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綿帽子 第一話

ああ、嫌な夢だった。

いや、果たして夢だったのであろうか。
皆んなが嘆き悲しんでいる。
皆んなって誰だ?もうそれすら分からない。

だが、ともかく俺は足を止めた。
分かっているのはあと一歩前に出たら確実に死ぬという実感。

ただ、それだけだ。

何故目の前に並んでいた人は大戦下の特攻服のような物を着ていたのだろうか。

確実に死ぬというのに彼は出て行った。

その時聞こえた胸が砕け散ってしまうような悲痛な叫びだけが、耳に焼きついて離れない。

果たして朝は来るのか?

俺は毎日それだけを考えて眠りについている。

いや、眠ろうとはしていない。

眠ってしまったら、もう二度と朝日を見ることが出来ないような気がして眠らないのだ。

下半身から細胞の一つひとつが死滅していっている。そんな感覚と共に、看護師さんのカーテンを開ける音だけを楽しみに俺はここにいる。

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1,891字
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綿帽子というタイトルで書き綴っているエッセイです。 「親子とは何か?自分とは何か?」 永遠に答えが出なさそうで、案外知っていたりする事実を…

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