ネタバレ全開研究「ルックバック」それでもアニメや漫画を嫌いにならないでいてほしい
名作との呼び声も高い2024年最大級の話題作。
詳細に研究していきます。
ネタバレ全開で行きます。
結末を知りたくない方はここで左様なら。また会う日までお元気で。
評価4.5点(5点満点)★★★★☆
5★人生が変わった
4★とてもおもしろかった
3★おもしろかった
2★つまらなかった
1★怒りを覚える
●死者から生き残った人へのメッセージ
「僕がアニメを好きでなければ、妹は亡くならなかったかもしれない」
京都アニメーションの忌まわしい事件で犠牲になった女性のお兄様が講演会でこんな発言をされていた。
自分が彼女をこの世界に巻き込まなければ、彼女は死なずにすんだ。
同じような悲しみや苦しみを主人公の藤野も抱えている。
そんな藤野にパラレルワールドから京本は一本の4コマ漫画を贈る。
その世界に飛び込むぐらい好きになれたものなんだもの。あなたの影響を受けなくてもきっと好きになっていた。アニメや漫画を愛していた。
そりゃ死にたくはなかったけれど
その道を選んだことをちっとも後悔していない。
アニメや漫画は何も悪くない。そしてあなたのせいじゃない。
好きなことをみつけられてよかったし、あなたと出会えて本当に良かった。
だから嫌いにならないでほしい。
いままでそうだったように、きっとこれから何度も漫画やアニメはあなたを救ってくれるから。
アニメや漫画を愛するすべての仲間たちにむけて、京本は天国からメッセージを送っているのだ
●あの男に向けて
パクったやつらを殺してやりたい。そう考えて大学構内に侵入し、つるはしを振り下ろそうとした男は京本にあった時
「ねえ君……」と呼びかけて「じゃなくてさ、お前」と言い直す。
人の前に立つと弱気になってしまう
女性を前にすると緊張してしまう
そんな人間なのだ
それと似た性格の人はアニメや漫画が好きな人、おたくと呼ばれる人にもたくさんいる。
「見下しやがって」
もしかしたら元々は「俺たちの側の人間」だったんじゃないだろうか
あの男もまたアニメや漫画を愛していた。
もしも同じテーブルについて、とことん話し合うことができれば
止めることができたかもしれない。
36名の尊い命、才能を失わずに済んだのかもしれない
そして、彼の不安や孤独を理解してあげられたのかもしれない。
わかり合えたかもしれない。
そんな「憎しみ」を超えた作り手の
「悲しさ」を
「くやしさ」を
そして「やさしさ」を
私はそのセリフの中に見たのだった。
●藤野は二度立ち上がる
藤野は二度くじけそうになる。
ずっと自分が一番だと思っていたけれども、同級生で自分よりも絵の上手い子、京本がいた。
「京本の絵と並ぶと、藤野の絵って普通だな。」
そんな何気ない同級生の一言は藤野を深く傷つける。
京本に追いつこうと必死になって頑張ったが、それでもかなわないと思った。
その結果、一度彼女は書くことをやめてしまった。
京本が自分のことを認めていることは知り、自信を取り戻す。
彼女は京本のおかげで再び。漫画を描きはじめた。
卒業式の日に初めて京本の家を訪れた帰り道、藤野は雨の降る田んぼ道を傘もささずに走る。
最初は俯き加減だったのが、胸を張り、ついにはスキップをし始める。
雨が激しくなるのもお構いなしに、地面を撫でたり、水溜りの中に飛び込んだりする。
顔は笑っていない。目をつむったままだ。
彼女の心にはいろいろな感情が渦巻いているのだろう。自分が認めていた子から認めてもらえたことや、一度はポッキリと折れてしまった自信を取り戻せたことに対する喜び。
嬉しいことばかりではない。この程度のことで漫画をやめてしまったことへの自己嫌悪や自分への怒りも感じていたのだろう。
二度目の挫折は京本が亡くなった時だ。
自分が部屋から引っ張り出したために京本は殺されてしまった。あのまま部屋から出てこなければ彼女が死ぬことはなかった。
藤野は描けなくなり、体調不良を理由に連載を休載する。
藤野の苦しみはそれだけではない。
