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ドラマ『宙わたる教室』~第9話から感動の最終回まで~

30分遅れスタートでしたが、しかとリアタイしました。ドラマ『宙わたる教室』最終回。ラスト15分は涙涙の大号泣で、胸アツの青春を堪能しました!

今回の記事、ドラマの中のセリフがどれもこれも愛しくて大切で文字数が膨大になりました。5,000字超え。でも、このドラマへの熱い想いゆえとご理解いただければ幸いです。

第9話では、空中分解寸前の科学部に元気のない様子の藤竹を、英語教師・木内が飲みに誘います。そこで藤竹が木内に自分の過去を語り出しました。

藤竹のいた研究室のある開発研究に、“高専“から金井という学生が卒業研修に参加していました。彼は徹夜もしてくれたり、試験データの収集に一番尽力してくれていました。それなのに、研究論文の草案に金井の名前は載っていませんでした。

藤竹が石神教授にその理由を尋ねたところ「論文を最良の形で発表するのが義務なんです。大学院生ならともかく、“高専“の学生の名前など入れたら、論文の格がさがります」と…。また“無意識の差別“です。

「それ本気で言ってます?そんな理由で外したんですか?科学の前では、誰だろうとみんな平等のはずですよ」

藤竹は石神教授のやり方に反発しますが、強大な力の前には無力でした。結局「惑星探査」に関わる研究者になる夢を持っていた金井は普通に就職し、藤竹は論文から名前を外してもらい研究室を辞めました。

藤竹と石神教授の間の、大きな軋轢の内容が初めて分かりました。

思い悩んだ藤竹は恩師である伊之瀬を訪ね、教師を辞めようと思うこと、研究を続けるかどうかも分からないことを伝えます。

アメリカではまだ何ものでもない若者と研究者たちが共に研究に没頭していて、日本でも同じことができたら、それを証明できたら、この国でもう一度心から科学の世界を信じられると思ったと伊之瀬に吐露する藤竹。

これこそが、藤竹が伊之瀬に言ってきた「実験」の内容でした。でも自分は何一つ証明することもできず、教師としても研究者としても失格だと…。

藤竹は科学部のメンバー四人を集めて、なぜ自分が科学部を作ったのかを明かします。

「皆さんに謝らなきゃいけないことがあります。この科学部を作ったのは、僕の実験のためでした。僕は子どもの頃から、科学の前では人はみんな平等だって信じてきました。でも、現実はまったく違いました。どれだけ科学に興味があっても、上に立つ人間が才能がないって切り捨てたら、もうそれで終わり。そもそもその気にさせて期待させる方が酷なんだ…そんな理屈をふりかざして、未来ある人間の可能性をいとも簡単に無視して排除する。自分が信じていたのが、そんな世界だったことに失望したんです。だからその大学を辞めてアメリカに行きました。向こうでもう一度、研究者としての自分を見つめ直そうって思ったからです。そんなときに出会ったのがロビンって少年でした。彼はナバホ族というアメリカの先住民の居住地に、家族と暮らしてたんです。彼らの住むトレーラーハウスはすき間だらけで。ロビンは寒さをしのぐために廃車やゴミ捨て場から集めた廃品で『暖房装置』を作ったんです。作りはシンプルなものだったんですけど、太陽エネルギーとラジエーターを使ったアイデアは、思わずうなってしまうほど素晴らしいものでした。それで、小さな科学コンテストでその技術を知った僕の友人は、それを月面に建設する有人基地の蓄熱技術に応用できないかって考えたんです。彼はこう紹介してくれました。『この子はロビン。僕たちの同僚だ』ロビンは決して恵まれた環境で教育を受けてきたわけじゃない。勉強が好きでも、科学に興味があったんわけでもないんです。そのときに思いました。『どんな人間でも、その気になれば必ず何かを生み出せる』その仮説を検証するために作ったのが、この科学部です。科学とは無縁の皆さんに科学に触れるチャンスを与えて、どんな結果が出るのか観察していました」

「でも皆さんは、僕なんかの予想を大きく飛び越えてきました。僕は、いつの間にか君たちに夢中になってた。君たちがくじけそうになるたびに、励まして、もっともっとってその気にさせた。そのせいで柳田くんを傷つけて…。結果的に科学部も壊れて、皆さんに大きな失望を与えてしまいました。僕の実験は失敗です。すべて皆さんを利用した僕の責任です。ホントに申し訳ありません。すいませんでした」

ドラマ『宙わたる教室』第9話より

とそこへ、ボコボコにされた岳人が「ふざけんなよぉ!さっきから聞いてりゃなんなんだよ。実験だの利用しただのって、俺たちをその気にさせてやっぱりそれは間違いだった…失敗だったって言うのかよ。勝手に終わらせてんじゃねぇよ!」

