見出し画像

ドラマ『モンスター』は、毒っ気強めの斬新なリーガル・エンターテインメントです!

趣里は出演していると目が離せない、存在感抜群の俳優になりましたよね。もはや誰が親とかまったく関係なく、一人の俳優としてすでに風格すら感じます。

そんな趣里が主演のドラマ『モンスター』。ひと言、面白かったです。リーガル・エンターテインメントのドラマはこれまでも数々あれど、今回はイマドキの弁護士?というか、常識にとらわれず、法廷闘争をゲーム感覚で楽しんでいる様がまさに”モンスター”な型破りの弁護士でした。

もっとも、この『モンスター』というタイトルには趣里演じる神波亮子そのものが”モンスター”であると共に、人間が”モンスター”になる瞬間を切り取っていくダブルミーニングの仕掛けがあると思われるわけですが…。

神波亮子は高校3年生のときに司法試験に受かり、その後十年間何をしていたのでしょうか?突然YOU演じる大草圭子が所長を務める「大草圭子弁護士事務所」に現れて「弁護士をやってみることにした」と。

ジェシー演じる東大法学部卒の若手弁護士・杉浦義弘がほとんど前例がないという理由で断ろうとしていた、自殺教唆で起訴された塩屋の弁護を自らやると立候補。

塩屋の交際相手・川野紗江は、大手企業「東城エステート」に勤務する会社員。自殺未遂の過去があり、梅本ますみというカウンセラーの元に通うほど日常的に精神を病んでいました。

そんな紗江に塩屋は「死ね」というメッセージを送ってしまい、それが紗江の自殺の直接の要因になったという意味での自殺教唆の罪でした。

ただ塩屋自身も思い悩んでいて、「消えたい」という塩屋のメッセージから二人の最後のやり取りが始まっていたこともあり、塩屋はすっかり憔悴しきっていました。

亮子は紗江の職場の人間たちや家族に話を聞きに行くものの、被告の弁護士ということで門前払い。そこで清掃員になりすまし、紗江の職場で密かに調査を始めます。

これ、弁護士がやっていいことではないですよね。ドラマだからギリギリ許される(笑)。

社員たちは定時で帰り残業はしていないはずなのに、常に眠そうな様子。違和感だらけの職場。

ある日「東城エステート」の内部情報が、外部に漏れるという事件が発生。会社に出入りする人間一人ひとりに話を聴くという調査のときに、亮子の存在が営業部の上岡部長にバレてしまいました。

それでも平然として、まったく悪びれることもない冷静な亮子の姿はまさに”モンスター”そのものでした。

紗江の机の上の花をじっと見つめていた女性社員・原口が、亮子に会いに来てくれました。紗江が亡くなる前は残業が当たり前。それはいわゆるサービス残業で、今も家に持ち帰って仕事をしていると。

原口が上岡部長からのパワハラ&セクハラを受けていたことも判明。家まで来られたり、休日に洋服まで指定されて接待に呼び出されることも…。会社を辞めたいくらい精神的に追いつめられていたと、涙を流す原口。

あるときパワハラ&セクハラがなくなったのは、ターゲットが紗江に変わったから。つまり紗江の悩みの原因は、過重労働と上岡部長からのセクハラ&パワハラだったことが明らかになりました。

それらを裁判で話すと約束してくれた原口は、上岡の圧力で裁判を欠席。亮子の裁判は劣性に…。

実は亮子には、密かな相棒がいました。それはコンビニで働いている城野尊。ハッキングが得意で、その腕を買われて亮子のお仕事のお手伝いをしてバイト代をもらっている模様。

今回も「東城エステート」のWi-Fiをハッキングし、社員たちが会社を出てから閉店まで残業をしていると思われるカフェの情報をGETしたり、暗躍してくれました。

検察側の証人として裁判に出廷したカウンセラーの梅本は「私が言えることは、川野さんの自殺を引き止めることができなかった…それだけです」と証言しました。

亮子はここから梅本を追及します。

「過重労働やパワハラを受けるうちに判断能力を失い、会社を辞めるという選択肢を思いつかなくなってしまう…。そうやって視野の狭い、細くて長い暗闇に入り込んでしまったら、かける言葉によってはクライアントは壊れてしまう。それを知っているあなたは、クライアントを救い出せるって思った…。でも実際はできなかったんですね?」
「責任を感じています」
「責任を感じているんですねぇ…」

ドラマ『モンスター』第1回より

こう言ったあと、

「嘘つき…図星かよ」

そう梅本の耳元でささやいた亮子の鋭い視線にゾクッとしました。亮子、怖っ!