ラストシーンの作業場は机が一つ置かれているだけだ。以前のシーンではたくさんの机が並べられていたが、それがなくなっている。前々からアシスタントに対して不満を抱えていていた藤野だったが、結局彼女の周囲にいた人は皆去っていったのだろう。仕事の人間関係においてもうまくいかず、孤独な状態にあったのだ。
(休載したため一時的に別の仕事をしている、ということも考えられるが、だとしたら机は残してあるだろう)
パラレルワールドから京本の四コマ漫画が藤野に届く。
あのとき部屋から出なくても、描くことにたいする情熱はかわらなかつた。
部屋から出してくれたことを恨むどころか感謝している。
京本の思いをしっかりと受け止めた藤野は
再び立ち上がり、漫画を描きはじめるのだった。
●藤野と京本の関係
近年は弱いもの(例えばいじめを受ける側)の視点で描かれることが多いが、この作品では強い藤野の視点で描かれている。
藤野はものの言い方は傲慢ではあるが、京本の努力や才能を素直に認め、終始京本にやさしく京本にとってよかれと思うことだけをし続ける。大学に行きたい、作品の手伝いはできないと京本が言い出した時も反対はするが無理強いや妨害はしない。
藤野にとって京本はいつまでも大切な存在で「藤野キョウ」という二人をあわせたペンネームを一人でプロになっても使い続ける。
●藤野ちゃん、ありがとう
「部屋から出てよかった。本当は今日外に遊びに行くのが怖かったの。私、人が怖くなって学校に行けなくなっちゃったから。でも今日はすごくすごく楽しかった。家で暇でやることがなくて、絵を描いてたけど。描いてて良かったと思えた。」
あまり言いたくないであろう心情を藤野にだけ吐露する京本のセリフは胸に突き刺さる。
「藤野ちゃん部屋から出してくれてありがとう。」
京本が「ありがとう」と告げるカットは、京本ではなく、受ける藤野のアップ。
京本の想いより、それを藤野がどう感じるかの方が重要だと作り手が考えているということ。
●タイトルについて
look backとは「後ろを見る」「過去を振り返る」という意味
漫画家になった作者が修行時代を振り返っているのか。
京本が楽しかった少女時代を振り返っているのか。
だとしたらファーストカットの俯瞰から降りてくるのは京本が天国から見ているということなのか。
印象的な映像表現
【ショック】
京本の存在に大きなショックを受け、「京本の絵と並ぶと、藤野の絵って普通だな」と同級生の何気ない言葉に傷つけられたときのカット。
実際には教室には30人程度の子しかいないのだろうが、現実的でない無数の子どもが教室にいる。カメラはゆっくりとトラックバックしている。
実写ではできないアニメならではの表現。
【藤野の絵って普通だな】
帰り道に思い出しているとき、男の子の背景はゆがんでいる。(ムンクの叫びを連想させる)
次の田んぼ道の現実的なカット。おおきく引いた背景、7割空でしめるカットの右隅に藤野のバストカット。
【四年生で私より画のうまいやつがいるので絶対に許せない。走り出す藤野】
雨の中を走るシーンと対になっている。
ローアングルからフィックスで走り去る藤野の後姿を撮る。
【4コマ漫画の原稿】
藤野が漫画をやめてスケッチブックを片付けるときに原稿がはらりと落ちる。
初めて京本の家を訪れたときに廊下で原稿を拾い、ひきこもり選手権の漫画を描く。それが二人をつなぐきっかけになる。
パラレルワールドで京本が藤野が描いたマンガのスクラップブックを眺めていた時、何も書かれていない原稿が出てきた。京本は「背中を見て」の漫画を描く。それが藤野に届き、彼女は再び描き始める。
【ものたりない】
漫画描くことをやめた藤野が家族とビデオ鑑賞しているシーン。顔は楽しそうだが目の色が抜かれ死んだ魚のような目になっている。
【別れの予感】
最高にうまく行っていた藤野と京本だったが、別々の道を歩むことになる。
・街を走りながらつないでいた手がゆっくりと離れていく。
・京本が本屋で「背景美術の世界」をみつけた次のシーン。藤野と京本が田んぼ道を歩くところでは曇り空で、暗い雲が二人を覆っている。
