『朝起きるとどこかがかならず痛い』
いつからだろうか。
朝起きると、どこかがかならず痛いのは。今日は、右手首がずっと痛い。なにもしてないのに、痛い。睡眠前には、あんなに元気だった右手首は、夢のなかで冒険でもしていたのだろうか。
右手首が痛くなる夢の冒険とはなんだ。崖に右手首をかけて、必死に身体を支えていたのか。
では、そのとき私の左手はなにをしていたのだ。私の左手首はいつもどうり。痛みひとつない普段の左手首だ。
崖を両手で掴んでいたのなら、右手首同様に左手首にもダメージが残ったはずた。
私はこう考えた。
右手首で崖を掴んでいた私の左手には、もうひとつの手が握られていたのではないか。
私の左手には助けなければならない大切な者の手が握られていた。
夢から覚めた私の左手首は普段どおりに、ぐるんぐるんまわるまわるですこぶる元気だ。痛みひとつないのだ。
あくまで、これは夢の冒険の、しかも仮説だ。夢のなかの私の性格もいつもとは違うだろう。夢のなかの正義感なんてあってないようなものだ。夢とは不真面目なものだ。実際の私の人格になんら影響をあたえない。それが夢だ。
それを踏まえて言おう。起き抜けの私の左手には、大切ななにかをあきらめた手触りがあった。涙もでていた、と思う。
朝起きるとどこかがかならず痛い。今日は心が痛い。
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