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短文自由詩集(2)/sekiryou


蜘蛛の糸を掴んだひと



胸にナイフを刺したら逮捕をされると聞いたはずだ 物的証拠と外傷がなければ告発できないのか


苦の時を暗黒のままにする私 蜘蛛の糸さえ降りてくるなら 今はいくらでも待つ


もう何を言っても届かないアイツだから 胸中で悪態をつく 今までは反撃できる距離にいた



原稿用紙の束が縦結び 縦横変えればかんたんに横結び


要らなくなった仕事道具を投げ捨てたあとで 我に返って袋にまとめた 消しゴムはおとなしいけど万年筆が飛び出してくる


辞めた場所の近くを通らず 見えた夕焼けの金色 逃げることも悪ではない


〝大切なのはこれから〟と説いてくれる先生みたいなひと 思い出しながら今日は近道をした


私にはこれしかないと思っていたものが残った 彼の寝息とか 家族からのお誘いとか 何冊かの詩集とか


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寂寥の雨
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