【藤野先生のファンです】
無表情の藤野。風が強く吹き髪が揺れる。藤野の心が激しく動いたことは確かだろう。うれしいのだろうと想像できる。
「それなのにどうして六年生の途中で四コマ漫画やめちゃったんですか?」
と聞かれてどう答えるだろう。
「賞を考えている。ステップアップするために辞めたっていう感じ?」
と嘘をつく。
嘘を口に出して、それが本当になる。
【高揚】
京本に初めて会った日の帰り道。雨の中田んぼ道を走るシーン。
俯瞰からカメラ降りてきて、そのまま走っていく藤野の後ろを追いかけていく。
彼女の心の昂りに乗っかったように感じられる。
【二人だけの世界】
手をつないで街を闊歩する藤野と京本。なにもかもがうまく行っている。
本人たちだけがカラー。青い藤野とピンクの京本。対照的な強い色。
すれ違うほかの人たちは落とした色。
手をつないで走るモンタージュ・シークエンスは二回出てくるが、二度目の背景は金色に輝く田園。現実的な色で輝いている。
京本はそれまで藤野が唯一のよりどころだったが、現実の世界に興味を持ち始めたということだろうか。
二人の手は離れ、「背景美術の世界」という本に出会い、京本は美大に行きたいと告げるシーンにつながる。
【ショック】
・藤野が母親から京本が被害にあったことを知らされた時の電話。
着信音が他の音よりも大きい。あきらかに強調されている。
・後ろから藤野を表情を映さず、フォーカスをぼかしたり、あわせたりを繰り返す。
手持ちで画面が揺れるようにして人物の動揺を表現することはよく見るが、フォーカスはあまりないかも。
【構成 モンタージュ・シークエンスの多用】
【自分より画の上手な子がいて嫉妬する】
◎自分が一番絵がうまいと思っていた
◎自分より絵のうまい子の存在を知って嫉妬する
◎〘モンタージュシークエンス〙「絵のうまくなり方」を検索し道具をそろえ努力する藤野。
「とにかく描け。ばか」はおかしい。画で生活しているたくさんの人から似たようなことを聞いたことがある。
季節の移り変わりから二年が過ぎた。
◎藤野は京本にかなわない思って漫画をやめる
◎〘モンタージュシークエンス〙友達とアイスを食べ、家族と映画を見て、空手道場に通う。スケッチブックを捨てる。普通の女の子になった藤野。
【藤野と京本の距離が縮まる】
◎京本が自分を認めてくれていることを知る。親しくなる。漫画への情熱を取り戻す
◎〘モンタージュシークエンス〙共作をはじめ、ひたすら漫画を描く藤野と京本。編集者に認められる。
◎〘モンタージュシークエンス〙 街を闊歩する藤野と京本。
◎京本は自分の力で行きたいと願うようになる
◎〘モンタージュシークエンス〙楽しそうに絵を描いたり、海や水族館を訪れる二人だが、最後のカットで二人のつないでいた手が離れる。
【ふたりは別々の道を歩む。藤野は漫画家になり、京本は死ぬ】
◎京本は藤野と離れて美大に進むことを選択する
◎〘モンタージュシークエンス〙 漫画家になった藤野売れっ子になっていく。
◎京本が通り魔によって亡くなる
【もしもの世界 やはり美大に進んでいた京本】
◎パラレル・ワールド 京本を漫画に誘わなかった場合の世界。京本は美大に入り、藤野は空手を頑張った。漫画家にはならなかった
◎〘モンタージュシークエンス〙 美大の京本
◎侵入してきた男に襲われそうになるが藤野に助けられる。
◎〘モンタージュシークエンス〙 京本漫画のコマ割りっぽく複数のカットを重ねた映像。
藤野のマンガを思い出し、自分でも描いてみる。その原稿が風に飛ばされる。
【立ち上がる藤野】
◎パラレルワールドから京本の想いが失意の藤野に届いた
◎〘モンタージュシークエンス〙藤野と京本の思い出。このシークエンスは静止画。
◎再び立ち上がる藤野
詳細研究
【自分が一番絵がうまいと思っていた】
●空から町へ降りてくる。
一件の家。部屋に。降りてくるカメラ。
●机の上で悩んでいる。藤野。
手元の鏡の映る顔
貧乏ゆすり→大人になってからもする
タイトル「ルックバック」
