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デジタル教科書とワークショップで学びを深める:藤田健先生(山口大学)

藤田先生は、「商品開発論」という授業で、学生が復習する際にワークショップを取り入れることで、深い学びを実現しています。冷蔵庫を題材に生活者の困りごとを観察法で見つけるという課題を通じて、学生の皆さんは、考える力、他の学生とコミュニケーションする力、言語化する力などが高まったと感じています。その具体的な進め方について教えてもらいます。


デジタル教科書を活用した反転授業を実施中

 筆者は長年、大人数の受講生を前に一方的に話し続ける講義を実施してきました。そんな私でも、この3年ほどは、「商品開発論」(経済学部2年次以上配当科目、2単位、20~50人程度)の授業で、デジタル教科書を使った反転授業をしています。画一的な講義とは違ったやり方なのですが、毎回の授業が刺激的です。
 私が反転授業をするのは、コミュニケーションを通した学びを提供するためです。受講生がデジタル教科書で授業前に予習をし、授業時間中に対面でリアルなコミュニケーションをすることで、学びを深めようとしています。そのため、毎回の授業は、図1のような流れで進みます。

図1:授業の流れ

 今回のnoteは、こうした授業の「④復習」段階に「ワークショップ」を取り入れたお話しをします。「ワークショップ」の実施目的は、受講生が商品企画プロセスの内容を振り返りつつ、受講生同士でコミュニケーションしながら実践的な体験をしてもらうことです。以下では、私がどのようなワークショップを実施しているのか、学生がどのような感想を持っているかをお知らせしようと思います。
 なお、ワークショップにはいろいろな定義が存在します。ここでは「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学び合ったり、作り出したりする学びと創造のスタイル」(中野民夫『ワークショップ:新しい学びと創造の場』岩波新書、2001年)としておきましょう。

ワークショップの進め方

 ワークショップは、「商品開発論」の15回の授業のなかで3回実施しています。ワークショップを実施するタイミングは、授業の「はじめ」と「節目」です。
 授業の「はじめ」に実施するわけは、受講生に「ワークショップとはなにか」を体験してもらい、ワークショップのやり方を理解してもらうためです。そうした基礎知識をもってもらったうえで、教科書の「部(セクション)」の「節目」で、その部の内容をワークショップで実践してもらうのです。具体的には、第1部「探索的調査」終了時と、第2部「コンセプト創造」の終了時に実施しています。ここでは、「探索的調査」のワークショップを紹介しましょう。
 『1からの商品企画』第1部は、探索的調査の方法(インタビュー法、観察法、リードユーザー法)を解説しています。それらはいずれも消費者の潜在ニーズを見つける方法です。教科書の内容を理解することは大切なのですが、その知識を「どう使うか」を経験することで、受講生の理解がさらに深まります。そこで、探索的調査のなかでも「観察法」を実際に使ってもらおうと考えました。
 観察法は「生活者の暮らしを見ることで、生活者の抱える問題を発見する」という行為なのですが、意外とこれが難しいことなのです。学生に「観察をしてください」というと、何を見たら良いのかわからなくて困ってしまったり、観察をしたあとに「評論家」になってしまったりするなどして、うまく観察して生活者の抱える問題を見つけることができません。そこで、ワークショップでは、観察から課題解決のためのアイデアを生み出すプロセスを再度確認し、実際に観察・課題発見・課題解決(改善案の提示)までを学生にやってもらうようにしました。
 ワークショップの課題は、生活者の暮らしのなかにある「困ったこと」を見つけて、既存商品を改善することです。お題は「冷蔵庫」です。まずは、受講生たちが自宅の冷蔵庫の写真を持ち寄って、それを見せ合いながら、「どう使っているのか」「困ったことがないか」をお互いにインタビューします。そうすることで、冷蔵庫の写真の背景に、「暮らし方の違い」や「ちょっとした困ったこと」が存在することを理解してもらいます。そのうえで、私が用意したたくさんの冷蔵庫の写真を受講生に「観察」してもらい、気がついたことや課題があれば、メモしてもらいました。
 受講生が個別に課題を見つけたあとは、チームで課題を共有し、もっとも重要だと思われる課題に絞り込んで改善案を出してもらいます。授業時間に余裕があれば、発見した課題と改善案を発表してもらっています。ワークショップ後は、チームの改善案を各人でブラッシュアップしてもらい、それを個人レポートとして提出してもらって終了です。こうして、受講生に観察、課題発見、改善案の提示というプロセスを体験してもらいます。

ワークショップを取り入れた効果

 授業が終了した段階で、受講生にアンケートをとりました。自由回答の結果をみると、図2のような声があがってきました。ここでは、ワークショップを実施した効果だと思われるコメントを紹介します(コメントは読みやすいように修正してあります)。

図2:受講生のコメント

 当初の目的は、商品企画プロセスの内容を振り返りつつ、受講生同士でコミュニケーションしながら実践的な体験をしてもらうことでした。受講生のコメントを読んでいると、受講生が商品開発プロセスの応用力を身につけただけではなく、商品企画をする際に必要となる力(考える力、表現する力、協働する力など)も身につけてくれたようです。ワークショップは3回しかできませんでしたが、私が期待した以上に多くの学びを得てくれたように感じます。
 もちろん、私のワークショップが完璧なわけではありません。受講生からは「時間が足りない、発表の機会がほしい、他のチームの意見を聞きたい」など、たくさんの要望が寄せられています。こうした要望に応えながら、ワークショップの中身をブラッシュアップしていきたいと思っています。

#デジタル教科書 #反転授業 #コミュニケーション #ワークショップ


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