(詩)颯が過ぎて
白銀世界に染まった彼女へ
颯が過ぎて御髪は乱れ
顔に憂色をたたえた彼女に
私は無闇に傷ついて
涼しい笑顔に慰められて
また理由もなく傷ついて
今では彼女の乱れ姿も愛しいものに思えてくるよ
夢の中では花束を
ヘレボルス・ニゲルの花束を
繕うことしかできない私を
彼女は忘れてしまっただろうか
忘れてちゃんと幸せな
日々を歩んでくれてるだろうか
それが想いを伝えられずに
あなたと呼べない 卑しい私の
あなたに向けた最後の祈り
願わくばあの時の颯に
ヘレボルス・ニゲルの香りを
漂わすことができたなら
カバンの中で粉々になった
その一輪も浮かばれるだろうよ
背中を優しく押すように
颯の子どもが吹き抜けていった
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?