→「後ろを見る」「過去を振り返る」という意味
漫画家になった作者が修行時代を振り返っているのか。
京本が楽しかった少女時代を振り返っているのか。だとしたらファーストカットの俯瞰から降りてくるのは京本が天国から見ているということなのか。
漫画を描いている。ネタ帳が近くにある。
四コマ漫画にズームイン。
●漫画の中の世界
車を走らせている。
「よく覚えてるねそんな話」「日記書いてるもん。」
トラックに衝突して。ガードレールにぶつかる。事故で死ぬ直前。
生まれ変わっても私にキスをしてね。
17年、20年後生まれ変わった。あなたはどこに居るの?と探す。
俯瞰。どんどん。遠ざかってゆく。日本。地球。隕石が近付いてくる。
地球にぶつかるホワイトアウト。
●学校新聞。
教室で配られる。児童たち笑っている。
児童たち笑っている。
忙しかったから5分で書いたけれど、まあまあの出来。
→本当は苦労して描いた
漫画家になったら。
漫画家はずっと座って絵をかいてなきゃいけないからつまらない。
藤野は運動も得意
サインくれまあいいけど。
【自分より絵のうまい子の存在を知って嫉妬する】
●職員室に呼ばれる。一枠だけ京本に譲ってほしい。隣の組の不登校の子。漫画を描いてみたいって。
私は別にいいですけれど。素人にかけますか?学校にも来れないような軟弱ものに。漫画なんて描けるんですか。
→藤野は傲慢な言い方をするがなぜか嫌な子、という印象はそれほど受けない。なぜか
→(のちのシーン出てくるが)彼女には才能があり相応の努力をしていることを観客は知っているから。
→京本のことを認め、内心では嬉しがっていることがわかる(雨のシーンなど)
学校新聞配られる。びっくりする。「放課後の学校」京本の絵。
校庭の寂しい様子。あまりのうまさにびっくりする。
背景の色が紫にかわる
●自分の漫画と並んでいる。
「あー」驚愕の表情する自分。
同級生たち「この画見た?」「めっちゃうまいね。」
「京本の絵と並ぶと、藤野の絵って普通だな。」
→何気ない一言が傷つけている
すごくたくさんの生徒。
映像表現。ものすごくたくさんの生徒。
●田んぼ道を歩く藤野とのカットバック。
●大人たちが京本の絵を褒める。おばあちゃん、叔父さん、お母さん。
「藤野の絵って普通だな」あの言葉が心に残ってる。
●トラクター。
●私が学校に行っている間に絵の練習をしているんだ。ランドセルを持つ。走り出す。
四年生で私より画のうまいやつがいるので絶対に許せない。走り出す藤野。
→雨の中を走るシーンと対になっている。ローアングルからフィックスで走り去る藤野の後姿を撮る。
【モンタージュ・シークエンス】(動画)
●サーチエンジン「絵のうまくなり方」を検索
●本屋に行き、文房具を買う。ペンやスケッチブックを買う。
●骸骨の絵を模写する。
●人の絵腕とか顔とか体とか。必死になって書く。眠っている?
夕方夜昼間が力アップへの近道。「とにかく描け。ばか」
●学校。絵を書く。●学校でも書いている。●図書館で絵を描いている。●みんながテレビを見ているときに描いている。●公園で海を見ながら絵を描く。●本棚には絵の本がどんどん増えていく。●スケッチブックや絵がどんどんたまっていく。●夏。秋冬いつも描いている●スケッチブックつまれて行く●本棚本増えてゆく●スケッチ自分の描いた絵もどんどん増えていく●街の風景●山は夏。秋冬春二年が過ぎたということかな?
●教室で一人で絵を描いている藤野。
同級生「藤野ちゃん何を書いているの?」無視する藤野。
人の骨格。
私たちも六年生で、来年は中学生で中学でも絵を書くの?
え?
もうそろそろ絵を書くの卒業した方がいいよ。
藤野ちゃん、私たちと全然あそんでくれなくなっちゃった。中学になっても絵を描いてたらオタクだと思われてキモがられちゃう。
「今いく待って」「お邪魔しちゃだめだよ」「藤野さん、絵を描いている。」
→嫌われなくてよかったね
●夜家。
●「早く風呂入れ」部屋に入る時はノックしてお姉ちゃん
あんたいつまで漫画書いてんの?
