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[書評] 経済評論家の父から息子への手紙  著:山崎元


概要

本書は2024年1月に永眠された経済評論家山崎元さんが、大学へ入学する息子へあてた手紙を基盤とし、それをより幅広い若者たちへと内容を届けてくれた1冊である。

主たる内容は
①昭和時代とは異なる、現代での働き方とお金の稼ぎ方
②お金の増やし方と資本主義経済の仕組み
③働き方のコツや山崎さん流の小さな幸福論
が紹介されている。

①株式と上手く関われ!

まず現代での働き方において時間の切り売りを行う昭和型の働き方ではなく、株式の報酬を上手に取り入れることで効率よく資産を形成していくことを勧めている。クビになることのリスクが非常に高かった昔と異なり、現代では人材の流動性も高まり転職市場も盛り上がっているため、自分で起業することやベンチャー企業に参加、または外資系企業のような自社株をストックオプションで支払ってくれる会社で働くリスクを積極的に取るべきだという。

たしかに日本が米国に対して経済力が相対的に低下している理由も、GAFAMのような急成長するベンチャー企業が育つ土壌が出来ていないからだと言われている。東京大学の松尾研究室のように大学発の起業をもっと後押しできれば、大企業のしがらみはないが行動力とアイデアはある若者の意見から、将来のGAFAMが誕生する可能性は十分にあるように思う。そして京都大学やその他の地方の旧帝大にもその流れが続けば地域創成にも繋がり、日本全体の国力上昇にもつながるだろう。

また山崎さんは本書で働き方の「自由」を大きく拡げるマインドセットとして

(1)常に適度な「リスクを取ること」
(2)他人と異なることを恐れずにむしろそのために「工夫をすること」

本書

を挙げている。

現代ではリスクを取れる人が取れない人から利益をあげている構造を指摘しており、昭和の安定志向型に安住することなく自分の頭でよく考えて働き方を選ぶことの大切さを説いている。
このあたりの話は瀧本哲史さんの「僕は君たちに武器を配りたい」でも似たようなことが書かれており、納得感があった。

生き残るためには、「スペシャリティ」な人間になること。「唯一の人」になれ!

僕は君たちに武器を配りたい

ローリスクより、リスクがとれる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選べ

僕は君たちに武器を配りたい

②オルカンのようなインデックスファンドにぶち込め!

とはいっても①のような起業をしたり、新卒で優良なベンチャー企業に就職することはかなりの勇気や運が必要になる。かくいう私もまずは大きな組織でしか自己実現出来ないことに興味があるタイプであるため、なかなか上記の道へは踏み出せない。そんな方のためのお金の増やし方としてインデックスファンドを挙げている。自らの「人的資本」をリスクの賭け金にするのでなく、蓄えた金融資産を賭けるのでお金に働いてもらうだけにはなる。
ここの話は最近だと新NISA関連で何度も聞くことがあるため割愛する。

③モテる人になれ!

端的に言うとこれに尽きていたのですが(笑)、この章が個人的に非常に読みごたえがあって面白かった部分だ。
まず働く際のコツとして自分の「人材価値」を中心にするべきだと言う。
ここで自分が投資するべき対象は時間・努力・お金であり、これらを通して
知識、スキル、経験、人間関係、時間を得ることで価値を高めるべきだと述べている。

また個人的に印象に残った言葉として↓があった。

・28歳までに、自分の職を決めよ
・35歳までに、自分の人材価値を確立せよ
・45歳から、セカンドキャリアについて準備せよ

本書

「2割増しの自由」を複数組み合わせよ

本書

現在、私は25歳で来年から社会人になるが、まずは航空宇宙系の研究開発職に就く予定である。将来的には経営であったり、戦略策定といったところにも興味があるが、やっぱり理系の技術的なことは好きなため、自分の理想のキャリアパスを切り拓いていくためには
航空宇宙×英語×○○の専門性を人の1.2倍頑張ることが重要になると思う。
○○が具体的に何になってくるかは分からないが、少なくとも航空宇宙系の勉強や英語を勉強することは全く苦ではないし、むしろ楽しんで学習できるため1.2×1.2×1.2=1.728と面的に人材価値が拡がっていくことを目指して20代のうちはこれらに全力投球して取り組んでいきたい。

そして著者は小さな幸福論としてナチュラルに「モテる」ことの重要性を説いている。ここでのモテるは異性・同性の両方から人間としてモテることを意味する。幸福の決定的要素として重要なのは「自己が承認されているという感」であり、異性からのモテるは言うまでもないが、同性内での仲間からの評価という面でも人の喜びに直結するという。

たしかに自分の人生を振り返ってみても、部活動や研究室での活動は同性コミュニティが多かったが、その中でも賞を取ったり、結果を残せた際には何ともいえない幸福感に包まれた覚えがある。

そして最後の締めくくりには、

モテる男になれ。友達を大切にせよ。上機嫌で暮らせ!

本書

とあり、何とも分かりやすく、それでいて核心を突いたような助言だと感じた(笑)

感想

本書は実際に著書の山崎さんが息子へ送った手紙の内容も公開しており、経済評論家ではなく、1人の父親としての感謝や助言の言葉には中々考えさせるものがあった。18歳の息子ではあるが1人の人間として敬意を表していることが伝わるし、そこから無限に広がっている可能性にも責任を持って一人で立ち向かっていけという一種の餞別でもあると感じた。
私が18歳の大学入学時なんて4年後(大学院の行く場合は6年後)の就職のことなんて一切考えていなかったが、ある程度自分の人生をどのように生きたいか、理想とするワークライフがどうであるかは節目節目で意識するべきだと感じた。

私も爽やかで上品な紳士を目指して努力することで、自分の人生に悔いなく生きていく!そう感じさせてくれるとても良い書籍でした。


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