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ドラマ『全領域異常解決室』は、唯一無二の「神ドラマ」でした!

最終回、一体私はなにを観させられているんだろう?と、途中はもうなんだか思わず笑ってしまったドラマ『全領域異常解決室』。

この”摩訶不思議”な世界観に浸り続けた3か月。大学時代『古事記』を扱った授業を適当に聴いていたけれど、日本の神々についてもっと興味を持って学ぶべきだったと今さら後悔しています。

多分掘り下げれば掘り下げるだけ、研究すれば研究するだけどんどん深みにハマっていきそうな面白い分野ですよね。

“神様“という言葉を私も何気なく(案外しょっちゅう)使っていますが、一口に“神“といってもこれだけ多くの種類の“神様“がいることを改めて知ることができたし、これから神頼みをするときにはお願いのジャンルを明確にして、それぞれの“神様“の名前をきちんと言ってからお願いしないと…と思います(笑)。

このドラマはその神々たちをきちんとリスペクトしていて、人間が引き起こしている現代社会に対する問題提起までしているところが奥深かったように感じています。

「修理固成(しゅりこせい)」が後半に向けて大きなキーワードになっていきましたが、これまでの神々を消し去り、自分たちが″新たな神″として君臨するという「“神様“の総入れ替え」という発想には恐れ入りました。

途中はヒルコかも?と思われた寿は「私はヒルコ様に最初に選ばれた人間です」と。「私に協力して、新しい世界を作りませんか?」とヒルコに誘われ、すべての神を消し去るためにこの世の神々の居場所を探ってほしいと依頼された寿。

「天石門別神(アメノイワトノワケノカミ)」を消せばすべての神が消える…ヒルコは、あとは寿のような優秀な人間たちにすべてを託すと。

そこから次々と“神様“たちが消され、寿は不老不死の薬の開発を進めると同時に、″新たな神″候補をスカウトしてきた…。

“選ばれた人間が世界を支配し、そうでない人間を「選別」する“という恐ろしい計画の全貌が明らかにされました。

寿の会社のSNSを使用している間自殺を誘発する高周波音が流れ続け、一定時間それにさらされた人間は心を病んで自殺するという方法。SNSを見続けているのは思考を停止した人間で、今後恐怖とデマに煽られた人間たちがさらにSNSに殺到する…。それにより「選別」は加速度に進むというわけです。

確かに、ネットやSNSに踊らされてしまうのが悲しいかな現代社会の人間たちではあるし、私ももちろんその中の一人です。

その新たな神候補の観衆の前で消されそうになる興玉たち。そこに現れたのは警部補の二宮のの子でしたが、彼女もまたヒルコにただ操られていただけでした。結局寿も新たな神候補たちも、不老不死の薬に入れられた毒で殺されてしまいました。

そこからは「全決」京都本部室長・日野役の溝端淳平くんが突然登場したり、豊玉の父親・大和田こと「大綿津見神」が現れたりして、「あれっ?今って”特撮モノ”でも観ているんだっけ?」という思いがけない展開に…。

ヒルコが誰なのか最終回まで分からず、あの人?この人?とあれこれ考察していましたが、思えば「全決」の常に一番近くにいて、すべてを把握できる存在…それは直昆吉道でした。明かされれば納得でした。

興玉は、ヒルコの狙いが自分だと分かったときに疑問が浮かんだと言いました。自分が消えれば神であるヒルコも消えてしまう…だから、ヒルコは人間だと考え、「事戸渡し(ことどわたし)」を使える人間はただ一人だと思い至ったわけです。

人間なのに飛鳥時代厳しい修行に明け暮れて神通力を習得し、人魚の肉を食べて不老不死になったという呪術者・役小角(エンノオヅヌ)こそが彼の正体でした。彼がヒルコとして「修理固成」を成し遂げたいと思った理由がこれでした。

