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毎日読書#292 『運と実力の間 不完全情報ゲームの制し方』(木原直哉)
20代の頃、毎晩のように麻雀をしていた時期があった。
そのころはフレンチレストランでコックの仕事をしていたのだけど、23時に店が閉まり、厨房の掃除が終わると、その日の残った食材で夜食を作り、飲み残しのワインをガブガブやりながら麻雀卓を囲むという日々だったのだ。
朝の6時には仕込みが始まるので、翌日朝当番だったりすると、早く帰って寝たいのだけど(その時点で勝負師ではないね)、恐怖の副料理長の命令は絶対なので、麻雀に参加する事になる。
この麻雀が、とにかくすごい麻雀だった。あまり書いても麻雀を打たない方にはつまらないだけなので詳しくは書かないけど、早ヅモ必須、自摸即打牌、配牌並べ治し禁止、とにかくスピード麻雀。これを朝までやる。
しかも、新人は牌をすてるときに、ダジャレを言わないといけない半荘というのが、気まぐれで設定された。
「西」を棄てる時は「マンモス西」とか言いながら捨てる。これがきつかったなぁ。そのまんま東! 面白くないぞ前田! 来てよパーワン! 面白くないぞ前田! カトマンズ! それロン!
毎晩毎晩やっていれば、麻雀が強くなりそうなものなのに、こんな環境でやっていたからなのか、全然うまくならなかった。うまくなるどころか、正式なルールを把握しているか怪しいし、点数計算も出来ない。
でも、麻雀は好きになりました。なにしろ、面白いのです。
麻雀の難しさ、面白さは、麻雀や囲碁と違い、相手の手が見えないので「読み」と「運」の要素が強く、相手とのコミュニケーションが有る事。
これはポーカーも同じで、こういったゲームを「不完全情報ゲーム」と呼ぶそうな。
囲碁や将棋のように、すべての情報を両対局者が共有している頭脳ゲームを「完全情報ゲーム」と呼びます。これに対し、ポーカーや麻雀のように対戦相手がどのような手札を持っているのかがわからないゲームを「不完全情報ゲーム」と言います。(P12)
不完全情報ゲームの特徴は、対戦相手によってプレー内容を変える事。
逆に完全情報ゲームは、相手が誰であろうと、ゲームの結果にそれほど大きく作用はしない。自分と相手の手が全て見ているので、常に最善手を打てる方が勝利をする。
しかし、不完全情報ゲームの場合は、相手によって最善手が異なる事が多い。これは麻雀をする人にはピンとくるのではないかしら。
相手の手が見えないので、強気な態度を取られても、本当に手が強いのか、それともブラフなのかがわからない。おのずと、相手のプレイスタイルや性格など、様々なヒントで「読む」しかないのだけど、参加者全員がそれを行うので、常に最善手が変化することになる。
本書の著者は、そんな「不完全情報ゲーム」の世界で、ギャンブルの禁じられた日本に住むにもかかわらずプロとして生きるレジェンドだ。
ワールドシリーズオブポーカーという、毎年6月から7月の二か月間、ラスベガスで開催されるポーカーの世界選手権がある。なんと、延べの参加者は7万人もいるから、かなり大きな大会だ。
複数の種目(全部ポーカーだけど、ルールが違う)でゲームが開催されており、それぞれのゲームに高額な参加費を払い参加し、トーナメントゲームで二日、三日と勝負を行う。
高額な参加費の多くのパーセンテージが賞金に回されるということで、優勝した際の賞金も大きく、メインゲームともなると参加費が1万ドルで優勝賞金が1千万ドル(10億円以上)となることから、史上最強の個人競技とよばれているそうな。
そんなポーカーの世界選手権でメインゲームでは無いものの、日本人で初めてタイトルを獲得したのが、本書の著者である木原直哉だ。
本書は大きく二部構成で、前半半分では著者が東大を卒業しポーカープロの世界に足を踏み入れるまでの、生い立ちの紹介。
後半では、プロとして、いかに勝負を行っているかの、そして、ワールドシリーズオブポーカーで優勝するまでのストーリーだ。
私がやっていた麻雀なんかとはレベルも違う本気の世界で、勝負師としていかに研鑽を磨いてきたのか。その覚悟の強さ、ストイックさにクラクラする。
不完全情報ゲームには少なからず運任せな部分が存在してしまうのだけど、そういったゲームを制する考え方を知ることは、社会生活やビジネスで運が大きくからんでくるときに役立つのではないか。
どのように準備をしたらよいのか、どのような戦略で戦えばよいのか。
本書を読むと、どのような態度で勝負に挑めば良いのか、多くのヒントを得られるだろう。面白い。
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