学びの生活思創「知圧と創圧」その4
娘「生成AIは便利だけど、勉強で聞きたいことになると、なかなか思いつかないんだよね。どうすれば、もっと役に立つようになるのかな」
父「そっかー、じゃあ、こんなのはどうだい?」
娘「きっつ。役に立たせたくなくなってきたじゃないか」
今回は追記のお題で試考しました。
◼️生成AIのインプット・アウトプットへの貢献を可視化してみる
学びのプロセスでは、インプット時は見えない中での学びの継続が必要でした。自分をストレッチするような成果物を期待するとき、実は、本人もどんな成果物かわからないので、学びの目的もボワーっとしたものになります。それなのに、学びのモチベーションを維持しなければ、未知の成果物(アウトプット)まで行き着けない矛盾がある、ってな話でした。そこで「知圧をかけましょう」がお題でした。
これと、反対側にあるのが、創造性で成果へ向かうプロセスです。アウトプット中にある自分の中にある過去の体系的な知識が、創造性を邪魔してしまうことへの自覚の必要性でした。期待する成果物のための準備が十分になるほど、秩序だった手堅い視野を作ってしまう矛盾です。そこで、「創圧をかけましょう」となります。手持ちの整った知識素材を「創圧」でカオスに解体するのがお題でした。
その過程では生成AIはあくまでも補助としての扱いでしたが、インプットやアウトプットに貢献できることは確かなので、この辺りの解像度を上げて、言語化してみます。
まずは、イメージされる地図のスケッチ
今回は、アイデア開発の定番、拡散ー収束のプロセスを適用してみます。アイデア開発の前半を拡散のための時間、後半をアイデア収束のための時間っていう枠組みです。詳細の解説は割愛します、必要に応じて調べてね。
シンプルな二分割で時間配分をしますから、グループワークする時のタイムマネジメントでは重宝します。 もちろん、個人ワークが今回の学びのパターンなので、大まかに前半と後半がある様子に絞ってます。
インプット期を情報・知識・試考の拡散期、アウトプット期を収束期としてみます。
最初に、この図表306ベースで生成AIの貢献を入れてみます。前半は拡散に貢献するのでマゼンタ色の三角形を広げる方向に貢献するでしょう。同様に、後半の収束期にはターコイズ色の逆三角形を細める方向に貢献すると思われます。生成AIは、自力でできる範囲の限界を取り除いてくれます。視点、時間、労力がサポートされるので、より広く・より深い成果物が期待できるのです。それも、従来の個人ワークと同じぐらいのリソースで可能になったと言えます。
◼️もう少し近づいて拡散と収束を眺めてみる
さて、ここからがやっとスタートラインだよ。拡散と収束に関して生成AIはどう自己記述するか、やってみました。
こんな感じ。生活思創と生成AIってどちらも情報に対称性を見出して整理しようとする点で親和性が高いのです。二人は仲良しなのだ。これだけでも知圧と創圧なっている気がするね。「AIがあればなんとかなるっしょ」「AIで目配せ済みなら、思いっきり絞り込んでもいけるっしょ」みたいな。つまり、心的エネルギーを少なくしてくれるのだった。
やや脱線ですけど。コスパ、タイパに続いて、現代人のための効率界隈でのスラング第三弾がエモパ。エモーション・パー・パフォーマンス(Emotion per Performance)なんてのはどうかな? 「感情的な抑圧が少ない仕事って、エモパがいいよね」みたいな使い方です。
話を戻します。
生成AIから出てき6項目を、生活思創の現場の観点から再整理してみました。ここは一旦、記号接地という名の体感で情報を眺め直す。
生成AIからの提示において、生活思創ラボで活用しているものとそうでないものをチェックしました。使っているものに○をして、そうでもないものはーをつけてみたものです。すると、拡散期のAIの貢献も全部ではなく、また、収束期のAIの貢献も無いわけではない・・・。直感的にはわかってたけどさ。もちろん、貢献比重は拡散期の方が高いのは変わりません。
図表で可視化してみます。
左側が当初の先入観ベースの絵柄。右側が、生成AIが目配せしてくれた範囲を生活思創の活動に反映させたものです。三角形が平行四辺形に変わってるところがエモいよw
・拡散期では、「関連トピック」までは使わないので、あくまでも全体の枠組みのアタリをつけるまでです
・収束期では、「情報の要約と統合」は参照します。特に、対称性を設定して、共通項を抽出する作業は非常に有効です。
ちなみに生成AIは世界の標準的な情報をベースにしています。標準ってことは、かき集めた世間の知性の平均値ってことだな。ならば、目配せのための拡散にせよ、対称性での収束にせよ、成果物の構成の50%までは生成AIからの情報が支えてくれてることになります。個人と集団(生成AIが代表者)のコラボっている視点で見た場合だけどね。
◼️もっと生活思創ラボに近づいてみる
具体的な活動でのインプット貢献とアウトプット貢献を試考してみます。たぶん、拡散ー収束と、生成AI貢献はここの知的な活動によって変わるはずなので、ここでは事例として生活思創ラボのパターンで押し込んでみます。
