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綿帽子 第四十六話
見学者がやって来た。
夫婦とその妹、子供が二人いて両親とも同居するらしい。
お袋と二人で精一杯の作り笑いをして出迎える。
不動産屋の案内で内部閲覧に入る。
俺は各部屋の案内をして回る。
お袋は少々テンパっているのか見学者の質問にかなりあやふやな返事をしている。
「私の家だからお前は一切話すな」
と豪語したお袋だったが、かなりまずい。
暖房器具は取り外すと伝えたにもかかわらず、詳細が曖昧になっている。
それについて見学者から質問があった。
俺は暖房器具は取り外すと伝えたが、お袋はお袋で「暖房器具も何箇所もあるからいいでしょう」と言いだした。
見学者が首を傾げている。
そりゃそうだ、正反対のことを二人で言っているのだから。
しかし、そんなことはお構いなしとお袋はどんどん話を進めていく。
勘違いされる予感しかしない。
これ以上言うと見学者が困惑するだけなので、この場はこれでやり過ごすことにした。
後から不動産屋に連絡するつもりだ。
このところお袋は少々おかしい。
元々人とのコミュニケーションが苦手な人ではあったのだが、やはり自分が親父と共に作り上げた家だ。
その親父との思い出が一杯詰まったこの家を手放すということは、かなりのストレスになっているのだと思う。
お袋もおかしいが俺だってまともではない。
この家にいる住人全員が普通の状態ではないのだ。
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