庭の番人「たいらさん」
私は高尾キャンパスの山林や庭に出て、樹木や草木の手入れをしています。
5月という時期は自然の生き物が急速に成長していく季節です。
3月、4月に芽吹いた命が日々大きく育ちます。
新しい梢が弱々しくもしなやかに伸び、若葉を広げて太陽の光をより多く浴びようとし、その色を逞しく変化させていき、いつの間にか立派な大人の葉になって驚きます。
短い間でも私たちの目を楽しませてくれる花々も次々に咲き、風に香りを与えてくれました。土の中でも新しい根がどんどん分岐し広がっています。
この根は土中の栄養を含んだ水分を吸収し、幹から枝々に分かれ、若葉に運び、細胞ひとつひとつにエネルギーの元を与えていきます。すべての木々や草などの成長と共に小さな虫たちも活発に動き出し、小鳥たちも慌しく恋のさえずりやら縄張りの主張やらをしています。水辺ではカエルの声も賑やかです。
自然の美しくも激しく感じるハーモニーは人間の精神に豊かな刺激を与えてくれます。自然の生き物は私たちに語っているように思います。
変化を恐れてはいけないよ、生きることは素晴らしいことなんだ。
何があっても成長し続けようと。
草むしりの手を休めて、周囲を眺めながらふと思いました。
斉藤 平 筆(2012年6月号より)