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綿帽子 第二十五話

あれからも同じ道を通る度に婆さんは出てくる。

老木に近づくにつれて緊張感が増していくが、平常心を養うには丁度良いのかもしれない。

少しずつ距離を伸ばしてコンビニの近くまで来れるようになった。

店内に入ってみる。

このコンビニにはよく通っていたので懐かしい顔を見る。
軽く挨拶を交わしてから、すぐに外に出た。
まだ人と上手く会話できるような状態ではないらしい。

自分が本当に情けなく思ったりするが、ここまで弱ってしまったのだから仕方がない。
腹を括って前を向くしかないのだ。

思い返せば「死の前兆」というものを感じ取っていたかもしれない。

敗血症を発症したと思われる数日前にも、このコンビニに立ち寄った。

その時にはもう歩くのも立っているのも苦しく、絶対俺はおかしいという自覚はあったが、本当に死んでしまうとまでは想像はできていない。

しかし、死というイメージがこびりついた予感めいたものは肌で感じていた。

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