"Tequeolo Caliqueolo"
2017年6月30日に京都にやって来ました。
体力回復もままならず、日々の痛みに耐えながら悶々とした毎日を送っていました。
思いつくこと、できることは全て実行しました。
毎朝の散歩は欠かさず、高野川に沿って上っては下り、出町柳までの道のりを歩き、駅にあるロッテリアの店員さんと顔馴染みになり、少しばかり会話を交わしては自分を慰める。
歩くことしか思いつかず、毎日最低10キロ、多い時には20キロ歩く。
それでも抜けない全身の痛みに自分を呪い、嘆いては空に向かって助けを求めていました。
そんなある日の午後。
フラッと入った楽器屋で、懐かしさからスティック売り場に足が赴きました。
しばらく陳列されたスティック群をボーっと眺めていると、背中越しに声がします。
「何かお探しですか?ドラム興味あるんですか?良かったら試奏如何ですか?」
振り向くと、爽やかな笑顔がそこにありました。
これが(Gt)嵩徹也君との出会いです。
何と答えて良いのか戸惑っている私に
「どうですか?よかったらサンプルのスティック使ってみて下さい」
と言いながら練習用のパッドを「トコトコトン、ね?」と口ずさみながら叩いてみせる嵩君。
私はただ苦笑いをしながら、彼の行動を見ていました。
「流石にそれよりは全然上手いかな〜」
と、ほくそ笑みながら手に取ったスティックはZildjianのデニス・チェンバースモデル。
ヒッコリー素材で中々バランスの良いスティックですが、そこはイカ人間になっている私。
サンプルのスティックを握るまでは良かったのですが、スティックに振り回されて手首を痛めてしまいました。
「昔ちょっとやってたんだよ」
と言いながらスティックを振っていたので、手首を痛めたなどとは恥ずかしさから言えず、そのままスティックをワンセット購入して帰路につきました。
その日から彼との交流が始まります。
上手く表現することは難しいのですが、学びというのは老若男女、年齢を問わずやって来るもので、彼の行動は私生活を含めて全て学びであり、私にとって彼は常に先生でありました。
「バンドマンの握手はこうやるんですよ〇〇さん」
「音楽は楽しまなければ意味がないんです、ようやくそこに気が付いたんですか?」
「〇〇さん、何でそんなに自信がないように見えるんですかね、何かをやってくれそうな雰囲気しかしないのに」
年齢差を理解した上で、それでも対等な目線で話してくる彼の世界観は、私の残されていた僅かなプライドを見事に打ち砕いてくれました。
そうです。
彼は絶望の淵にいた私に、常に前を向けと光を当ててくれたのです。
この曲"Twilight"は初めて彼のバンドのライブを見に行った時に、ステージの後半に演奏された曲です。
切なさを感じさせるメロディラインに、ライブバンドという呼称に相応しいハイパフォーマンスなステージングを見せてくれるこのバンド。
音楽が鑑賞するだけのものではなく、その場で熱を感じ、拳を突き上げる楽しさを思い出させてくれたバンド。
自分の中の燻っていた何かを再び呼び起こしてくれた最高のバンド。
"Tequeolo Caliqueolo"
残念ながら2019年12月16日に解散してしまいます。
26歳で知りあった彼も今年でもう34歳。
これからの人生に大きな幸があることを強く願っています。
「58歳の私から34歳の嵩先生に敬意を表して」
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