拘縮予防のための上半身のポジショニングについて。ポジショニングの方法やポイントも解説
関節の拘縮を予防するための1つには、ベッド上での適切なポジショニングが必要です。
ご本人で体を動かすことが難しい場合には、他者や介護者によるポジショニングが欠かせません。
今回は、上半身の拘縮予防のためのポジショニングの方法やポイントについて解説していきます。
ポジショニングの必要性を理解していただき、より良い介護に繋がれば幸いです。
ポジショニングの目的
ポジショニング(positioning)とは、「適当な場所に置くこと。位置を定めること。」と解説されています。
ここでいう、ポジショニングの目的としては、以下のことです。
関節の拘縮を予防する
ベッドの上で体を安定させて姿勢を保つ
筋肉の緊張やこわばりを緩める
体の一部にかかる圧力を分散させ、平均的にする
皮膚同士の接触を避け、皮膚表面の通気性を確保する
どんなときにポジショニングが必要?
運動麻痺など自分で動くことができないとき
自分で体の一部を動かすことができないとき
など、生活の中心がベッドの上で過ごす場合にポジショニングは必要となってきます。
なぜ、ポジショニングが必要?
その理由は、運動麻痺などで、体を動かせない期間が続くと、肩や肘などの関節に関節拘縮を引き起こすからです。
関節拘縮とは、同じ姿勢で固定することによって、皮膚や筋肉、靭帯の伸び縮みや筋肉が痩せることで制限され動かなくなったとき(不動)に出現します。
拘縮が起きやすい部位(上半身)
関節拘縮が起きやすい部位としては、「関節が曲がるところ」です。
具体的には、肩、肘、手首、指となっています。
ポジショニングの方法
ここでは、上半身のポジショニングの方法を姿勢別に紹介していきます。
仰向け
筋肉がこわばって緊張していると、頭頚部が後方に落ち込んでしまいやすいため、低すぎる枕はよくありません。そのためには、枕を少し高くして頭を高くすることが重要です。
また、ベッドと肩甲骨あたりに隙間がある場合は、肩の落ち込みや背中、腕の筋肉の緊張を和らげるためにも、肩甲骨や肘の下にクッションを敷くことも良いでしょう。
関節の状態にもよりますが、肘に力が入って曲がっている場合は、肘を伸ばして体の横に置くことも大切です。
また手指に力が入って曲がっている場合は、タオルなどで指の曲がりを緩和することも大切です。曲がったままにしておくと、関節の拘縮も進みますし、接触している皮膚同士も衛生的によくありません。
横向き
横向きも仰向けと同様に、頭頚部が落ち込まないように枕の高さを調整する必要があります。
枕の高さは、頭から鼻、胸の中心を直線が通るように調整してください。横向きでは、下になっている方の腕を前に出すことで、体重による腕への圧迫を避けることが大切です。
上になっている方の腕は、腕や肩甲骨が前後に落ちないように、脇から手首にかけて、腕の下にクッションを敷きます。
また、横向きでは体全体が前後(うつ伏せや仰向け)に倒れないように、背中やお尻にクッションを当てて、体全体を安定させることも重要です。
ポジショニングする際のポイント
ポイントとしては、
ゆっくりと動かす
声かけする
適度に体位変換する/姿勢を変える
ゆっくりと動かす
ポジショニングをする際は、首や腕、手など動かす部位を「ゆっくり」動かすことが大切です。
関節拘縮を予防する部位によっては、すでに動きにくくなっている部位もあるかもしれません。そのため、強く関節を曲げたり、伸ばしたりすると、痛みを伴うことがあります。
したがって、ポジショニングを行う際は、動かす部位に痛みがあることも想定しながら慎重に、ゆっくりと動かすようにしてください。
声かけをする
ポジショニングする際は、「声かけ」をすることも忘れずに行ってください。
介護者がどのような部位を動かすのか、どの箇所にクッションを入れるかを事前に教えてあげることで、ご本人も安心でき、過剰な緊張を抑制することができるためです。
適度に体位変換する/姿勢を変える
体を動かさないことで生じる関節拘縮。ポジショニングをしたからといって安心はできません。
ポジショニングをしたまま同じ姿勢で長時間過ごすと、再び関節拘縮を発生させることにも繋がります。
そのため、2時間置きなどに仰向けや横向きに姿勢を変えてあげることも重要です。
まとめ
本日は
ポジショニングの目的
ポジショニングの方法
ポジショニングする際のポイント
を順に解説しました。
ポジショニングの目的としては、関節の拘縮を予防することはもちろん、ベッドの上で体を安定させて姿勢を保つことや筋肉の緊張やこわばりを緩める、体の一部にかかる圧力を分散させ、平均的にする、皮膚同士の接触を避け、皮膚表面の通気性を確保することがあります。
ポジショニングの方法としては、大きく分けて、仰向け、横向きにする方法があります。
仰向けや横向きいずれにしても、頭頚部が落ち込まないようにすること、肩や肘がベッドから浮かないようにクッションを入れることが重要です。
また、肘や指の関節が曲がってすでに拘縮が進んでいる場合には、拘縮の進行を予防するためにも、肘や指を伸ばすようにセッティングすることも大事となってきます。
ポジショニングをする際のポイントは、部位やゆっくりと動かす、声かけをする、体位変換をすることが重要です。
一度、関節が拘縮してしまうと、なかなか改善することができません。
そのためには、拘縮しないように予防することが最も大切となってきます。
ポジショニングの必要性を理解していただき、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
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