食べて運動して寝ていれば健康という風潮
特に身体の丈夫な人は、そうでない人の気持ちがなかなか分かりません。それは良いとか悪いとかではなくて、想像のしようもないのです。
幼少期から病苦に苛まれてきた身としては、自分の直接経験した不調以外も想像して「つらかろう」と思い対応する次第ですが、生来健康なドクターは「些細な」不調へのアプローチが雑になりがちに見えます。
食べて運動して寝ていれば健康、という風潮があります。
もちろんそれはバランス良く栄養を摂って、有害なものを体に入れず、適度に習慣的に運動をして、良質な睡眠を十分とるということですが、それを心がけても健康にならない場合もあります。なかなかどうして難しい。
しかしながら生活習慣が心身に与える影響が絶大であることは事実で、どうにか折り合いをつけて上手くやっていかねばなりません。
先日、外来に一人の貴婦人が訪れました。
漢方外来の噂を聞いて突然やってきた彼女は、全身色々なところに不調を抱えていました。更年期障害かしらといいながら、頭痛、腰痛、食欲不振、嘔気、下痢、痔核出血、不眠など数年前から苦しんでいると涙ながらに訴えます。どこを受診しても良くならず、カメラの検査をしても大きな問題はないといわれ、途方に暮れていたそうです。健康のために食事や運動に気をつけているけれど、体調不良は改善しないし眠ろうにも眠れない、と。
診ますと、相当の瘀血がありました。微小循環障害と言い換えてもよいでしょう。これは過去に受けた手術の後遺症かもしれませんし、たしかに更年期という可能性もあります。脈は渋、沈、遅、細。上焦が浮き、心の失調があります。腎も虚し、肝は実し、而して脾虚もみられます。これでは眠れないし、食欲もでないはずです。腹診と舌診の結果も踏まえて、漢方薬を2種類処方しました。
2週間後の再診日には、晴れやかな表情の貴婦人がいました。
曰く、すべての症状が良くなってきたと。変化は数日以内に起こり、まず眠れるようになってきたそうです。1週間後から全体に症状が落ち着き、食欲も回復し、2週間目となる受診日には、軽度の頭痛以外には全ての症状が殆ど改善していました。まだ全快ではありませんが、脈の様子も快方に向かっており、その後も徐々に回復し、現在は体質改善のための処方調整を行っています。
漢方治療も上手くいくことばかりではありませんが、この方に関しては劇的に奏功したといえましょう。似た症状でも体質によって処方が大きく変わるため、実際の処方内容の記載は控えますが、一見すると関連性のないようにみえる症状が一気に改善する可能性があるのは東洋医学の面白いところです。
食べて運動して寝れば、健康かもしれません。
しかしそれは、元々健康な人が健康を保つためにできることです。
不調があれば何か対策が必要でしょう。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の不調を体質だからと諦めずに挑戦する医学界になりますように。
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