私の空手教室来なよ。
→パラレル もう一つの人生。
心配している。ずっと部屋にこもっている。テスト全然ダメ。
ドアの閉まる音。
●教室。学年新聞を配る。親に見せとけよ。
夏祭り。京本の絵と藤野絵が並んでいる。
見ている目のアップ。
藤野「やめた。」
急にやる気がなくなってしまう。
→才能の限界を感じた
今日帰りアイスを食べに行かない?
藤野ちゃんと遊ぶの久しぶりだ。
【モンタージュ・シークエンス】(動画)
●友達とアイスを食べる。
●空手教室に通う。
●家族と映画を見る。
●シャワーを浴びる。
●スケッチブック。持ち上げてどこかに捨てておいて。
原稿用紙が落ちる
●卒業「みんなさようなら」黒板に書かれた。
【京本と親しくなる。漫画への情熱を取り戻す】
●職員室。卒業おめでとう卒業証書を京本に届けてくれないか?なんでですか?
京本の家に。卒業証書届けるように言われる。
ふつうに嫌ですけど。
●京本の家。ドアチャイム。
鍵は開いている。
すみません。
ここに置いておきますよ。いるんじゃない?
卒業の証を届けにきました。
廊下、山積みになったスケッチブック。ドアの向こうに京本がいる。
ゆっくりと歩いてゆく藤野。
壁で漫画を書く。
●二組のグループが争っている。出て来るな、出てこい。引きこもり世界大会決勝現在首位は京本選手です。
四コマ目は骸骨になった京本。
できたにっこりする藤野、何してるんだ私?
原稿が風に飛ばされて部屋の中に入ってしまう。
卒業証書ここに置いておきます。失礼しました。
●出てゆく。
入って来るときとカメラ位置が対になっている。→出入口のローアングル、玄関の俯瞰などカメラ位置が同じ
●走り出す京本。京本の視点、部屋から出てゆく。
→視点が藤野から京本に代わる
扉をあけた向う側は強烈な光
「藤野先生」と話しかける。どてらを来た京本、後ろから話しかける。
立ち止まる藤野ゆっくりと振り返る。
京本。毎週プリントを三年生の頃から藤野先生の漫画見てました。
私、藤野先生のファンです。サインください。風で揺れる。
背中の服にサインください。
いいけど。
好きな漫画は何、何が好きです。どの漫画が好きで、五年生頃からどんどん上手くなっていて、六年生は全部神回でした。藤野先生漫画の天才です。それなのにどうして六年生の途中で四コマ漫画やめちゃったんですか?
賞を考えている。ステップアップするために辞めたっていう感じ?
見たい見たい。すごいです、それ?
まだ。頭の中にしかないけれど、頭の中では完成している。
話ができたら見せてあげてもいいよ。
雨が降ってきたら帰ろう。またね。
→これも成功する人の話なんだなと思った
→冷めかけていた漫画への情熱が再び盛り上がる
→嫌になることが何度もある
●京本「またね」ため口になる
遠ざかる藤野。京本いつまでも手を振る。
●雨の中を歩く最初は前掲。姿勢まっすぐ。スキップをする。
カメラ、空から俯瞰で降りてきて藤野の後姿をとらえる。藤野の心がうきうきしているのだと思う。
水たまり、田んぼ道スキップしながら歩く。弾む息。目をつぶりながら。床。地面をなでる。水たまりを踏む。雨の中。
顔は目をつぶりゆがんでいる。完全な喜びじゃない。やめてしまった引け目というものもあるんだろう。複雑な顔をしている顔は歪んでいる心から喜んでいるわけではない。興奮している?
