千宙(chihiro)

29歳。言葉には色がある、と、思う。 詩や小説、その他色々な文章を投稿する予定です。 毎日更新(最低でも週3)が目標。継続は力なりと信じて。

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マガジン

  • 風を詠むように生きていたい

    投稿した詩のまとめ。 どこからともなく吹いてくる風たちに、それぞれ名前を付けてあげることができたらなんて素敵な日常だろうかと思う。

最近の記事

(詩)春、雨の月

雨音はざあざあと激しく それにつられるかのように なき声がする 桜 烏 人 心 あと 月 今頃 何してる 満ちたり欠けたり 大変なお年頃 それがなんともいとおしい みえていないからこそか みえていないものだけをおもう みえているときは みむきもせずに 片割れのサンダルが 晴るを待つ水たまりに ぷかぷかと浮かんでいた 拾い上げるとそれは寂しさの重さ 情けない顔が映った

    • (詩)ためいき

      ためいきを一つ 二つと三つ 特に理由はないけれど 美味しいものでも食べに行こうか 気のすむまで踊り狂おうか それとも夢を見に行こうか ためいきを四つ 五つと六つ 理由は色々あるのだろうけど 大好きなステーキ肉を頬張って ビートを刻みながらステップを踏んで 仰向けになって舟を漕ぐ ためいきを七つ 八つと九つ 考えるのも嫌だけど 次はお寿司が食べたくなった うたを唄いたくなった 見るのは悪夢ばかりだし はじめからしなけりゃよかったのかな ためいきを十と そしてまた一

      • (詩)不沈

        心が凪いでいる そこは波音一つなく カモメは優雅に飛んでいて 舟がぼちぼち浮かんでいる 進んでいるか 戻っているか 時に 止まっているかのように 幾度も太陽はおはようと 綺麗な声であいさつを けれども私は何一つ 言葉が浮かんでこなかった 心が泣いている それはとってもうらやましい だって なにかが動いている それは新たな舟をつくる 今は嘆きを積んだ船さえ 深く沈んでゆくばかり いつかは積もって 埋立地に なってしまうのかもしれない それは厭だと思えるうちは それは

        • (詩)トラッドモーメント

          窓を打ちつける夕立が 奏でていた 私の頭の片隅をくすぐる リズムとメロディーと。 ここは欧州? はたまた北米? 南極だったらどうだろう? 目を閉じるまでもない。 雨音は平らな世界を旅行した 悦び勇んで窓を開けると、リズムは消えた 海と陸とががっぷりよつで ぶつかりあう風の音に 遠くで祭囃子が聞こえた 足下が瞬く間に濡れる トラッドモーメントなる音の響きがこだましていた あぁ、腹減った。

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        • 風を詠むように生きていたい
          31本

        記事

          (詩)五月雨は知らない

          五月雨は知らない 私の心は 年中雨が降っている 木々の歓びも ぬかるむ土の小躍りも なんだか空虚に思えてくるよ 五月雨は知らない 私は水に 流してしまう性分で 食べたいものも 抱きたい人も なんだか幻に見えてくるよ まるで蜃気楼のよう だから私は否定するしか 生きる理由を見出せない 五月雨は知らない 私は知らない

          (詩)五月雨は知らない

          (詩)マロネ

          炬燵の朝は早くて お尻は暑いのに顔は寒い わたしはぶるぶると震えながら 夢と現実のはざまをさまよう 私は着物を着ていた 君が一昨年着ていたものよ  要はお下がり 憶えてるかしら 少し大きいけれど良かった いつも一緒にいる気がしたから 君は炬燵で眠る私に いつもの優しい声で言った おいで 散歩に行こうとね けれど私は気づいているの これが最後のお別れだって 幸せは休息なの 苦しみの中のね だからもう少しだけ寝かせて 着物にしみ込んだ君のニオイを 忘れないように嗅ぎこむか

          (詩)マロネ

          (詩)琥珀色のうた

          遠くに見える東雲があくびしていた 白い吐息は春を告げるファンファーレのよう スズメもカラスも歌いだす 青や赤 黄 黄緑の 彼者誰時のオーケストラ 月日を抱えた音色が聞こえる 日々の記憶辿って 心の中で混ざりあって 気づいたころには朝ぼらけ むずむずして出たものは 琥珀色のうた 新たな景色に重なった 御日様が寝ぼけ眼で微笑んでいた

          (詩)琥珀色のうた

          (詩)ミクロの丘で

          ココは空気が澄んだトコ  私の理想の住処です あなたにぜひ来てほしいけど できればこないでほしいです 私には夢がありました 私には愛がありました 私はみんなに好かれたかった 私は無様な登山者でした あそこの大きな丘に向かって 毎日ツメを立てていました 毎日憂いて 涙をこらえ 目をつむっては 祈りを捧げ 色とりどりの風船を ふくらませては 空に放って ただただ上を 眺めるだけで 満足してた 惨めなものです だけど私は見つけたのです 正しくは すでにいたのですけど こん

