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ドラマ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』は、「命を救う」ということについて、改めて深く考えさせられた名作でした

『PICU 小児集中治療室』は連ドラの頃、毎週食い入るように観ていたドラマでした。

子どもたちの命を救うためにPICU、すなわち"子どものためのICU"で奮闘する医療チームの皆さんの姿に毎週涙し、感動をもらっていました。

北海道は広大ゆえ「大規模なPICUの運営は極めて困難」と言われる中、どんな子どもでも受け入れられるPICUを作るため、そして1秒でも早く搬送できる医療用ジェット機の運用を実現するために奔走する姿に胸を打たれました。

主演の吉沢亮演じる志子田武四郎、通称・しこちゃん先生の医師としての成長物語でもありました。

先輩医師や看護師たちとのチームワーク、医師と患者である子どもたちとの別れや絆、仲間との友情。そして武四郎の母親役・大竹しのぶの名演技が光った親子愛までも、すべて丁寧に紡がれた珠玉の名作だったと私は思っています。

そんなドラマのスペシャルドラマが放送されるとのことで、非常に楽しみにしていました。

武四郎がPICUに配属されてから一年後、武四郎は医師としてすっかりチームから頼りにされる存在になっていました。

ただ二人の研修医・瀬戸と七尾の指導を任されたものの、研修医たちからはちょっと小バカにされてしまう感じがまたリアルでもありました。

今回のスペシャルドラマ、二時間強のボリュームとは思えないほど盛りだくさんの内容で、心がずっと忙しかったです。

さまざまなエピソードの中でも、まずは安田顕演じる植野先生が以前命を救ったみどりちゃんについて。

延命措置によって生き続けているものの、意識が戻らないまま十年の月日が過ぎ去っていました。

花束を持って植野先生がお見舞いに行った時のともさかりえ演じるみどりちゃんの母親との会話が、「命を救う」ということが必ずしも「正ではないのではないか?」というクエスチョンを突きつけられたようで、頭をガツンと殴られたような思いがしました。

「この子は、本当に生きてた方が幸せだったんでしょうか?十年前一緒に死んだ方が幸せだったのかなって…頭によぎるんです。十年…十年この子はなぁんの光りも見ないままで、 私も一緒に目をつぶってた。みどりの人生ってなんだったんだろうって思うんです」
「お母さんは、立派にみどりさんの側にいてくださったと思いますよ」
「先生もやってみてください。十年、おんなじ場所でなぁんの光もない生活を」

ドラマ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』より

植野先生をギッとにらみつけた、母親の鋭いその目が忘れられません。

みどりちゃんのことを知っている高梨臨演じる看護師・羽生に電話をした植野先生。

「僕はどうすれば良かったんですかね。みどりちゃんを延命措置したのは、間違いだったんですかね?命を救うことが、正しいと信じてました」
「先生、考えすぎないでください。私たちの領域じゃないです」

ドラマ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』より

命を救うのが医者の役割であるけれど、その仕事をまっとうしたことで逆に苦しんでいる家族がいるということもまた現実。こういうことまでをもきちんと描こうとするこのドラマは「命の重さ」と真摯に向き合っている姿勢が感じられて、それだけで胸が熱くなってしまいます。

そしてなんと言っても、生後二週間前後と思われる女の子が搬送されてきた…その子にまつわるエピソードが強烈に心に残りました。

冬の寒い中公園に捨てられていたところを発見され、へその緒を雑に切られたことが原因で皮膚が傷つき″蜂窩織炎(ほうかしきえん)″を発症していました。

実際にも我が子を産み捨ててしまう母親もいたりするわけですが、長い間お腹の中にいた我が子を簡単に捨ててしまえるというその神経は、正直まったく理解できません。

その赤ちゃんの術後管理を武四郎と木村文乃演じる綿貫が担当することになりますが、危険な状況が続きます。

その子に名前をつけて呼んであげることにして、みんなで考えた名前は「浮田愛衣(うきたあい)」。いい名前です。

名前を呼んで懸命に治療を続けましたが、これ以上の治療法が見出だせないまま回復の兆しもなく、議論の末に治療を断念することになりました。今度容態が急変しても延命はしないことに…。

そして愛衣ちゃんは小さな体で最後まで頑張り抜いた末に、亡くなりました。植野先生、手術の執刀医・浮田や羽生も涙を流して悲しみました。

武四郎が亡くなった愛衣ちゃんに「よぉく、頑張ったなぁ…。痛かったねぇ…」と話しかけながら管を抜いてあげるシーン辺りから涙が止まらず。武四郎の母親が、友だちの桃子の出産祝いにプレゼントしてあげた”おくるみ”を愛衣にかけてあげて「母ちゃん、向こうでも頼むよ」と。

その”おくるみ”に包まれた愛衣ちゃんを抱きしめながら「愛衣ちゃん、産まれてきてくれてありがとう。ゆっくり休んでな」と武四郎が言った時には涙腺崩壊でした。

わずかな時間でも、武四郎たち優しい大人に囲まれて幸せな時間もあったと信じたいです。

この他にも、白血病で小児病棟とPICUを行ったり来たりしている日菜ちゃん。交通事故で運ばれてきた佐藤真子ちゃん・元太くん姉弟。しこちゃん先生とずっと交流が続いている心臓病を抱えた小松圭吾くん。子育てに悩む友だちの桃子。そして、医師としても人としてもまだまだ修行が足りない研修医二人。

それぞれのエピソード、どれもこれも考えさせられたり、感動させられたり…。

ラストの方の植野先生と武四郎の「しこちゃん先生、ありがとうございます。いつも君はたくさんのことを教えてくれる」「植野先生からいつもいろんなことを学んでます」とお互いを讃えあうシーンにもジーンとさせられました。

PICUの医師として一人でも多くの子どもの命を救う使命を担い、その想いの深さを互いに認め合っている二人の年齢も立場も超えた絆の深さが感じられました。

医療用ジェット機を常駐させるという次なる目標に向けて、二人の闘いはまだまだ続くわけですね。

亡くなった母ちゃんとのシーンも良かったです。武四郎が夢に出てきた母ちゃんに言われた言葉を思い出せなくて、やっと思い出せた言葉が「武四郎、親より先に死ぬなよ~」でした。

「それが、親御さんの一番の願いですね」植野先生の言葉通りだと思います。

「命を救うこと」について、改めて深く考えさせられたドラマ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』。定期的に、スペシャルドラマを作り続けてほしい作品です。心からオススメします。

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