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NEW DAYS ★ プチDAYS★ブルックリン物語

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ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
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#ミネアポリス

ブルックリン物語 #81 「ミネソタサウンドマシーンがやってきた!」(3)

会場のあったまったいい感じの空気を受けてカウントオフ。 ”Mischievous Mouse"が始まった。アリとマットとのトリオの時(ブルーノート東京世界発信 2020 Autumn@Blue Note NY)よりbpmを2か3下げてみる。高速スイングよりもリラックスした雰囲気で始めた方がいい。滑り出しは慎重にスイングフィールに乗る。会場のいいノリをそのまますくい上げファーストコーラスを終えピアノソロへ。 アップライトのスタンウエイ。スティーブが「Senriのために最強の

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ブルックリン物語 #80 「ミネソタサウンドマシーンがやってきた!」(2)

部屋の温度をコンシェルジェに頼み、固定から自由設定に変えてもらい77度にして夜は眠る。これくらいがちょうどいい。一眠りして真っ暗な部屋の中でうっすら目を開ける。朝の気配を感じカーテンを恐る恐る開けてみる。まばゆい光のシャワーが一気に部屋に充満する。時計を見ると7時。熱いシャワーを浴び、ベッドの上で簡単なストレッチをする。 「おはようございます。ぴはご飯を済ませましたか?」 ライブの間は預かってくれているマネージャーKayにテキストを送ると「もういっぱい食べてのんびりされて

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ブルックリン物語 #79 「ミネソタサウンドマシーンがやってきた!」(1)

2020年に決定していたライブスケジュールが、パンデミックでゼロになってしまった。 ツインシティー(ミネアポリス、セントポール)の2夜にわたるライブもその目玉だった。仕事がなくなり旅がなくなり人との接触さえもなくなり「家にいること」が当たり前になった。そんな生活を基調にして、新たなポストコロナをどう生きるかを考えた。 音楽家では食べてはいけないな。生活できないものを仕事とは呼べない。じゃあ、音楽は趣味だ。究極の。これもまた真理なのだ。じゃあ、職業、お金を儲けて暮らすだけの

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ブルックリン物語 #59 我が心のジョージア”Georgia On My Mind”

2017年クリスマス、最初にミネアポリスのセントポール国際空港で演奏 してから駆け足で一年が過ぎ、次の冬がやって来て再び同じ場所で弾くチャンスをもらったので、早速行って来た。 ミネアポリスの大地は雪に包まれ寒そうだった。表情豊かな自然に育まれた雪景色が飛行機の窓の向こう側に流れていく。通路側からほんの少し首を伸ばして一年前に思いを馳せる。空港で行き交う忙しい人たちに向かって弾くなんて果たして聴いてもらえるのだろうか?  そんな不安を抱え窓からミネアポリスの景色を眺めたのを憶

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ブルックリン物語 #47 "A Place In The Sun" 太陽のあたる場所

毎年12月に入ると「今年もメサイヤに行きません?」と誘ってくれる友達がいる。 今年で3年目のメサイヤを聴きにデビッドグリフィンホールへ。足を踏み入れると正装した人の波に酔いそうになる。エンパイヤホテルの前の公園の大きなクリスマストウリーに去年と同じ明かりが灯っているのを確認し嬉しくなる。リンカーンセンターに入ると噴水の水がいつもより高く冬空に突きあがる。 ロビーで待ち合わせ、友達とシャンパンで乾杯する。喉越しにシュワっと泡が沁みてちょっぴり切なくなる。 いろんなことがあ

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