          (詩)ミクロの丘で

          (詩)からす

          羽が1枚おちてきた それは黒色といえるだろうか 夕陽に照らされ舞っていたそれは この世のすべてを知っていた そんな気がした 砂場に落ちた羽はすぐさま 砂塵にまみれて淡く濁る それでも光るそれを拾う この世の重さを知っていた 夕陽にかざすと陽は静かに 風は優しく慈しむように 羽と砂とを魅せていた 全てを見てきたものは 枯れたのではなく枯らしていた みずからを だから 美しかった その1枚をこの先一生 忘れることはできないだろう 届くことのない距離で、烏の鳴き声が聞こえ

          (詩)からす

          (詩)Windows

          無重力の彼方から やってきたのは明の風 僕の知らない世界を旅した 君の話を聞かせておくれ 砂礫でこさえた建物のことや 酔いつぶれそうな果実のことや ひずみを極めた道々のことや 希望を宿した生き物のこと 色んな世界の姿や音や 匂いや思想を湛えながら 僕より何倍 何十倍も 世界を生きた君に問う 君はどこから吹いている? どこに向かって吹いている? カーテンを開け 窓を開けて 目を閉じ深く吸い込むと 無知で自由なにおいがした 君のことを ちょっと可

          (詩)Dolphin Night

          夜を泳いで 幻想の快楽に耽る 夢幻の輝きに息をのみ 後ろに迫る悔恨の 荒波に気づくこともできず 私はなにをやっている 私はなんで生きている 無骨な自問が尽くことはなく 空虚な弁解が心を塞いで 手も足も動かなくなり 夜に溺れそうになる 真っ暗な世界はクジラの胃の中 このまま溶けたら楽なのだろうか それでも瞳をこらしてみると 光はかしこに力を宿して 赤の点滅が警告を促し 紳士は微笑んで蒼をたたえる 端々が欠けた白黒の レールはほのかに鉄の匂い 私

          (詩)Dolphin Night

          (詩)颯が過ぎて

          白銀世界に染まった彼女へ 颯が過ぎて御髪は乱れ 顔に憂色をたたえた彼女に 私は無闇に傷ついて 涼しい笑顔に慰められて また理由もなく傷ついて 今では彼女の乱れ姿も愛しいものに思えてくるよ 夢の中では花束を ヘレボルス・ニゲルの花束を 繕うことしかできない私を 彼女は忘れてしまっただろうか 忘れてちゃんと幸せな 日々を歩んでくれてるだろうか それが想いを伝えられずに あなたと呼べない 卑しい私の あなたに向けた最後の祈り 願わくばあの時の颯に

          (詩)颯が過ぎて

          (詩)宿雨の夜は

          宿雨の夜は 冬の水面に ラヴェルのごとき音符を映し 聞こえる音色は とうとうと 駆け巡るのでありました 水の重さに耐えかねて 飛べなくなったスズメたちも エサをあきらめ巣に戻り 静かに耳をすますでしょう 雑色の雨は 私たちには 到底抱えられないのです ただただ黙って 打ちひしがれて 生きていくしかないのです その中に浮かぶ 眩い音色を 選びぬくしかないのです・・・

          (詩)宿雨の夜は

          (詩)風花に

          雪のにおいがして 見上げると秋の空 白き枯葉がひらひらと舞い 遠くで犬が吠えていた 肌をくすぐるそよ風は 春への足並みを揃えていて 五感が時節を狂わして 私を置いてけぼりにした あなたが住んでるところも今は 同じ景色が見えるだろうか 名前も知らないトコロにいても 同じ時節をうたうだろうか 白き枯葉を掴んで じんわり広がる冬の熱気を 慈しむように口に含んだ 春の味がした気がした

          (詩)風花に

          (詩)悴む

          視えない雪が降っていて 消しゴムが涙を流していた 悴んだ手を そっとポケットで温めて あなたの冷たい手に 温かい手を差し伸べてあげたい 漏れた吐息で希望をつくって あなたの深い溜め息に 未来を包んでくちづけをしたい 尽きた心からニキビのように 根を張り出てきた むず痒い言葉たちを こうしてノートに書き連ねて 万年筆は汗をかいた 悴んだ心が ほんのり火照った

          (詩)乾風がふもとから

          乾風がふもとから 左耳から 鼻から 喉へ 吹き荒ぶ 元より風と共に去る 僕の声はもう 届きそうもない 枯葉が舞い 居眠りの虫たちが 寒さに凍えて 目を覚まして 早めの始めを 訝りながら ぞろぞろと慈しむ 声が無くても 心があった 乾風が尾の上から 右耳から 口から 肺へ 吹き捲る 元より風と共にある 僕の心は 発動していた 一緒に内緒話でもしようか 心から風を込めて

          (詩)乾風がふもとから