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ドラマ『アンチヒーロー』は、日本のドラマ界に新たな歴史を刻むことになりそうな予感がします!

長谷川博己という俳優の底力をまざまざと見せつけられたようなドラマ『アンチヒーロー』初回でした。次々に常識がくつがえされていく、まさに”逆転パラドックス・エンターテインメント”!久しぶりにゾクゾクしました。

「人、殺したんですか?もう一度聞きます。あなたは人を殺したんですか?」というセリフから、テレビに写し出された鋭い表情の長谷川博己の顔の”どアップ”。

人殺しにさせられたら、有罪が確定したらこうなると延々としゃべり続け、たとえ殺人を犯していたとしても「私があなたを無罪にしてさしあげます」というあやしげな笑みを浮かべた決めゼリフを…。

殺人犯をも無罪にしてしまうという”アンチ”な弁護士・明墨の不気味な存在感がドラマの序盤から十二分に感じられて、「これは問題作になりますよ」と言っていた長谷川博己の言葉が思い出されました。

確かに「正義とは果たして何なのか?」「世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?」自分の中の常識がどんどん分からなくなっていく感覚がありました。

ある町工場で起きた社長殺害事件。岩田剛典演じる従業員の緋山が容疑者として逮捕され、目撃者もいたことから犯行は間違いないと思われました。検察側が出してきた証拠が4つもあると主張する「明墨法律事務所」の北村匠海演じる新たな弁護士・赤峰。その赤峰に明墨が言い放った言葉が強烈でした。

「我々にとって、証拠の数は多ければ多いほどいいんだ」
「ハリネズミだよ。検察は今回決定的な証拠をつかめていない。だからこそ、防犯カメラ、指紋、目撃証言、DNA。さまざまな証拠を掛け合わせて、なんとしてでも有罪に持っていこうとする。それは、自ら一つ一つの証拠はとても弱いと自白しているようなものだ。ハリネズミだって何千ものハリがなければただのネズミだ。1本のハリじゃ弱いから、複数のハリで戦ってこようとするんだ」
「つぶすんだよ。証拠を用意して有罪を立証するのが検察の仕事。だとしたら我々弁護士は、その検察が出してくる証拠をただ握りつぶせばいいんだ」

ドラマ『アンチヒーロー』初回より

「検察が出してくる証拠をただ握りつぶせばいい」という明墨の考え方は、依頼人を無罪にするためにはもちろん必要なことなのかもしれません。ただ、その明墨のやり口というのが空恐ろしいというか、なんというか…。

明墨は容疑者と社長の仲が悪化したのは、容疑者と”デキている”と思わせてしまった自分自身の言動が要因の一つではないか?とジワジワと被害者の妻を追いつめました。その上で”証拠の指紋”がついていた理由をでっちあげるために、被害者の5歳の息子を証言台に引っ張り出して嘘の証言をさせたり…。

検察側の証人である目撃者・尾形に勝手に近づき、忘れ物のメガネを取りに工場に戻ったという尾形の証言の矛盾をつくために、尾形の秘密を見つけ出してそれを裁判で暴いたり…。

【聴覚情報処理障害(APD)】
雑踏や賑やかな場所では人の声にもやがかかったり、内容が理解できなくなったりするもの

ドラマ『アンチヒーロー』初回より

事件当時、夜遅くまで工場では機械音がしていました。「聴覚情報処理障害」という耳の障害を抱えた尾形が、本当の忘れ物であった補聴器を取りに戻った時に被害者と容疑者・緋山との会話を正確には聞き分けられなかったはずだと明墨は主張しました。これには”あっぱれ”と言うしかありませんでした。

尾形がその病気のせいで仕事を転々としてきたことまでも露見させ、尾形の人権も無視したもはや”やりたい放題”。確かに検察の証拠を握りつぶす策の一つではありましたが、あまりにも尾形がかわいそうでした。

尾形は検察にも、明墨にも食ってかかりました。でも明墨はあっさり尾形に言いました。「人の病気をさらしてでも勝ちたい。依頼人の利益のために力を尽くす、それが弁護士です。真実を話したまで。恨まれたって困ります」

これが、実際に罪を犯している人間でも無罪にしてしまう明墨のやり方なんですね。弁護士の仕事って本来なんだったのか、頭が混乱してきました。

ただ、耳の障害を理由に解雇させられた会社たちを訴えれば1,000万円くらいは取れるから、その気があるなら無償で依頼を引き受けると尾形に伝えた明墨。こんな一面を見ると、単なる冷酷非道の弁護士ではないという感じもしました。

真実の明墨の姿はどこにあるんでしょう?

明墨と連絡を取っている犬を連れた少女・紗耶は誰なのか?
ドラマの最後、刑務所に入っている緒方直人(名前不明)が映し出され、紗耶に似た少女の似顔絵を描いていたことから彼は紗耶の父親では?
緋山は本当に犯人なのか?

さまざまな謎が深まっていった初回。検察が出してきた「凶器」という新たな動かぬ証拠についても「よーく思い出してください。事件が起きる前、あのハンマーをどこかで失くしませんでしたか?」と緋山に語りかける明墨。第2回、どんな風に展開していくのか気になって仕方がありません。

今回、改めて長谷川博己は主役にふさわしい俳優なんだということを痛感させられました。明墨は、誰でもが演じられる役ではないと思います。長谷川博己だからこそ”アンチヒーロー”である明墨を単なる悪人ではなく、どこか魅力溢れる存在に魅せることができるのだと感じました。

ドラマ『アンチヒーロー』は、日本ドラマ界に新たな歴史を刻むことになる”化け物ドラマ”になりそうな予感がします!!

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