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scole

初めて自分の本を出してもらうことになった際、自宅やオフィスで原稿を書く作業がすぐに限界を迎えた。
気が散るのだ笑。

そこで三度に分けて、週末を中心にホテル住まいをした。
家族の食事を作る必要もない、洗濯して取り込んで畳む必要もない、掃除もしなくていい、あれもこれも手放して、原稿を書く時間に集中できた。
思考を深めるのにこれ以上にないくらい、快適な場所だった。

これはアリストテレスの言うところの、scoleではないのか。


古代ギリシャにおけるアテナイ市民は、一般的に2人から4人の奴隷を所有していて、労働をこの奴隷に従事させ、自らはscole、つまり「閑暇」を謳歌していたのだそうだ。

会社員時代、わたしは「暇な人間はろくなことをしない」と思い込み、
さまざまなものをすり減らすように働いていた。
思い返してみても、あの頃、暇を感じたことなんて一年を通じてなかった気がする。
身体がすり切れる寸前でいくつかの要因が重なり、はたらくスタイルが変わって大事にならなかったが、
あのまま行っていたら、わたしの人生はまったく違う道を歩まざるを得なかったかもしれない。

一方でアリストテレスは、人間が人間でいるために重要なものは、労働ではなくscholeだと説いている。
暇な時間の中で、政治や哲学、学術研究の祖となる行為が進められ、
このscholeはのちに、schoolの語源となっていった。
人は人でいるために考える。
そのためには労働から離れ、暇することが重要だとするアリストテレス。
ホテルの一室で、衣食住のあれやこれやを他者にお願いして、
わたしはわたしでいるために、本を書いていたような気がする。


奴隷なんてことはNever thank youだが、近未来には今以上に労働をロボットが担うのだろう。
ひょっとしたらお金のいらない世界がスタンダードになり、
そうなったわたしたちに必要なのは、暇を楽しむセンスかもしれない。
自分が自分でいられるように、まずは「何にもしない」の予定を入れるところから。

みなさん、ぼんやりしましょう。積極的に。

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