<戦時下の一品> 軍人五箇条の杯
こちら、軍人が天皇のためにあるべき姿を示すため、1882(明治15)年1月4日に下賜した勅諭=陸海軍軍人に賜りたる勅諭=にある、軍人として守るべき五箇条の精神を一つずつ記した杯のセットです。
当時の将兵が持ち歩いた軍隊手帳では、一番最初にこの「勅諭」が載っていて、特にこの五つの精神は問われた時によどみなく言えるようにしておかないと、鉄拳の制裁は免れないという基本中の基本でした。
勅諭では「忠節、武勇、礼儀、信義、質素」が軍人を軍人とさせるものであり、軍人の精神であると説いています。また、長野県長野市にあった長野中等学校(現・長野高校)では、生徒に教育勅語を暗唱させるのはもちろん、この軍人の勅諭も暗唱させていたといいます。
この五箇条は、軍人を象徴させるようなものですから、満州事変からの凱旋や通常の除隊に合わせた商品のカタログなどで普通に取り上げられているほど、定番品だったのでしょう。
一方、今回入手したものは「支那事変記念」と文字を入れてあるだけで部隊名もありませんので、一般向けに販売したものかもしれません。
とすると、この杯のセットは日中戦争から太平洋戦争までの間、1937(昭和12)年から1941年の間に作られたもの。87—83年前の商品ということになり、当時の世相のリアルさがそのまま出ています。こうした品がありふれた時代を、再現させたくはありませんね。
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