→複雑な思いが交錯している。
→自分が認めている相手から認めてもらえたうれしさ
→漫画をやめてしまった自分への自己嫌悪や自分対する怒り。
●家
廊下は水で濡れている。濡れたランドセルが落ちている
机に向かって絵を描いている藤野。
かえって机に直行しすぐに描き始めた。
【中学生になった。藤野と京本は親しくなり共作で漫画を描くようになった】
●セーラー服を着た藤野、絵を描いている。
●廊下をすたすた歩く
●田んぼ道。
●部屋の中に入ってくる。
●部屋の中で京本が絵を描いて。
全然。完成する気しないですね。ずっと書いてる。京本が背景を描いている。
【モンタージュ・シークエンス】(動画)
来る日も来る日も2人は絵を描いている。
●セーラー服。●学校で絵を描いて。●一人で絵を描いている。●来る日も来る日も、2人は部屋で絵を描いている。●誰もいなくなった部屋。
●都会。
●編集部中学生でこれ書いたの。びっくりした
一年かかりました。背景は全部この子。中学生で漫画を完成させること自体がすごい。話もレベル高い最低でも佳作はいくよこれは。
●雪の中を走る2人。
バストショットから始まったので雪山で遭難したようにも見える。
コンクールの結果発表はそれぐらい人生を左右する一大事ということか?
●コンビニ。
雑誌売り場。2人緊張しながら少年ジャンプを開く。
あー。結果発表。「メタルパレード」藤野キョウ13歳が入選している。
万歳して肩をたたき合って喜ぶ。
●お母さんと通帳を作った。10万円下ろしてきちゃった。
おうちかえちゃうよ。
明日街に遊びに行こう。私がおごってあげる。貯金しなくていいの。稼げばいいよ。
この金でじゃんじゃん生クリームを食べに行こうぜ。
●家、夜情景カット。
【モンタージュ・シークエンス】(動画)
●町。●手をつないで歩く2人。●クレープクレープを食べている●映画を見ている。●ハンバーガーを食べる。
●手をつないで歩く●本人たちだけはカラー。ほかの人たちは落とした色。青い藤野と京本はピンク
●ガラガラの電車の中。今日はごちそうさまでした。
じゃんじゃん使ったのに5000円しか使わなかったな。
→中学生の金銭感覚
部屋から出てよかった。本当は今日外に遊びに行くのが怖かったの。私、人が怖くなって学校に行けなくなっちゃったから。でも今日はすごくすごく楽しかった。家で暇でやることがなくて、絵を描いてたけど。描いてて良かったって思えた。
藤野ちゃん部屋から出してくれてありがとう。
京本が「ありがとう」と告げるカットは、京本ではなく、受ける藤野のアップ。
京本の想いより、それを藤野がどう感じているかの方が重要だと作り手が考えているということ。
お礼は十万で。嘘。
●電車、二両編成。
【モンタージュ・シークエンス】(動画)
●漫画を描いている2人。
●海手をつないで歩く。
●海のある町。●公園で走り回り、●蝉の絵を書く。●窓から2人で外を見る。●水族館。●手をつなぐ。●金色の田園風景●青い藤野が前に立って京本の手を引く。後についてゆく
●京本手が離れる。2人の手が離れる。
→二人の別れの予感
【京本は自分で生きたいと思うようになり、藤野と別れて美大に進むことを選択する】
●本屋で。ひとり立ち読みをしている京本。
写真集を見ている「背景美術の世界」という本を見て目を輝かせている。
●田んぼ道、二人曇り空の暗い道を歩く。
→二人の関係に暗雲ということか?
●喫茶店。連載の話。編集者から。
京本ちょっと浮かない顔
フジのは嬉しそうな顔。
オレンジ、ジュース。
●夕方、田んぼ。地面から天に向かって京本。雲一つない夕暮れの空。
私、美術大学行きたいから、連載手伝えない。
何それ?まあいいんじゃない?京本描いてるの背景だけだし、それはアシスタントさんに任せればいいわけだし。
美大なんて行っても意味ないよ。就職なんて全然ないらしいし。知らない人と話す事になるんだよ。
それは頑張るよ。
私についてくれば全部うまくいくんだよ。
私、藤野ちゃんに頼らないで、ひとりの力で生きてみたいの。
そんなのつまんないよ。絶対つまんない。あんたが一人で大学生活できるわけないじゃん、できるようにする。コンビニのレジの人だって恥ずかしくて話せないじゃん。絶対無理。
刈り入れの終わった秋の田んぼ。
涙を流す京本。
私もっと絵が上手くなりたいもん。
【モンタージュ・シークエンス 漫画家になった藤野】(動画)
●一人で絵を描く藤野。●編集者と話をする。●連載雑誌。●売上の棒グラフ●漫画を書く。●売上のグラフ●単行本二巻●売上の棒グラフ伸びる●パソコンを前。●編集者と電話●シャーク機器三巻が出る●パソコン●絵を書く藤野食べながら。●「わー」と口を開けながら感情をこめて●寝てしまう藤野●トイレ●書いてる頭を抱えながら。眠気と戦いながら書く。
●雪のマンション。
●漫画棒グラフ●アニメ化決定●マンション
●暗い部屋。
さすがに厳しい。他に誰かいませんか?
