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英雄問答

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司馬遼太郎全作品から、英雄の心構えや技法を中心に約3300項目の「ダンディズム」を抽出。それらを対話形式でまとめた、時代に“逆行”する自己啓発書。 まえがき~修行したオヤジが「英…
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1-2弁が立つからなめられる

塾長:薩摩人の間では「沈黙が倫理」とされていた。下野する西郷隆盛と大久保利通との最後の対面は、薩摩人の「沈黙」をよく表している名場面といえるだろうね。  西郷はしばらくだまってすわっていた。こういう場合の沈黙に耐えるのは薩摩人の特徴であるが、その点において大久保のほうがむしろ深刻な耐久力があるといえる。大久保は背筋をのばしたまま黙っている。〔翔ぶが如く〕 『翔ぶが如く』の主人公候補だった村田新八は典型的な薩摩人で、〈軽忽な男ではなかった。無口で、動作に陰翳があり、物を問い

1-1「からっぽ」はよくしゃべる

塾長:若いころは、誰でもおしゃべりなもので、「沈黙の提督」とよばれた東郷平八郎ですら、とてもおしゃべりだった。  ある人が大久保利通に東郷を推挙したのだけれど、大久保は「東郷はおしゃべりだから」という理由で却下してしまった。〔翔ぶが如く〕  この一件で懲りたのだろう。その後の東郷はみずからに「沈黙」を課し、日露戦争で大活躍するころには「沈黙の提督」として、すっかり沈黙キャラが板に付いていた。  伊藤博文も若いころは、〈中年以後の彼とはちがい、多分に軽躁浮薄〉で軽口だったんだけ

第一章[威厳]しゃべるな、黙れ

少壮:今回は「威厳」についてお伺いできればと思います。僕はどこか軽々しくて威厳がありません。どうしたら威厳をまとうことができるのかを教えてもらえますか。 塾長:結論を先に言えば、オーラを消そうとすることだね。 少壮:オーラを消す――ですか? 威厳といえば、オーラをむんむんさせているというイメージがありますが? 塾長:それは逆。威厳を出そうと押し出しを強めると、むしろ威厳は失われてしまう。  言い換えれば、威厳とは他者からの誤解といってもいい。威厳は自力でまとうことができるもの

奥多摩遭難記 其之壱

今回、1995年の遭難の場所と過程について、ごく簡単に記述しておこうと思う(当時ワープロで記録したはずだが、現在のPC上にデータは移されていなそうだ)。 この写真は、武蔵五日市の駅前にある、周辺観光地図を撮影したものである。この地図右下の「払沢の滝」。1995年の11月(確か文化の日だった)、18歳のとき、紅葉狩りのためにここを訪れた。しかし、時期か周囲の樹種の問題で、紅葉は見られなかった。ただ、山の上の一部には紅葉が見られた。 また予定としては、フリー切符を買ったことも

英雄問答 「司馬遼太郎」で男の修行 まえがき

「こんな奇妙な読み方する人おるんやなァ」  司馬遼太郎先生は、こう苦笑いされることだろう。  私は司馬遼太郎作品を「自己啓発書」として読んできた。おのれの至らなさ不甲斐なさを少しでもよきものにするために必死で食らいついてきたのである。  英雄は寡黙。議論などしない。  英雄は温和で、言葉遣いが丁寧。  英雄はなりふりかまわない。必要なら媚びへつらう。  英雄は臆病。だから周到緻密に準備する。  英雄はかっこつけない。阿呆を装う。  司馬が描く英雄たちは、世間一般の英雄像とはだ