その後原口がとうとう証言台に立ち、サービス残業のこと、パワハラ&セクハラを上岡部長から受けていたことも証言します。

さらに城野のお陰で、紗江が塩屋とよく行っていた”まんが喫茶”のパソコンに残されていた匿名のアカウントの日記が見つかります。

そのアカウントは、並べ替えると紗江と塩屋の名前と誕生日になり、間違いなく紗江の日記でした。

そこには紗江が上岡部長から受けていた、生々しいパワハラ&セクハラの状況が綴られていました。

「ひたすら苦しい…」
「R(塩屋)の彼女でいることが申し訳ない」
「でも、R(塩屋)との思い出だけが心の支え…」

亮子は再度上岡を証言台に立たせ、紗江の悩みは過酷な労働環境だったこと、紗江は上岡に接待に呼び出されたあの日、自ら命を絶った事実を改めて突きつけます。

まだ自分の非を認めようとしない上岡に、亮子はさらなる一手を用意していました。紗江の両親、過去に過重労働で「東城エステート」を退職した人たちと損害賠償請求の集団訴訟を起こすと…その原告代理人を自分が務めると上岡に告げます。

塩屋は無事「無罪」に。亮子は初裁判に勝利しました。そして「東城エステート」の集団訴訟にも勝訴。亮子の弁護士デビューは、実に見事な結果でした。

そんな亮子に、毎月20万円を振り込む古田新太演じる謎の男も出てきました。どうやら亮子の父親のようです。これから先、亮子と絡んでくるんでしょうね。

そして、このドラマ最大の見せ場が最後の最後に待っていました。新たな”モンスター”の登場でした。

カウンセラーの梅本がカフェにいるところに、唐突に現れた亮子。

「かける言葉によっては、クライアントは壊れてしまう…。あの日、川野紗江さんから電話があったとき、あなた、言葉でそのスイッチを押したんじゃないですか?紗江さんが壊れるように最後の引き金を引いた…」
「どうしてそんなこと私がしなくちゃいけないんですか?」
「さぁ、理由なんてないのかも」
「そもそも証拠は?」
「ない。だから法廷にはあげなかった……人殺し」

ドラマ『モンスター』第1回より

そう冷たく言い残して去っていく亮子。

紗江が梅本に電話をしたのは、実は塩屋へのコールバックを間違えてかけてしまったのでした。

「やっぱり無理だ。頑張ってきたけど。遼に会いたい」
「また、接待に呼ばれたんだ」
「…梅本さん?あっ、すいません」
「大丈夫」
「やっぱり、もう頑張れない」
「大丈夫。紗江さんならまだ頑張れる。頑張ってよ」

ドラマ『モンスター』第1回より

この「頑張ってよ」のひと言が、紗江にとっての引き金になったのでした。

電話越しに紗江がトラックにぶつかった激音が聴こえてきたとき、驚いた後にニヤリと笑った梅本の顔が脳裏に焼きついて離れません。

人間は誰しも心に闇を抱え、”モンスター”になる瞬間がある恐ろしい生き物なのかもしれません。

普段はラフすぎる服装で、弁護士バッヂもつけたりつけなかったり。カバンも持たずにいつも手ぶらで接見に行ったり…。まったく弁護士オーラの感じられない亮子。

この得体の知れない神波亮子という弁護士の、唯一無二の闘いぶりが非常に楽しみになりました。

趣里のコケティッシュな魅力満載のドラマ『モンスター』。なかなかの名作になりそうな予感がします!

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集