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毎日読書#263 『料理の四面体』(玉村豊男)

世間には「メシマズ」という、配偶者の作った不味い料理を冷やかす悪趣味がある。

ネットに沢山転がっているので、それらを読んでみたのだけど、確かに、不味そうだった。カレーを煮込む鍋にスケキヨばりにサバの尾が突き立っている写真を見てしまったら、これをコンテンツにしようと思うのも仕方ないないなと思ってしまう。にしても悪趣味だけど。

しかし、そういった料理の写真やエピソードを見ていると、その中には「そうしたくなる気持ち」が、わかるものだってある。目指すところは正しいのに、思いついた手段が拙かった、それが不味かった。的な。

私も、あれこれとやらかす事が多い。今日は、昨日作ったポトフの余りに、冷凍食品の水餃子を入れ、醤油で味を調えたものを作った。

そうしたら、幸いなことに、スープや野菜は美味しくなった。でも、そのスープに浸る水餃子が良くなかった。齧った瞬間、突き抜ける餃子の強い中華風な味が、スープを異物に変えてしまった。何とも言えない不協和音。ちょっと失敗。

子ども達は、ポトフから餃子だけとりだし、醤油風味のポトフを楽しんでいた。そして、味の強い餃子はご飯のおかずにして食べていた。

つい「ショウガを細く刻んでスープにパンチを加えたらよかったかな」なんて言い訳がましく言うのだけど、次女からは「明日はお弁当が食べたい」と言われた。大変申し訳ない。

私のロジックでは、腸に詰めた味の濃い肉がイケるなら、小麦粉に詰めた味の濃い肉だって問題無いだろう。というものだった。

ポトフはソーセージを入れてスープに塩味を加えたりするし、そのソーセージと野菜を一緒に咀嚼させることで食事として満足を与えるものになるし。だったら餃子にだってその役割を担えるはず! と思ったけど、餃子の皮は、そもそも中身を封じ込める為にあるので、ソーセージの代替にはなり得ない。

さて、今日の積読解消は「料理の四面体」だ。

この本を読むと、私の考え方はあながち間違っていないようだ、と自信を与えてもらった。ただ結果が良くないだけだ。

本書曰く、料理は「空気」と「水」それに「油」が「火」によって素材を変質することで行われるものだという。図にするとこうだ。

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図だけ見てもわからない。納得感が得られるレベルで説明すると、引用の範疇を超えそうなので、是非読んでみて。料理に少しでも興味のある方なら面白いエッセイ集だから。

本書は、世界の料理を分類したり、整理するような大統一理論をぶちあげたものでもないし、料理を完全に分類し、マトリックスを作って未発見のレシピを見つけよう、というものでもない。

うまい飯を肴に、縦横無尽に料理蘊蓄の世界で遊んでみたのが本書の四面体理論の真髄だろう、これを以て料理を説く様な意図は感じないが、読んだ料理人は怒ったらしい。料理を軽んじている様に読めたらしいが、それは誤読だろう。

煮るだとか、焼くだとか、そういった大きな切り口をテーマに置いて、縦横無尽に話題を広げ、気の利いたオチで締める。とにかく読んでいるだけでおもしろい。

料理に興味のある方は読んでみてはいかがでしょう。

この調子で酒の四面体とか読んでみたいな。

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マエダヒデキ
「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。

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