貧乏ゆすりをしながら。→最初のシーンでもしている
アシスタントを増やして行かないと。
彼女は手が早いんですが、もうちょっと考えて書いてほしいって言うか、うまい方はなかなか捕まらないのはわかってるんですが。
テレビのニュース。できるだけやるしかないですね。
アシスタントが不満らしい。
また相談させてくださいはい、失礼します。ため息。
【京本が通り魔によって亡くなる】
●無差別に襲撃した可能性がある、という声。
テレビのニュース。
山形市の美術大学の構内にて、住所不定の男が斧のようなもので学生らを斬りつける時間が発生しました。
犯人は拘束した。
けが人の情報はまだ分かっていない。
慌ててスマホを取る。京本に電話をする。
出ない。
お母さんから電話がある。
画面揺れる。
映像表現
少しフォーカスがあったり合わなかったりしながら、後ろ姿に揺れる。
●(回想)雪の道を走る。
連載についての話。こういうものを作りたい。
私も早くかけたらいいのに。
画力が上がればスピードも上がるよ。
私ももっと画力上がる予定だし。藤野ちゃんみたいに。
今日も私の背中見て成長するな。
●スマホを落とす真っ赤な顔になる。
●記事、テレビや新聞記事。ネットに公開したものをパクられた。
●シャークキック休載のお知らせ。
●祭壇。京本の写真。葬儀の会場。
●部屋の外。ドアの前に立つ女性。
ノブに手をおこうとしておろす。藤野。
京本の部屋。積まれたスケッチブック。
少年ジャンプ。
手に取る。ページをめくる。
「ああ」ページをめくながら。口を開ける。
挟まれていた四コマ漫画。初めてここに来た時に描いたもの。引きこもり選手権。
出てこい。出てくるな。
目のアップ。落とす本。
私のせいだ。私が漫画描いたせいで。
京本が死んだのは私のせいじゃん。
●回想シーン
初めて京本の顔を見た時、私が部屋から出さなかったら、京本は死なずに済んだ。
街を歩く2人
なんでこんな絵を描いたんだろう?
●現在に戻る
目から涙が溢れる。
なんの役にも立たないのに。
涙が溢れる漫画を引きちぎる。
宙に舞う漫画の破片の一コマが部屋の中に入ってゆく。
【パラレル 京本を漫画に誘わなかった場合の世界。京本は美大に入り、藤野は空手を頑張った。漫画家にはならなかった】
→このパラレルワールドに何の意味があるのだろう。
→シークエンスの最後に京本からのメッセージ
●藤野のマンガが一コマだけ京本の部屋の中に入る。
もう一つの人生が始まる。
卒業証書届けに来たんですけど。
京本、震える。息をひそめる。
結局外に出て行かなかった。絵を描き続ける京本
【モンタージュ・シークエンス 美大の京本】(動画)
●「背景美術の世界」をみつける●美術大学、油絵を書いている。●京本絵を描く。●ヌードモデル●油絵●等身大●大きな絵を描いている。
●2階のロビー。ソファーに座っている。
歩いてくる男の足。
金属の音
ここで字幕が出る。ソファーの近くにほかの学生はいなかった。
11時19分、男が侵入。女子学生と接触する。
ツルハシのようなものを持っている。
ねえ君じゃなくて、お前。この展示会で俺のに似たのあっただろ?俺のネットにあげたのパクっただろう。
振り下ろす。逃げる京本。息をする激しく。
ツルハシを振り下ろす。「見下しやがって」俺のアイディアだったのに。
走ってくる足。男を蹴り飛ばす。
藤野が男に鉄拳を振り下ろす。
●救急車。
藤野の証言「武器持った男が入っていって。やばいと思って中に入って行って、男を倒した。こけちゃって足を折ってしまったダサいですよね」
改めて。お礼言いたいので、電話番号教えてください。
いいよ。
藤野の名前を見て反応する。
藤野先生ですか小学校のころ四コマ漫画描いてませんでしたか。
描いてた。四コマのファンでした。
なんかすごい偶然だねありがとう。そろそろ行くよ。
なんで描かなくなっちゃったんですか?