生活思創は4つのアプローチを方法論として掲げて進めています。今のところ、ここには変更がありません。
・記号接地的アプローチ→生活の原風景を外さない。どこかに体験としてのリアリティを持つことで、不条理を抱える日々の生活に「見通しの良さ」を提供する
・社会想像力的アプローチ→カテゴリーを積極的に越境していく。生活はシームレスな事象の連続なので、すべてが陸続きを目指す
・圏論的アプローチ→対称性を見出すことで、過不足の知識をあぶり出していく。Aにあって、Bにないなら、きっと、ここにはまだ未言語なものが寝ているはずだ、と試考する
・分析哲学的なアプローチ→相補性を見出すことで、生活での矛盾に折り合いをつける。Aが行きすぎたらB,Bが行きすぎたらAという整理によって、判断を保留するネガティブ・ケイパビリティを提示する
まあ、こんな感じです。(お陰さまで、前より生活思創の言語化が進んだかもw)
引き続き、図表308に生活思創のアプローチを重ねてみたのが、下記図表309です。
大きく4ステップに分けられそうです。拡散期の前半と後半、収束期の前半と後半です。
❶拡散ー前半:まずは生活思創のスタートです。テーマはあるけど流動的です。多様なプロンプトで適当な拡散から、キーワードを収集する感じです。先入観は禁物。創圧がかかってますな。
<潮目>テーマ設定をし、文脈に一貫性を出します。生活思創の方針の決定って感じ
❷拡散ー後半:カテゴリー越境を目指します。ここは生成AIに無茶振りして、テーマ周辺と思しきカテゴリーにも質問を浴びせながら、ユニークな越境を目指します。圧力の流れと学習(インプット・アウトプット)の流れようなやつ
<潮目>カテゴリー越境の範囲の決定。水圧・電圧などの力学文脈の利用で学習を語るとかです
❸収束ー前半:対称性押しでのコンテンツの整理。知圧、創圧、知圧式、創圧式といった新しい視点の設定をする
<潮目>相補性の付与。相補性が見れそうなら、図解は閉じた図形を利用していくことになるし、相補性がない場合は、発散系の矢印を中心に据えたりします。
❹収束ー後半:記号接地してみる。つまり、自分が一次情報として持っている情報を当てこむことで、試考の説明力を確認する。晴れて、生活思創ラボの成果物となる。
❶ー❹の中で、❷カテゴリー越境でゼロだった新しい文脈(以前書いた話では「学びの文脈なので学脈」)を浮かび上がらす、❸対称性という方針で、大量のコンテンツ要素を整理していく、この2点がAIと当事者の混ざり合う場所になると言えそうだ。
言い方を変えるなら、ここ❷、❸周辺は海水と真水の混ざる汽水域です。海水とはカオスであり、真水とはコスモスであり、❷は川から海に出るときの汽水域、❸は海から川に戻る汽水域っぽいな。サケだなw
ただし、あくまでも生活思創の試考パターンの言語化だよ。他のパターンは今後の試考課題です。もっと単純な生成AIの補助なら、全部がAI主務で回せるし、複雑な探求なら生成AIは気の利いたGoogleぐらいの役割でしかないでしょう。今回はここまでっす。
◼️生成AIの役割を概念式に嵌め込む
最後に、前回作ったインプットとアウトプットの概念式の視点で、生成AIを眺めてみましょう。
まずは、インプット量の概念式から。
拡散期への貢献が主体なのが生成AIです。②学習パイプの太さには貢献します。知識習得能力は、知識習得のベースとなる多様な知識(こちらの盲点を耕してくれる)が自動拡張されることです。もう一つは、学習時間の有効活用を促すので、正味の学習時間がアップすること。調べる手間がかなり軽減されることでの、インプット貢献です。多様性と労経だと試考します。
次に、アウトプット質の概念式をみます
こちらは分母にある習得知識の粘着度に影響を与えると試考できます。大量の知見は、あればあるほど処理に手間がかからわけですけど、対称性という方針で生成AIが情報を圧縮できるなら、これは「見通しの良さ」をアップさせます。粘着度が下がって、知識が血液サラサラってやつですなw
大所の生成AIからの学び貢献はこのあたりまでです。しかし、繰り返しになりますが、心的エネルギーへの影響も少なからずあります。「生成AI使えばなんとかなる」といった学びへの知圧とか、「積み上げたアイデアじゃあ、人がやる意味がないじゃん」といった成果への創圧とかです。
たぶん、概念式にある全ての項目に影響を与えているはずなのだ。
娘「たしかに、『生成AIがあるじゃない』って思うと、図書館で選ぶ本も変わる気がする」
父「どんな感じになる?」
娘「本当に面白そうな小説だけを選ぶようにしてる」
父「あー、あなたの好きなライトノベルなんかは生成AIで書かれてるのが増えてそうだもんな」
娘「じゃなくて。表紙絵とかのカッコよさですぐに選ばないようにしてるの。あれって生成AIが作ってるかもって思うと、中身ちゃんとみてから選ばないとね」
父「そっちかい」
シーズン7も追加のお題で続いてます。次回も、学び周辺で何か拾ってきてお題にするかもしれぬ。
Go with the flow.