なぜ外転できない?〜重要な肩鎖関節の上方回旋を確認する方法〜
肩鎖関節が肩の挙上における重要ポイントであることを、どのくらいの方が実感できているでしょうか。肩の挙上には肩甲骨上方回旋が出ない場合、下方回旋の筋をリリースすることが主な対応策になることが多いです。もしくは、全体的に肩甲骨の上方回旋させて全体をストレッチすることもあるでしょう。
しかし、肩甲骨の上方回旋で重要なのは、肩鎖関節です。この肩峰と鎖骨が作る肩鎖関節が上方回旋とどのように関係しているかのか、そしてなぜ重要なのかが理解できると、肩の理解の幅が大きく広がります。
♦︎肩峰を中節骨、鎖骨を末節骨で触れて上方回旋を感知する
肩鎖関節の上方回旋を評価するためには、まず触れ方が重要です。触れ方は左右どちらの肩を対応するのか、患者さんの体格によって変わることを念頭に置いておいてください。
基本的には示指または中指を利用します。最も意識すべきは、DIP関節の皮皺を肩鎖関節面に合わせて、中節骨で肩、末節骨で鎖骨を触れることです。さらに付け加えると、中節骨と末節骨はそれぞれの骨に平行にかつ圧を均等に当てることです。
触れた指の圧に不均衡があると、肩峰および鎖骨にベクトルが発生し動きを伴うことになります。そうなると、正しい評価ができません。
肩鎖関節での上方回旋は鎖骨に対して肩峰が動くので、主に触れている指の中節骨とその皮膚を使って動くを感知します。骨の平行にかつ圧を均一に触れると、肩峰が動いた時に圧の変化や皮膚のズレなどを固有感覚が感知します。この力学的な歪みを見逃さないようにすることが重要です。
♦︎肩鎖関節が要支持関節を作る
肩鎖関節での上方回旋が重要な理由は、要支持関節を作るための土台になるからです。信原は、肩を懸垂関節(hanging joint)と要支持関節(needing support)という2つのフェーズに分類しました。
肩が挙上するにあたり、肩甲骨の関節窩は可能へ潜り込むように動き、上腕骨頭を下から支えるという機能(要支持関節)を果たします。これにより挙上動作ができるわけですが、この関節窩が下に潜り込む動きを作るために肩鎖関節が重要な役割を示します。
肩甲骨の上方回旋はどの文献、テキストでも重要事項として書かれていますが、上方回旋は本質的な目的はではありません。関節窩に骨頭の下に潜り込むように動くことが肩甲骨が動く本来の目的です。
関節窩が骨頭の下に潜り込めると、肩甲骨上腕関節の安定性が担保され、手を頭を上に伸ばすという行為を遂行することができるようになります。
♦︎肩鎖関節の上方回旋が発生する上肢の角度は?しない角度は?
肩鎖関節での上方回旋はどの位置で評価すべき?という疑問が湧くかと思います。下垂位から挙上していく過程で、肩鎖関節に上方回旋が必要になる段階があるので、この辺りを解説します。
hanging jointからneeding supportへの切り替わりの目安は60°
下垂位から60°くらいまで挙上すると、骨頭と関節窩が互いに押し合いそこに支点を作り始めます。つまり肩甲上腕関節の力学的な安定性がここで評価できます。つまり、haning jointからneeding supportへの切り替わりのフェーズと考えることができます。
次のフェーズに入ったら、関節窩に下方への潜り込む準備は開始になります。60°から90°にかけて肩鎖関節で上方回旋が起こり始めます。患者さんの介入をしていて、挙上制限が改善してきたんだけど、外転ができないことを経験すると思います。ハンモックポジションを撮ることができる。しかし、そこから外転方向に腕が動かないパターンです。このような患者さんは、60°から90°の間で肩鎖関節での上方回旋が起こりません。
特定の方向で肩鎖関節の上方回旋が発生しないポイントを探す
60°や90°といった上肢の角度は肩甲骨面に揃えることが基本です。肩甲骨面の60°以降で肩鎖関節に上方回旋が生じても外転が改善しきらない場合があります。そんな時は肩甲骨面を基準として位置をずらしていくと、上方回旋しない方向で見つかる場合があります。
一つは、水平内転および水平外転の動きです。中間位もしくは水平内転では60°以降で肩鎖関節の上方回旋が起るが、水平外転位では見られない場合があります。また、肩甲骨の内包化を確認が必要です。
肩甲骨の内包化を肩鎖関節の文脈で考えると、肩峰-胸骨間の距離が短いくなることです。鎖骨が剛体であれば潰れることができないので、距離を短くするためには鎖骨が回転して距離を短くするしかありません(鎖骨は挙上する。👆図)鎖骨が挙上すると、関節窩が骨頭の下に潜り込む動きを残したまま肩鎖関節の上方回旋を減ずることができます。その結果、関節窩をさらに下方へ移動させることが可能になり、上肢のさらなる外転を可能にします。
♦︎動画で解説
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