ピースサイン。最近また描き始めたよ。連載決まったらアシスタントになってね。
風に吹かれる。
藤野の顔、後部ドア閉まる
車体にうつる京本。
●救急車のサイレン。
見送る京本。
【モンタージュ・シークエンス 京本】(動画)
●画面がいくつも。漫画のコマを表してるのか。
●風が揺れる。
●スクラップブック、四コマ漫画を見ている。藤野の作品を取ってある。見返して笑う。
空白の原稿が出てくる。描く
風が吹く。描いた漫画が飛んでゆく。
ドアの外に出て行く。
【パラレルワールドから京本の想いが藤野に届いた】
●現代
膝を抱えている藤野。中から京本の描いたマンガが出てくる。驚く。
斬ってやる。女が男を倒す。藤野先生じゃないですか?
怪我は無いかね。それじゃあ私はこれで。背中につるはしが刺さっている。
背中を見て、京本。
●ドアノブ手を取る。扉を開く。中は暗い?
風が吹いて髪が揺れる。
カーテンが揺れている。
鳩時計
漫画シャークキック全巻揃っている。
少年ジャンプアンケート。
藤野歩とサイン入りのドテラが飾ってある
●回想シーン。
だいたい漫画描くの好きじゃないんだよね。楽しくないし、面倒くさいだし、超地味だし。一日中ずっと描いても全然完成しないんだよ。読むだけにしておいたほうがいいよ。描くもんじゃないよ。
●机に向って絵を描いてる
じゃあ何故藤野ちゃんは絵を描いているの
【モンタージュ・シークエンス】(静止画)
●絵を描いている藤の
●寝ている藤野
●風呂に入る
●図書室で何か調べている
●机にむかってを描いている
●俯瞰から絵を描いている
●昼間絵を描いている
●メタルパレード原稿を京本に渡す
●京本読む。
●アップ前傾姿勢前のめりになって見ている
●2人に何か話をしている
●話をしながら
●2人で絵を書く
●祭り
●色を塗る
●顔に何か塗る?笑う
●真面目な顔で話している
●2人絵を描いている
●絵を描いている
●何か手を合わせてお願いしている。
●消しゴムで消している
●何か渡す何か言いながらやり直すっていう感じかな
●扇風機、絵を描いている
●皿にスパゲッティ
●カレンダーに予定を書いている
●セーラー服、果物を食べている
●並んでを描いている
●眠っている藤野、上着をかけてやる
●2人
●こたつで寝ている。並んで
●絵を描いている
●出来上がった原稿2人眠っている
●寝転んで原稿を見ているティッシュを差し出している
●食べながら見ている京本
●2人じゃれている
ここまで静止画
●原稿を読んで顔を見せて笑う京本
このカットは動画
→「なんのために描いているの」のアンサーか。京本の喜ぶ顔が好きだったから
●涙流している藤野
シャーク様の出番だぜ。この続きは12巻へ
本を読みながら泣いている藤野。深呼吸。
部屋。藤野歩のどてら
息を吸う。
→オラオラキャラの娘が不登校の子に強い愛を抱いているところが感動するのか?
●雪道を歩く藤野。
カメラパンしながらゆっくりとアップ。空には小さく三日月が見える。
●窓にテープで貼る。四コマ漫画。
→京本の思いをしっかりと受け止めた。描き続けるという決意。
パソコンに向かう絵を書く。ペンを走らせる。
四コマ漫画、風に揺れている。京本の描いた漫画かな?
クレジット
ひとりの部屋。漫画を描き続ける藤野。
大きな窓から都会のビル群が見える。朝、昼、徐々に暗くなって夜になる。
部屋から出ていく藤野の後ろ姿が窓に映る。
→以前のシーンではパソコンが並べられた机が並べられていたが、ラストシーンは机は一つしかない。
アシスタントはみんな去っていき藤野は孤独になったということか。