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【リーダーの心得2】「中庸」の九經から学ぶ②〜組織運営の要諦。次に、優秀な人材を引き立てよう。

中国の古典「中庸」には、組織運営の秘訣が述べられています。この「中庸」にある九經(きゅうけい)、つまり9つの組織運営のための原理原則は、現代を生きる私たちにも大いに役に立つものばかりです。今回は、9つの原理原則の2番目、

「賢(けん)を尊(たっと)ぶなり」

「中庸」

について考察します。
「賢を尊ぶなり」とは、優秀な部下を見つけたら積極的に引き立てることを意味します。マネジメントの神様、P・F・ドラッカーも

「部下が強みをもち、成果を上げることによって苦労させられた者などひとりもいない」

『プロフェッショナルの条件』P・F・ドラッカー、翻訳 上田淳生、ダイヤモンド社、2000年、190頁

と述べています。
ドラッカーは「優れたリーダーは強力な部下を求める。部下を激励し、前進させ、誇りとする」として、優秀な部下を引き立てることを求めています。

では、なぜ「賢を尊ぶなり」が重要なのでしょうか。九經には

「賢を尊べば、即(すなわ)ち惑(まど)わず」

「中庸」

とあります。
道理をわきまえ、賢い人を尊重し、その意見や知識を重んじることで、自分自身が迷わずに正しい道を進むことができるという意味です。

具体的にどのように実行すればよいのでしょうか。「中庸」には実践法まで書かれているところが素晴らしく思います。
その実践法とは、

「讒(ざん)を去(さ)り色(いろ)を遠(とお)ざけ、貨(か)を賤(いや)しみて徳(とく)を尊(たっと)ぶ」

「中庸」

とあります。
つまり、「讒を去り」は誹謗中傷や不正、悪行を避けること、「色を遠ざけ」は欲望や誘惑を遠ざけること、「貨を賤しみて徳を尊ぶ」は、貨財などの表面的なものを軽んじ、内面的な徳を尊重することを意味します。このことを実行すれば、「賢(けん)を勧(すす)むる所以(ゆえん)なり」とし、トップの資質を持つ賢人が集まってくるようになるとしています。

ドラッカーもリーダーシップは資質でもカリスマ性でもなく手段とし、「リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」と述べています。
このようにリーダーは、

1. リーダーシップを仕事と見ること
2. リーダーシップを地位や特権ではなく責任と見ること
3. リーダーは、信頼が得られること
4. リーダーは、一貫性に支えられていること

『プロフェッショナルの条件』P・F・ドラッカー、翻訳 上田淳生、ダイヤモンド社、2000年、
185−187頁から抜粋

としています。特に3の「信頼が得られること」、そして4の道理に則した「一貫性に支えられていること」は、「中庸」の「賢を尊ぶなり」の意図することと見事に合致しています。ドラッカーが説くリーダーシップの本質もまた、信頼と一貫性に根ざしています。

このように、リーダーがしっかりとした信念を持ち、賢人を尊重し適材適所に配置することで、組織はまるで一つの調和の取れたオーケストラのように、美しく力強く機能し、持続可能な成功を収めるのです。

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