岳人は、強い言葉を投げたアンジェラや、怖い思いをさせた佳純に謝ります。ここから科学部の四人と藤竹の、互いの本音をぶつけ合った会話が続きます。

「科学部があんたの実験かどうかなんてどうでもいい。俺はただ、俺たちの実験を続けたい。俺たちの装置を使ってクレーターを作りたい。それだけだ。あんたはどうしてぇんだよ?なぁ、なぁ、ここはあきらめたものを取り戻す場所なんじゃねぇのかよ?なぁ?ホントの気持ちを聞かせてくれよ!」
「私も聞きたいです」
「先生…」
「あきらめたくない。楽しかった。君たちといるのが。科学は、こんなにも楽しいものなんだって…もう一度感じさせてもらいました。君たちと、もっともっと新しい景色が見たい」
「だったらやるしかねぇじゃん!なぁ」
「うん」
「だいたいさ、あんたの実験が失敗かどうかなんて誰が決めたんだよ」
「そうですよ。先生がやろうとしてたのは、誰もやったことのない実験ですよね?だったら失敗なんてないです」
「ホントだよね」
「そうだよ」
「あんたの仮説、俺たちが証明してやるよ。だから俺たちをもっとその気にさせろ」

ドラマ『宙わたる教室』第9話より

第1話で藤竹が岳人に言った「ここは、あきらめたものを取り戻す場所ですよ」。岳人の心にはきちんとそのその言葉が残っていたんですね。

第5話で「火星のクレーター再現実験」をテーマにしようと思うものの、失敗しないかどうか迷う四人に藤竹が「失敗なんてあり得ないですよ。まだ誰もやったことがないからです」。佳純はその言葉を使って、藤竹を逆に励ましたんですね。

藤竹の壮大な「実験」に利用されたことなんて、まったく意に介さない科学部のメンバーたちが頼もしく感じられました。ここから「学会発表」に向けて科学部は再び結束し、ラストスパート!

「実験は想定外の結果が出てからが本番だよ」伊之瀬の言葉を、ふと思い出した藤竹でした。

そして最終回。「日本地球惑星科学連合大会・高校生の部」にエントリーした学校の中から約6倍の競争率を勝ち抜いて、15校に選ばれた科学部。岳人と佳純の若手二人が口頭発表の担当になり、木内もサポートしてくれて12分のスピーチと3分の質疑応答の練習が始まりました。もちろんスライド作成も。

時間制限を気にするあまり、覚えた知識をただしゃべろうとする岳人。声の小さい佳純。 説得力のある発表に向けて、熱い練習は続きました。いつしかクラスのみんなも応援してくれるようになりました。

一方藤竹は伊之瀬に思いがけないオファーをされ、心が揺れ動きます。伊之瀬の友人が藤竹の研究に興味を示して、カリフォルニアで藤竹にメンバーに加わってほしいと言っていると。少しだけ時間をほしいと伊之瀬に伝えた藤竹。

何か考えごとをしている藤竹の様子を、勘のいい岳人は気づいていました。ここら辺、目線だけで岳人の“気づき“を表現する小林虎之助の演技は見事でした。

発表当日。藤竹は相澤にも声をかけ、相澤も学会発表を見に来ました。天敵である石神教授も…。

発表タイトルは「火星重力下でランバート・クレーターを再現する」。岳人も佳純も、実に堂々たる見事な口頭発表を繰り広げます。初めのつかみもOK。会場の反応も上々。

岳人は発表の途中で会場の人々をながめ、しばらく言葉が出なくなり沈黙が流れます。ざわつく会場。

実は岳人は言うことが飛んだわけではなく、会場にいる人たちみんなが自分たちの発表を本気で聞いてくれている…肩書きも見た目も関係ないと認めてくれたことに感動して、この時間が終わってほしくないと思っていたようです。

するとおもむろに手を挙げた石神教授のお陰で質疑応答に切り替わり、こんな質問をされます。

「そもそもあなたたちが、この実験をしようと思ったのは、なぜですか?」

これに答える岳人の言葉が素晴らしすぎて、もう涙腺崩壊でした。

「教室に火星を作ってみたい…そう思ったんです。それはどういうことなのか、しかもどうやって作ればいいのかなんて、最初は見当もつかなかった。やっぱり俺たちには無理なんじゃねぇかって、何度もあきらめそうになった。でも、あれこれ手を動かして悩むうちに、俺たちはいつの間にかその気にさせられてました。科学の世界とは無縁だった俺を、物理準備室の扉の前に連れてきたのは顧問の先生です。俺は先生に誘われて、そのドアを開けた。それがこんな場所につながってるなんて、思ってもみなかった。俺は先生に会ってなかったら、ここには来てないし、あなたにも会ってません。毎晩小さな教室で試行錯誤してきた俺たちの実験は、今日でみんなの実験になったんだと、そう実感しました。俺はまだこの実験を終わらせたくない。この「重力可変装置」を使って、太陽系の他の天体の重力も作りたいし、いろんな衝突実験をやってみたい。だから、今すごく皆さんと話したいです。俺たちの実験を見てどう思ったのか…。どうやったらもっと良くなるのか。一緒に考えてください。お願いします」

