ライバルの存在は自分を大きく飛躍させる。J1で16年ぶりの「東京ダービー」。劣勢のFC東京が終盤に追いつき、東京Vとドロー
ライバルの存在は自分を大きく飛躍させる。そう思わせるゲーム内容だった。J1で16年ぶりに行われた「東京ダービー」。FC東京は0-2とリードされた上に、退場者を出す劣勢に立たされたが、後半に怒涛の追い上げを見せて、ドローに持ち込んだ。ライバルの東京ヴェルディ相手に負けられない。その思いが力となって生んだ同点劇だった。
首都決戦が16年ぶりに帰ってきた。名門の東京ヴェルディが長くJ2生活を送ってきたが、今季16季ぶりにJ1へ復帰。久しぶりの東京対決。13日に味の素スタジアムで行われたビッグゲームには3万1746人が訪れた。
歴史上の巌流島の戦いに例えるならば、FC東京は長く待たされた佐々木小次郎、東京Vは待たせる側の宮本武蔵となるのだろう。
そして、歴史をなぞるように、「武蔵」ヴェルディが勝つはずだった。前半28分にMF見木友哉選手がPKを決めて先取点を挙げる。そして33分には、右からのクロスをFW染野唯月選手が鮮やかなボレーシュートを決めて2-0とリードした。
さらにFC東京は前半終了間際に、イエローカードが2枚出て退場者が出る展開に。この時点で、「武蔵」ヴェルディに軍配となっておかしくなかった。
これまでの東京ダービーでは、どちらが勝つにしても2点差以上つくことはなかった。常に接戦で決着がついた。
2点をリードされた上に、退場者も出て10人で戦うこととなったFC「小次郎」。敗色濃厚の土俵際に立たされた。
しかし令和の「巌流島の戦い」は、ここから意外な展開を見せる。流れを変えたのは後半から途中出場したFC東京のFW遠藤渓太選手だった。
後半16分にピッチに立つと、7分後に1点差に詰め寄るゴールを決めた。DF白井康介選手がドリブルで深く攻め込み、中央へパス。このボールを遠藤選手が右足でゴールに蹴り込んだ。
さらにアディショナルタイムには、ペナルティエリア手前から左足でゴール左下にシュートを決めて同点に追いついた。このまま試合は終了。敗色濃厚だったFC「小次郎」がドローに持ち込んだ。
試合後のスタンドは引き分けの結果だったのに、サポーターの反応が好対照だった。勝ったかのように大騒ぎのFC「小次郎」側。勝利がするりと逃げて引き分けに持ち込まれたヴェルディ「武蔵」側は沈黙が漂った。
FC「小次郎」が同点に追いつけた要因。やはりライバル相手に負けられないという気概だったのだろう。
2点ビハインドに立たされた際に、遠藤選手は「このままサポーターを帰すわけにいかない」と思っていたそうだ。宿敵相手に負けるわけにいかない。その思いが劣勢から執念の同点劇に持ち込んだのだ。
ライバルの存在は、自分を大きく飛躍させる。今季はもう1試合、令和の「巌流島の戦い」が行われる。ライバルたちの激しい戦いが楽しみだ。
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