時代劇レヴュー⑳:大仏開眼(2010年)
タイトル:大仏開眼
放送時期:2010年4月3日(前編)、4月10日(後編)
放送局など:NHK
主演(役名):吉岡秀隆(吉備真備)
脚本:池端俊策
2010年の春にNHKで二週に渡って放送された二部構成のスペシャルドラマで、平城遷都1300年を記念して制作された作品である。
遣唐使帰りの政治家・吉備真備を主人公に据え、真備の唐よりの帰国から仲麻呂の乱までを描いており、タイトルは「大仏開眼」であるが、全体的には奈良時代の政治劇と言った趣きである。
ヴェテラン池端俊策が脚本を担当したこともあり、2000年代に作られたNHKの歴史ドラマとしてはかなり重厚でストーリー展開で、配役もよく合っている。
ところで、この作品はNHK大阪放送局の制作によるもので、先行する「聖徳太子」(2001年11月放送)、「大化の改新」(2005年1月放送)と合わせて古代史三部作と称され、いづれも脚本は池端俊策が担当しているが、個人的にはこの三弾目の「大仏開眼」が一番面白いと思う。
と言うよりも、他の二作品は同じようにドラマとしては重厚でも、今ひとつ面白みに欠けて印象のあまり残っていないのである。
これは、私が政争が好きなので政治史の動きを前面に出したドラマの主題に惹かれたせいもあるのだろうが、奈良時代はそれ以前の時代に比べれば史料が残っている時代で、登場人物のパーソナリティが再現しやすく、過去の作品に比べて余計なフィクションが介在しにくく、シンプルに歴史ドラマとしての面白さが発揮されたせいもあるだろう(余談であるが、池端俊策や杉山義法の脚本は純粋な創作よりも、史実をベースにした物語にこそその真骨頂があるように思われ、史実の解釈と言うレヴェルになると格段にうまい。例えば、これはいづれ取り上げようと思っているが、池端俊策が脚本を担当した1990年にTBSで放送された「忠臣蔵」は、そう言う面では傑作と言って良い作品である。逆に言えば、この両者、特に杉山義法は史実があまり介在しないフィクションになると途端に面白くなくなる)。
とは言え、不満がないかと言えばそうでもなく、真備を主人公にしたことで、ややストーリーがぼんやりしたものになってしまった感は否めない。
真備は確かに現代日本人が好みそうなキャラクタだとは思うが、仲麻呂の乱で物語が終わるのであれば、人物の個性としては仲麻呂が主人公であった方がより面白かったような印象がある(藤原仲麻呂役は、これが時代劇初出演の高橋克典)。
ただ、仲麻呂のようなタイプの政治家は一般人受けはしないので、奈良朝の個性派揃いの人物の中で、「無難」な真備が主人公に選ばれてしまうのはやむを得ないことなのであろう。
後は、構成上の理由で孝謙天皇が異様に美化されているのはご愛敬だとしても、道鏡のことに全くふれないのは、時間の関係とは言え個人的にはフェアではないと思うのであるが、これもまたない物ねだりであろうか(それとも、孝謙女帝を演じた石原さとみのイメージの問題か)。
配役では、聖武天皇役の國村隼がかなりはまり役で面白かったし、二代目市川亀治郎(現・四代目市川猿之助)演じる野心家の玄昉も良い味を出していたように思う。
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