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北京大学人口学研究所サマーキャンプ!?_第7回「京港澳台」人口高齢化サマーキャンプ

どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。
現在はオックスフォード大学のOxford Institute of Population Ageingにて訪問学生として学んでいます。


この記事では、2024年7月に参加した北京大学人口学研究所が実施する『第7回「京港澳台」人口高齢化サマーキャンプ』について執筆しています。私が現在オックスフォードに来ているプログラムも、北京大学人口学研究所が実施しているプログラムになります。


この記事の対象者は
・中国の学生の夏休みの過ごし方を知りたい人
・中国人の実施するプログラムを知りたい人
・高齢者問題に興味がある人

です。




応募

僕がこのプログラムを知ったのは、人口学研究所で勤務しているポスドクの投稿です。自分は人口学をメインに研究しているのですが、どちらかというと少子化問題に重点を置いていたため、高齢者問題がそこまで得意ではありませんでした。ただ、オックスフォード大学で高齢者問題の研究をすることが決まっていたため、事前に勉強しておこうと思ったので応募しました。


なお、エントリーシートはこんな感じです。名前や性別、学部、生年月日などを書く必要があります。日本だと珍しいのが、「政治面貌」「民族」といった項目があることですね(笑)
※政治面貌には、共産党員、共産党青年団、群衆などといった政治的な属性を記入します。


あとは、経歴や参加理由をそれぞれ500字と300字で書く必要があります。自分で書いた後に、こういうのを書くのが得意な中国人の友人にいい感じにしてもらいました。


なお、参加理由としては、
・異なる地域の高齢化問題を学びたい
・系統立てて高齢者問題を勉強したい
・オックスフォード大学に行く準備がしたい

みたいなことを書いていました。


僕がこのサマーキャンプを知るきっかけになった投稿をしたポスドクの先輩に参加したい旨を伝えると、「じゃあ、応募したら教えて。担当に話しておくから」みたいなことを言われました。


そのおかげかわかりませんが、無事僕はこのサマーキャンプに参加することが出来ました!!!


ちなみになのですが、参加者は
・京(北京)
・港(香港)
・澳(マカオ)
・台(台湾)

の学生をそれぞれ20人ずつ集めています。


なお、京は本来ならば北京のことなのですが、実際は中国大陸全土から学生を集めています。なので、相対的に選抜が厳しいはずです。また、香港やマカオの大学からも多く来ているのですが、出身を聞くと、中国大陸の子が多かったです。



サマーキャンプ概略

サマーキャンプが始まる前日くらいに以下の冊子が配られました。ここに2週間の日程や講義、グループワークの班分けなどが載っています。結構しっかりしています。


なお、サマーキャンプ全体として以下の内容が準備されています。

・開幕式および開講式
・海外著名人による講演(全4回)
・大陸・台湾および香港・マカオ地域専門講演 (全7回)
・高齢者健康問題博士の学生フォーラム
・大陸・台湾両岸および香港・マカオ地域福祉技術報告会 (全3回)
・若者と高齢者の対話(全4回)
・高齢介護トーク(全4回)
・中国老年学・老年医学協会ボランティアおよび公益活動分科会 年次フォーラムおよび時間銀行と地域社会ガバナンス対話
・機構訪問(全3回)
・体験活動(全4回)
・歴史文化体験(全2回)
・グループ成果発表(中間・最終)
・表彰式および閉幕式
・高齢者健康と敬老文化実践


このようにてんこ盛りです!!
なお、全部のイベントに必ず参加しなければならないというわけではなく、自分の興味のないイベントは一定回数までなら休んでいいということになっています。


名目上、それ以上休んでしまうと、修了証書がもらえません。なお、その出席は8つのグループ毎に班長が点呼を取るのですが、どこのグループもどうやら適当見たいです(笑)


イベントに6人しか参加していないのに8つのグループのすべての班長が「全員出席」ということを主張しており、運営側が困り果てたという珍事が発生していました(笑)




