最高にキュンキュンする初恋の話
小学生の頃、クラスに”マドンナ”が居た。いつも明るい笑顔を咲かせている彼女のことが気になり出したのは、小学校3年生の時だ。たまたま駅で父親とご飯を食べていたところ、改札内にその子が居て改札外にいる誰かに手を振っているのが見えた。
「あ、○○○だ。」と自然に僕の口から溢れた名前に父が反応した。
「知り合い?」
「うん」素っ気ない返事を返した。
ふと、何でここに居るのか記憶を遡ると、英語のコンテストがあるみたいなことを学校で言っていたことを思い出した。午前中の早い時間の改札。自分は確か、早朝にしか見れない貨物電車の入れ替え作業を見に行った帰りだった気がする。
小学生の自分は、何にも考えずに父に説明した。
「そういえば英語のコンテストがあるって言ってた。」
それを聞いて、父は、ハッと顔をあげて言った。
「がんばれって、言ってきなさい。」
確か最初は嫌がった。シャイだったから。でもそれを見た父は、僕の体を流すように店の外へ押し出した。
小学生の自分は、何も考えずに改札に飛び出して、彼女の名前を叫んで手を振った。
「○○○!!!!!…がんばってね」
って確か言った。
彼女は、こっちにハッと気づいて手を振った。
彼女の姿が階段の下に消えていき見えなくなった時、後ろから父に背中を叩かれて
「こーゆの大切だからな」
みたいなことを言っていた覚えがある。
今覚えば、最高の教育を受けた瞬間だった。
休日が終わり、学校での話。
朝、ロッカーで支度をしていると、ロッカーの隅から後ろ手を組んだ彼女が現れた。
「何であの時改札に居たの〜?」と聞かれ、
軽く説明した後、小学生の彼女は、
「じゃーん!!」
と言って、後ろに隠していた賞状を見せてくれた。
地元山梨県のワインを英語で紹介する内容だった気がするが、先生に促され、クラスメイトの前で発表をしていた。英語でスラスラ喋る彼女に、小学生の自分は、単純に「凄いなぁ」と目をきらつかせて見ていたのを覚えている。
これをきっかけに、彼女は僕だけに優しくしてくれるようになった。(気がする。)学級役員か何かをやっていた彼女は、帰りの会の時にうるさい人の注意をよくしていたが、僕にだけは注意しなかった。今でも記憶に深く残っている。それに、小学校3年生から6年生まで毎年バレンタインデーのチョコを貰っていた。それも、みんなにバレないようにコソコソと…。時には、手紙も一緒に入ってたりして、純粋に彼女のことを好きになっていった。正直、小学生の頃なんて"好き"と言う気持ちもハッキリと何なのか分かってはいなかっただろう。ただ、今振り返ると何となく惹かれるというか、惚れていた。
小学6年生の時には、2人だけの秘密で交換ノートをやっていた。ノートを交換する時、
「はい、これ借りてたノート」
とか言って周りにバレないように渡したり、彼女の座布団の下にこっそり入れて
「あれ、いれといたよ」
って耳打ちしたり、、。
そんな彼女は、頭が良かったので中学受験をすることになった。お守りを交換ノートに挟んで渡したり覚えも何となくある。受験の前日、交換ノートには
「がんばれって言ってほしい」
って書いてあった。でもシャイな僕は、一日中言えるタイミングを伺っては言えずにいた。帰りの挨拶をした後、小学生のようにみんなで駆け降りる彼女の背中を追って、階段の途中、
「○○○!!」また彼女の名前を叫んで、
「明日、頑張ってね。」と言った。
合格を心から願ってた一方、彼女が中学受験で合格することは、お別れを意味していた。違う中学校に行ってしまった未来を小学生の僕は、安易に想像出来なかった。純粋に応援して願った結果、彼女は合格した。
僕が携帯を買ってもらったのは中学一年生の春、小学校卒業にはギリギリ間に合わなかった。当時の連絡手段は、交換ノートか、家の電話しかなかった。今ではあんまり考えられないが、直接家に行ってピンポンを押したり、放課後の小学校に集合したりしていた。メールとか、LINEなんて概念はまだ無かった。彼女とする最後の交換ノート、卒業してもたくさん会いたいってことを書いて、最後は感謝の言葉で終わった。当時小学生だった自分は、ふつふつと浮かぶもどかしい感情が、”好きという感情“であるということに気づけなかったのかもしれない。彼女からの最後のノートには、これからもずっと親友だよと書いてあった。
愛にはならなかったが、恋としては一番美しい恋だった気がする。なんだか小学生の頃の恋は、恋の答えのようなそんな気がする。純粋で、泥臭くない綺麗な恋。僕にとっての初恋は、人生で一番美しい恋だった。
そう。だから8年越しに再開した時、第一に
「やっぱり好きだ。」
と直感で感じた。高校を卒業した頃、彼女から僕のInstagramに連絡が来た。驚きを隠せなかったが、すぐに会うことになって、小学生の頃遊んだ地を巡った。嬉しかったけど悲しかった。久しぶりに見る彼女はとても美しかったから。小学生の頃も手を伸ばした先に彼女が居た。届きそうで届かない一歩先を彼女は進んでいる。いつか釣り合える日が来るのだろうか。
終
写真→Zero Kanzaki
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