毎日読書#208 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(ベンジャミン・ハーディ)
かつて大前研一は、自分を変えるためには「時間配分」「住む場所」「人間関係」の3つを変えれば良いといった。という有名な話がある。そして、付け加えるようにこうも言う『最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。』と。
こんな経験はないだろうか、仕事上でいろいろな事に悩み、ストレスを抱え、毎日が憂鬱だったのに、思い切って転職をしたら、かつて悩んでた事なんてすっかり忘れてしまった。後で思い起こして「なぜ、あんなどうでも良い事で悩んでいたのか。なぜ、もっと早く行動しなかったのか」と、かつての悩みの小ささに拍子抜けたりもする。
ハーバード大学の有名な研究(って沢山有りそうだけど)に、友人にデブがいたら、自分も数年以内にデブになりがち。というものがある。これは親しければ親しいほど影響が強くなるそうだが、そりゃ、いつも一緒に食べたり飲んだりしていりゃ影響はされる。
逆に、いくら自分を変えようとしても、環境をかえなければ元の木阿弥、という例は昨今のタレントやミュージシャンによる覚醒剤騒動などをみると、たとえ強い意志をもって臨んでも、人付き合いなどの環境が一緒なら、やはりまた手を出してしまうようだ。
本書が300ページ以上かけて説明しているのは、ようするにそういうことだ。環境が変われば自分もかわる、意志力など役に立たない。
であれば、自分をかえたければ、望む変化を起こすための環境を自分で用意したら良い。
そのために必要な要素としては、
・事前に「投資」する
・「公言」する
・「期限」を設定する
・「フィードバックをもらえる仕組み」や、「自分が責任を負える仕組み」をいくつかつくる
・「自分の決意に反するもの」はすべて環境から取り除くか変更する
このようにして、目標を達成するための環境や仕組みを戦略的に用意し、かつ、不要なものは排除する事で達成に近づこう。というものだ。
大抵の自己啓発本では、何かを成し遂げるには意志の力を高める必要があるとしている物が多い。やり抜く力だ。それが前提となっていて、その前提の上で成り立つテクニックを紹介するのが自己啓発本のセオリーだ。意志を強く持つのは前提条件となっている。
しかし、著者はその「意志力」徹底的に否定する。意志力だけでは絶対に継続しないという。
多くの人が意志力に頼り、結局、目標に相反する低いレベルの環境に落ち着いてしまう(P237)
そして
自分の外の世界を今のままで変えないのなら、変化を起こすことは決してできないだろう。(P322)
と言い切る。
結局、
人生に変化を起こしたいなら、意志力を発揮するのではなく、ただ環境を変え、自分が演じている役割を変えればいい。(P81)
のだ。
買ったあと、版元が(個人的に)オカルト色が強い(と感じている)サンマーク出版と見て、ああ、しまったと思った(良し悪しという話ではなく、相性が悪いのです、すみません)のだけど。やはり、表紙に「科学」と書いているわりに、ちゃんと科学はしていない。
なので著者の言説を全て信じるかといわれたら、時折、根拠が紹介されない話もまじってきて、すこし眉唾なところも多い。
だが、著者の直感や主観とはいえ説得力ある話も多いと感じるので、なにか生活に変化を起こしたいと考える方にはヒントも多い。目を通していただき、選り分けたり読み替えたりしながら楽しむと良いと思います。
私には、意志力礼賛な「GRIT」よりも、こちらのほうが肌に合う。