「不老不死の力といっても限界がありまして、ついに寿命を感じるようになりました。するとどうしても、今の世の中を放っておけなくなったんです。かつて人間は万物に感謝し、真摯に生きていました。しかし、科学の発展と共に傲慢になっていった。ネットやSNSが登場してからは、世も末です。人間は急速に品性を失い、垂れ流された嘘をむさぼり、すべて分かったつもりでおごり高ぶっている。もはや、史上もっとも思慮の浅い生き物になり果てた。神が人間を甘やかしすぎたんです。だから、決めたんです。あなたを消し、すべての神を黄泉(よみ)に送ったら、私がヒルコとしてこの命尽きるまで修理固成を成し遂げようと」

ドラマ『全領域異常解決室』最終回より

「この思いを分かってくれるだろう?」という直昆に興玉は「まったく分かりません。むしろあなたこそ傲慢な人間そのものですね」と。「(これからも)今まで通り(人間たちを)見守り続けます。理由なんてありません。 (人間は)守る価値もない。(でも)僕は神だからです。どんなに愚かでも、人間を守る責務から僕らは逃れられない。何度裏切られても、人間たちを信じ続けるしかないんです」

小夢がヒルコ、すなわち直昆によって「事戸渡し」をされたと思っていた興玉でした。でも実は興玉の正体を直毘から隠すために、興玉を守るために小夢自ら「事戸渡し」した事実を知ります。直昆は、それは愛情だったと…。それゆえ「天宇受売命」を呼び戻すことはできませんでした。

そして、直昆と興玉の壮絶な戦いが始まりました。藤原くんと柿澤くんのアクション・シーンにはシビレました!!興玉が直昆に「呪符」を首に貼られてしまったとき、小夢は”呼び出しの鈴”を鳴らし興玉の意識を取り戻させました。まさにそれは”愛の力”の奇跡でした。

「役目を果たしましたね。室長。我々の勝ちです」
「はい」
「”呼び出しの鈴”が聞こえました。でも…」
「分かってます。私は人間のままですね」
「あなたを取り戻すことはできませんでした。申し訳ありません」

ドラマ『全領域異常解決室』最終回より

この興玉と小夢のやり取りが切なくて…。藤原くんの涙の演技、心をわしづかみにされました。

「全決」チームで”最後の晩餐”のように食事を楽しんだ後、日野の見守る中小夢への「事戸渡し」を興玉がします。これで「全決」でのすべての記憶が消し去られてしまう…はずだったんですが、興玉の人差し指が小夢の頭から一瞬離れたんですよね~。これは「事戸渡し」は成立しなかった!?

道ですれ違う興玉と小夢。小夢は”呼び出しの鈴”を取り出して、音を鳴らします。興玉の表情はそのままでしたが、お互いの存在を認識しているような気がしました。

そして病院に入院していた二宮のの子の姿はそこになく、新たなヒルコ誕生の可能性を匂わせたままのジ・エンドでした。

これは完全に”続編あり”の予感プンプンですね。溝端くんを、あんなチョイ役で一度しか使わないとかありえないでしょう(笑)!

それにしても、このドラマは藤原竜也という俳優がいなければ成立しなかったことは間違いないと思われます。”神様”と人間との対比という、ある意味究極のタブーのような領域に足を踏み込んだこのドラマ。

最初の頃こそどう観て楽しんだらいいのか分からなかったけれど、いつの間にかその世界観にどっぷりハマってしまった私がいました。

「僕も神です」のカミングアウトも、藤原竜也が真剣に言い放ったセリフだったからこそ、ギャグのようにならず自然と受け止められたような気がします。ともすればコメディになってしまいそうなところ、あくまでも”ド真面目”なミステリーとして観ることができたのは、藤原竜也のまっすぐでひたむきなあの表情があったからこそかと!

広瀬アリスも、こういうヒロイン的な役回りの方が伸び伸び演じていて、彼女の良さが出るような気がしました。主演のときよりも、今回の小夢はいい意味で肩の力が抜けていて魅力的に感じました。

ミステリーでありエンタテインメントであり、後半戦は壮大な恋愛模様も描かれました。なんて形容していいのかうまい言葉が見つかりませんが、ドラマ『全領域異常解決室』は唯一無二の「神ドラマ」でした!

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