ドラマ『宙わたる教室』最終回より

岳人の言葉に、会場からは惜しみ無い拍手が送られました。

発表の後、石神教授が藤竹に声をかけます。

「あなたを見ていると、伊之瀬先生を思い出します。理想論だけでやっていけるほど、世の中は甘くない。きれいごとだけじゃ何も実現できない。でも、必要なんでしょうね。あなたたちのような存在も…」
「どんな人間にも、必ず可能性はあります。僕はそう信じてます」
「そう…。次に会うときを楽しみにしてます」

ドラマ『宙わたる教室』最終回より

二人の間の冷たく厚い壁が少しだけ溶けたような、そんな瞬間でした。

いよいよ高校生セッションの結果発表。「東京都東新宿高校定時制過程」は、たった二校の「優秀賞」に選ばれました。舞台上の科学部四人を見守り、スタンディングで拍手を送る藤竹の目にも涙が…。

打ち上げをアンジェラのお店でやろうと盛り上がる部員たちを尻目に、「最優秀賞」がほしかったと泣く佳純。「じゃあ、来年だな」岳人の頼もしい言葉。科学部のメンバーたちみんなの成長がまぶしかったです。

そこへ興奮した様子の相澤が!「重力可変装置」の話を聞かせてほしいと。ぜひJAXAと一緒に“しののめ“の基礎実験をしてくれないか?チームに加わってくれないか?と誘う相澤。やる気満々の四人。

「なぁ、先生。学校辞めんのか?」
「どうしてですか?」
「別に…。なんとなくだよ。俺さ、あんたが教室に青空を作りたいって言ったとき、こんなしょぼい実験でそんなの無理だろって思ってたけどよ。ホントは見えたよ。あんたが見てた青空が。もし迷ってるんだったら、気にすんな。科学部は俺たちのものなんだからよぉ。それによぉ、人ってワクワクするの止められねぇもんな。俺さ、あんたに会う前の世界より、今の世界のが好きだよ」
「そっくりそのままお返しします。ありがとう…柳田くん」
「おぉっ」

ドラマ『宙わたる教室』最終回より

藤竹と岳人との師弟関係。いつの間にか″先生と生徒″というよりも、″対人間″としての二人の関係性や絆が築き上げられていたことが感じられてグッときました。二人のかたい握手、最高でした。

このドラマが実話であることの重みを、改めて感じます。藤竹の「どんな人間にも、必ず可能性はある」という信念に、私も同感です。

何かしらの理由で、自分のやりたいことをあきらめたり、手も出さずにきたことが私自身の人生においても当然ありました。でも自分自身の可能性を自分が信じてあげないと何も始まらないということを、このドラマは教えてくれました。一歩踏み出す勇気をもらいました。

そして「学ぶ」ということの意義や喜びも教えられました。いくつになっても何かを学びたいという気持ちは、誰しも持っているような気がします。人間「学ぶ」ことをやめたら、そこから先の成長がないようにも思います。

また「学校」という″学びの場″の大切さも感じました。第6話で、コンピューター部の要と岳人とのこんな会話がありました。

「今って通信制の高校とかいっぱいあるのに、何でわざわざ定時制なんですかね?」
「あぁ…単純に来てぇからじゃねぇか?学校に。不思議なとこだよなぁ。学校って」

何気ない会話でしたが、不登校の数も増えていて、教師の成り手の数も減ってしまっている現代社会だからこそ、今一度「学校」という″学びの場″の存在意義を改めて見出だしてほしいと私は感じています。

私は(今ならダメでしょうけれど)、熱があっても「学校」に行っていたような「学校」が大好きな子どもだったので…。「学校」に行って新しいことを「学び」、友だちに会ってくだらない話をする…。

こんな当たり前の日常が、そうではなくなりつつあるような今。「学校」って素敵な″学びの場″だと、私は信じ続けたいと思っています。

さまざまな感動を与えてくれたドラマ『宙わたる教室』。こんなにものめり込んで、ここまで何かを書きたい欲求にかられたドラマはそうそうありません。

このドラマは“未来への希望“もしっかり描かれていて、科学部と藤竹の未来がきらきら輝いて見えました。

本当に本当に素晴らしいドラマをありがとうございました。今はただただ余韻に浸っています。

長い長い文章、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

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