ブルックリン物語 #47 "A Place In The Sun" 太陽のあたる場所
毎年12月に入ると「今年もメサイヤに行きません?」と誘ってくれる友達がいる。
今年で3年目のメサイヤを聴きにデビッドグリフィンホールへ。足を踏み入れると正装した人の波に酔いそうになる。エンパイヤホテルの前の公園の大きなクリスマストウリーに去年と同じ明かりが灯っているのを確認し嬉しくなる。リンカーンセンターに入ると噴水の水がいつもより高く冬空に突きあがる。
ロビーで待ち合わせ、友達とシャンパンで乾杯する。喉越しにシュワっと泡が沁みてちょっぴり切なくなる。
いろんなことがあった。去年の今頃ベースのジムに「来年はソロをやるよ」と告げる。別れは辛いが次に行かねばならない。お互いに別々の道を歩んだ一年だったが短くもあり長くもあった。
ザワザワ人の声、入り乱れる聞き慣れない国の言葉、常設のレストランからフォークとナイフのかち合う音、ひっきりなしに流れるあと何分のアナウンス。
ロビーのガラス越しにメトロポリタンオペラへ向かう人の群れ、ビッグアップルサーカスのテントが見える。開演が近づくと足早にトイレへ向かう人、席へ向かう人が交差する。開演前のオーケストラが練習する音がちらほら聞こえてくる。
メサイヤは変わらずいつものところで人々はおもむろに立ち上がり「ハレルヤハレルヤ!」を大合唱する。心の中の埃を払い「ありがとう」と今年あった全てのことに感謝を告げる。
1 ) ジャズ 2)ソロピアノ 3)英語 という3つのブラッシュアップの壁を毎回越えるように。小指の故障が思うように練習できない状況を引き起こし、忸怩たる思いで本番を迎えることも多かった。でもアメリカは日本で僕がやって来た世界と違うわけでもなんでもなく「心の音楽」を「素直に」伝えることが「その壁」を乗り越える1番の方法なのだということがほんの少しずつ見えて来た。
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