式
なんとも単純で当たり前のように見えますが(注1)、この方程式をしっかり使いこなせると、動く物体のあらゆる時間の位置(軌道)を完全に予測できてしまいます。なので、ビリヤードの球の動き、人工衛星の軌道や速度など、すべてがこの運動方程式から予測できてしまうのです。
ビリヤードの動きであればこの式がなくても感覚で予測できますが、人工衛星の軌道となってくると私たちの日常的な感覚を超えてしまうので、この式なしでは予測は不可能です。改めて数式で定式化することの威力を思い知らされます。
運動方程式はただの話のすり替え?
こんなすごい運動方程式ですが、ちょっと考えてみるとなんだか話のすり替えのように思えてくるのです。詳しく説明しますね。
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