ドラマ『新宿野戦病院』は、社会派医療ヒューマンコメディ・エンターテインメント！？
クドカン・ワールド全開の夏ドラマ『新宿野戦病院』スタートしましたね。目の付け所が、他の追随を許さないさすがのクドカンでした。
舞台の新宿歌舞伎町は、昔からずっとオンリーワンの存在感を放つ怪しげな町。トー横キッズに、ホストやキャバ嬢。ホームレスに外国人難民。さまざまな社会的背景を持つ人びとが入り乱れる眠らない町。
そこにひっそりと建っている、赤字経営の「聖まごころ病院」。その病院に突如現れたのが小池栄子演じる軍医経験を持つこのドラマの主人公である女医・ヨウコ・ニシ・フリーマン。
いきなり外人とテキーラの一気飲み対決をして酔っぱらい、ゴミの山に突っ込んで急性アルコール中毒で「聖まごころ病院」に運ばれるという登場シーン。今だかつて、主人公がこんな登場の仕方あったでしょうか(笑)。
小池栄子の英語の発音や岡山弁にネットでは賛否両論でしたが、狙ってあの発音にしていると思われるので、小池栄子の噛まない演技に私個人的にはあっぱれ！でした。
第1話では銃撃事件の加害者と被害者、二人同時に処置するという離れ業をやってのけたヨウコ。日本の医師免許は持っていないので、無免許の医師として「聖まごころ病院」の外科医として住み込みで働くことになりました。
「遅かれ早かれ死ぬのが人間。だからこそ、目の前にある命は平等に助ける。うちの命、お前の命、貧乏の命、金持ちの命…。平等に助ける。それが医者」
こんな風に医師としての信念はしっかり持っているヨウコが、さびれた「聖まごころ病院」を明るく変えていって、いろんな問題を抱えた患者たちを″雑に″助けていくんでしょう（笑）。
もう一人の主人公、仲野太賀演じる美容皮膚科医・高峰亨。叔父の経営する「聖まごころ病院」を、自分の美容整形クリニックにリニューアルオープンする夢を抱いているチャラい気取り屋。
仲野くんのこれまでのイメージとまたひと味違う役どころなので、ヨウコの影響を受けてどんな風に変化していくのか期待したいところです。
今のところ志も生き様もまったく正反対のヨウコと亨。この二人がぶつかり合いながらも、これからどんな化学反応をもたらしてくれるのか楽しみです。
それにしても個性豊かなその他キャストも面白すぎです(笑)。
柄本明演じるアル中の高峰院長に、生瀬勝久演じる亨の父親・不動産コンサルタントの高峰啓三。高畑淳子演じる病院の経理・白木に、平岩紙演じる院長の娘・高峰はずき。岡部たかしに馬場徹の医師も、強烈個性で病院内での会話劇もドラマの大きなポイントになりそうですね。
ネットでも騒がれていましたが、塚地武雅演じる看護師長・堀井しのぶは、見事な英語力でヨウコを掩護射撃していました。ジェンダーレスなその愛らしさと能力の高さに脱帽です！
濱田岳演じる交番勤務の警官・岡本勇太に、橋本愛演じるNPO法人「Not Alone」新宿エリア代表・南舞。濱田岳を単なる警官で終わらせるわけはないので(笑)、話が進むにつれ何か絡んでくることでしょう。
南は昼間と夜とまったく異なる出で立ちで出かけていく姿を目撃されていたので、なにやら秘密がありそうですね。
それにしてもテンポ感の良さと、飛び交う膨大なセリフの量！英語に日本語に岡山弁に…。英語のセリフには字幕も出るので、画面に集中していないとストーリー展開についていけない感じです。
第1話、元暴力団構成員の老人″かじやん″が起こした事件は悲しかった…。そして、″かじやん″が誤って撃ってしまったムハマドは、ヨウコが探していたムハマドではなかった…。
ヨウコが紛争地でアリという負傷兵から、歌舞伎町に住む生き別れた兄の8歳になる姪っ子に渡してほしいと頼まれたクッキーと手紙が入ったお菓子の缶。
これを渡すためにヨウコは日本へ来たわけですが、本当に渡したいムハマドが見つかった時、新たなドラマが始まりそうな予感がします。そういう意味では、ちょっとサスペンス要素？
ただドタバタしていそうで、ストーリーとしてはきちんと医療ドラマの側面もあり、社会問題にも踏み込んだ社会派エンターテインメントの側面もあり、ヒューマン・ドラマでもあり、もちろんコメディでもあり…。ひと言では言い尽くせない世界観でした。
これだけの複雑な"てんこ盛り"の要素を一話にまとめあげてしまうんですから、クドカンはやっぱり唯一無二のスゴい脚本家だと感じました。
ドラマ『新宿野戦病院』、濃ゆい3か月間楽しませてもらいたいと思います！