サマーキャンプ詳細

それではいよいよサマーキャンプで何をしたのかについて執筆していきます。



講義

まず、以下のイベントはすべて講義形式です。

・海外著名人による講演
 -老年学研究の最前線
 -Stay Younger and Stay Healthy

 -マカオ乳癌調査

・大陸・台湾および香港・マカオ地域専門講演
 -中国3層における長期介護サービス体系構築のための社会政策の発展
 -積極的に高齢社会に取り組むための国家戦略の政策と実践

・大陸・台湾両岸および香港・マカオ地域福祉技術報告会
 -補助技術を増やし、国民の健康福祉を向上させる
 -デジタルの課題を乗り越え、高齢者がテクノロジーに親しめるような時代へ

・若者と高齢者の対話
 -積極的心理学の実践と応用/バリアフリー建設のための個人の実践と市場分析
 -スポーツと外に出ることを通して、障害を乗り越え、無くしていく。


・高齢介護トーク
 -シルバー経済に関する若干の思考
 -高齢社会の挑戦に積極的に取り組む

「・」がトピック
「-」が具体的な講義内容


おおよそこういった内容の講義を受けていました。こうやって書き出してみると、結構多いのですが、それでも全体の半分くらいです。やはり2週間のサマーキャンプは長いですね。


基本的には学術的な内容が多めなのですが、個人的に面白かったのが、「デジタルの課題を乗り越え、高齢者がテクノロジーに親しめるような時代へ」の講演でした。

プレゼンターの人は、携帯の修理を生業にしているのですが、インフルエンサーでもあります。高齢者の人に携帯の使い方を教えてあげる動画をTikTokにupしていて、それがバズっているそうです。すごく現場からの視線で高齢社会について話していたのが印象的でした。



また、先生の講義以外にも「高齢者健康問題博士の学生フォーラム」という学会にも参加しました。サマーキャンプの3,4日目に北京大学人口学研究所が主催する学会があったので、僕たちサマーキャンプの参加者も全員参加しました。個人的に一番いいなと思った発表をした学生がやはり最優秀賞を取っていました。

最優秀賞を取った学生です。




機構訪問

ここでは高齢者問題に関するさまざまな場所に訪問しました。まず最初に訪れたのが「楽成養老半壁恭和苑」です。ここは超高級老人ホームで1か月3万5千元(約70万円)だそうです。


どういった理念で運営しているのかについてプレゼンを最初に受けました。


なお、下記の画像のように素晴らしい環境で悠々自適に暮らせます。



また、ピアノやバイオリン、合唱、バレエなどのコースを受けることもできます。なお、合唱の先生はロシア国立師範大学で博士号を取った人でした。



ここの老人ホームに通う人は近くのマンションを購入している人が多いそうなのですが、ものすごく環境が良かったです。


僕もこんな老人ホームに住みたいなと思いました。



次に、北京大学のすぐ横にある「北京大学燕園街道全国介護モデル地区」を訪れました。ここは北京大学で勤務していた人ならば、教授や教員でなくとも食堂のおばちゃんや掃除のおじちゃんでも通えるそうです。


みな北京大学に勤務していた人たちなので、雰囲気が良く過ごしやすいそうです。






最後に訪れたのが、「障碍者補助器具センター」と「中国盲文図書館」です。この二つは同じビルの中にあります。


脚が悪くなった高齢者のための多種多様な車いすがたくさん展示されていました。本当に色々なタイプの車いすがありました。


また、盲文図書館では点字で読める本が飾られていました。なんと、ロシア語の本もありました。


このように多くの機構を訪れて、目で見て、手で触って学べる機会も用意されていました。





体験活動

体験活動としては、「高齢者生命体験」というアクティビティが用意されてました。なにをするかというと、身体に重りを載せたり、目が見えにくくなる眼鏡を掛けたり、耳が聞こえにくくなるヘッドホンをしたりして、能力や知覚が制限された状態で色々なことをやってみました。




歴史文化体験

これは単なる観光です(笑)



最初の週に頤和園に行きました。



次の週には天壇に行きました。


他の参加メンバーと仲を深められる良い機会となりました。



高齢者健康と敬老文化実践

最終日に「修徳谷」という場所に行って、敬老文化を学ぼうという名目の下、よい匂いのする「草包」というものを作ったり、太極拳のような運動を行ったりしました。



ちなみに、ご飯はビーガンフードでした、、、

部屋もきれいで暮らしやすい空間だったのですが、このあたり一帯で大雨警報が出たため、ここに泊まることが出来なくなったので、僕たちは別のホテルを取ってそこに泊まりました。


このようなアクティビティを修了した後は、修了証書をもらうことが出来ます。中国人学生はボランティアやサマーキャンプに多く参加したら、奨学金がもらいやすくなったりするそうです。




感想

以上が今回僕が参加したサマーキャンプの内容になります。それでは総括として簡単に、今回のサマーキャンプに参加した感想を書いていきます。


何よりもまず、高齢者問題に関する最新の研究や理論について学べたのが良かったと思います。冒頭でも述べましたが、授業や研究室でよく話は聞いていたのですが、僕は少子化問題をメインに研究していたので、高齢者問題に関する知識は断片的なものでした。今回のサマーキャンプを通じて、バラバラだった点と点がつながったイメージです。


今回オックスフォード大学で国際会議に参加しても感じたのですが、高齢者問題は本当に色々な視点から研究されています。人口学の分野で多いのが、統計データを使って、高齢者の主観的幸福度や健康状態に影響を与える要素を見つけ出すと手法がメインでもちいられています。しかし、医学の観点から高齢者によくある病気を遅らせる薬を開発したり、エンジニアリングの観点から、高齢者が転んだときに障害が残らないようなプロテクターを開発するといったことも考えられます。このような多種多様なアプローチについて学べたのも収穫でした。


そして、同じ分野を学んでいる友人がたくさんできました。今でもたまに連絡を取っている学生もいます。また、人口学研究所の学生にも知り合えたので、今後の学術交流や情報交換にもプラスに働くことが期待されます。


一方、よくなかった点としては、いくら何でも詰め込みすぎなことです。それこそ朝の9時から夜の9時までイベントがあって、日によっては90分の講義が5つある日などもありました。さすがに消化しきれません。


あとはグループビルティングなども少し不十分なように感じました。二週目の木曜日にグループワークがあるのですが、特に自己紹介の時間なども設けられず各々が勝手に集まってグループワークをしていたという感じです。そうではなく、アイスブレイキングの時間があったらなと思いました。
※僕はちょうどその日に雄安で中国人口学会2024があったのでグループワークには参加できていません(-_-;)


住居環境もそこまで良くはなかったと聞いています。僕は自分の寮から通ったので特に問題はなかったのですが、他の参加者は4人1部屋だったそうです。また、北京大学のキャンパスからも4キロくらい離れています。



とはいえ、このサマーキャンプは今回で7回目ということもあり、比較的良く設計されてたとは思います。しかも、全学生に2週間で200元(約4000円)分の食堂での食事券を渡してくれたり、できる限りのことはしていたような印象を受けます。


ただ、僕はこの翌月に香港の財団が主催するAsian Future Leadershipというサマーキャンプに参加したのですが、それに比べるとかなり見劣りするかなという感じでした。というのも、香港の財団はこのサマーキャンプが実施し、アジアで活躍する人材を輩出することをコアバリューとしているので比べるのは少し酷ではありますが、、、




ということで、本記事は以上となります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


香港の財団である百賢(BaiXian)が実施したサマーキャンプについて興味のある方は下記記事をご覧ください。


下記のマガジンでは、北京大学での日々について書いています。


また、下記のマガジンでは人口学について執筆しています。


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